第16話15歳編③
カルマンとヨハンは精霊のヘーゼルと共に宿に入ると、それぞれ荷物をまとめ始める。
「ホントにああいう言い方でよかったのか?」
「いいんだよ…ジュリアが傷つくよりは…」
ヨハンの問いに答えるカルマンの言葉はどことなく重苦しい。
そもそも、ヨハンとジュリアは親同士が決めた
だけど、どうしてだろうか…こんなに胸が張り裂けそうな想いは…それに、ヨハンの顔を見るのも辛く感じる…カルマンはぐっと感情を押し殺しつつ、ヨハンとヘーゼルに向かって口を開いた。
「2人共…ちょっと1人にさせてくれねぇか?」
突然のカルマンの発言に疑問を持ちつつも、ヨハンとヘーゼルは渋々部屋を出る。それと同時にセレーネが宿屋に戻って来て、ヨハンは試合の結果をセレーネに告げる。
「カルマンは自分の負けだとは言っていたが、お前と瓜二つのカオスジャンクが現れた…あれは審判の私からしたら、無効試合だ。」
いとこからの言葉に、セレーネは愕然とする。
「わ、私…邪魔をするつもりは…」
「それは分かってる…だが、問題はカルマン自身だ。試合の後の発言…普段のカルマンらしくない。普段なら、好きな相手をペラペラ喋りそうなのに…」
「ぐすっ…」
不意にカルマンの目から涙がこぼれ、くすんだ甲冑にぽつりと落ちると、カルマンは瞬く間に白いカッターシャツにチョコレート色のハーフパンツにショートブーツという格好に変わり、カルマンの目の前にはまるで石のように変わり果てた剣がアクセサリーのサイズになって転がった。
「カラン…」
まるで勇者として「失格」の烙印を押されたかの如く、突きつけられた現実に、カルマンは黙々と荷物をトランクにまとめ、宿屋の窓から木を伝って飛び出してしまったのだった。
『勇者じゃなくなった今、旅に出る意味なんてねぇ…』
トランクを抱えたカルマンは、船の時刻表を携え、まるでヨハン達から逃げ出すかの如く、港へ走り出した。
『サヨナラ…勇者だった俺…』
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