土の魔法使いと推活中魔法使い《戊》

dede

第1話 たらい回しの末に

「俺のトコロに話を持ってくるなよ?」

「他にいないんです」

俺の家を訪れた彼女はそう言った。

こんな田舎でも噂だけはギルドで聞いていた。

最近王都で町中を見回りしている兵士が増えてると。近々、外国の要人が訪れるか、重要なイベントがあるのではないかとまことしやかに噂されていた。

「そもそも我が国ではパトロールを強化していません。増えた兵士は我らの知らない兵士なのです」

「それがおかしいんだよ。どっからやってきたんだよ?鼠一匹とは言わないが、さすがに兵士が出入りしてたら分かるだろ?確認取らなかった……ハズ、ないか」

「はい。我が国の兵士が質問しても何も答えず、制止もきかず、ただひたすら街中を徘徊するばかりで」

「どんな連中なのさ?」

「頭からつま先まで鎧を完全装備している鎧兵です。

というか、我が兵と戦闘になったのですが、剣でいくら刺しても何の影響もなかったと報告を受けてます。おそらくリビングアーマーかと」

「ふーん。で、城占拠と?」

彼女は沈痛な表情で答える。

「はい。不甲斐ない話ですが、城から王族以外、全員追い出されてしまいました。今や国の機能は完全に停止しています」

「犯人からの要求は?」

「ありません」

「それを俺に解決しろと?」

「お願いします、冒険者ギルド序列5位、土の魔法使いノエネ様」

彼女は深々と頭を下げるがちょっと待て。

「国の一大事を任せるには、頼る相手が中途半端だろうが!俺、5位だぞ?上に4人いるんだよ!まず1位に頼めよ!」

「魔境の開拓任務中で連絡がつきませんでした」「2位は?」

「幻の蝶の採取依頼中で連絡がつきませんでいた」「3位は?」

「今牢獄に入っていて、許可が下りませんでした」「4位は?」

「逃げた猫を探すと言って断られました」「よし、4位はあとでぶん殴る」

思わずため息が出てきた。でもさすがに放置もできないか。見れば彼女もたらい回しにされ続けたため疲労が色濃く見えた。

「他の依頼を受けてたんだけどなぁ」

「ちなみにどのような依頼を?」

「薬草採取」

「Sランク冒険者のやる依頼じゃありませんね。後回しでお願いします」

いやでも好きなんだよね薬草採取。今回も楽しみにしてたのに。……まあ、いつでもできるか。

「わかった。その依頼、この5位のノエネが確かに受けよう」

彼女はその返事に、ようやく顔のこわばりが取れた。

「ありがとうございます。助かります。今後のサポートは私がさせて頂きます」

「そうか。名は?」

「カノエです。近衛騎士をしています。解決するまでの間よろしくお願いします」

大量のリビングアーマーかー。まあ、どうにかなるか。なるよな?まあ、なると信じたい。……誰か何とかしてくれないかな。

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