第11話14歳編⑤
突然のカルマンの一言に、ヨハンとジュリア、そしてヘーゼルは驚きの表情を見せる。
「お、オイ!!正気か?パーティーが4人より満たない場合は旅に出てはいけないって、国王陛下から…」
いつもは冷静のヨハンがそう驚くのも無理はない。勇者としての旅の掟として、国王から「パーティーは常に4人以上でなければならない」と告げられている。勿論、カルマンも国王から言われている事だ。
「知ってるさ。その代わりのメンバーが来るまで、俺達はオランジュ領に留まるしかねぇ…」
「それなら、モネはどうでしょう?皆さんより1個下ではありますが、
カルマンの言葉に対して、集落の長が意見を述べた。確かにカルマン達より年下だが、姉と違って「一人前の巫女」として認められている分、カルマン達にとっては心強い。そんなモネではあるが、彼女は少々不満な表情をしている。
「母上、私は姉上の後釜になどはなりたくありません!」
モネはそう言うが、母親の表情は厳しい。それでも、モネはひるもうとはしない。
「それに、勇者様には元々…
姉が勇者が見つかったという知らせを受けた時の事は、覚えている。ビルベリー領領主の血筋にして、史上最年少で枢機卿に上り詰めた人物の甥の名前を読み上げた刹那、姉の表情はこの世の者とは思えないほどの恐ろしい表情…そして、怪文書ともとれる書簡の数々に取り巻きへの手回し…あれはとてつもない異常行動であった。
「私としては、修行を怠る姉上の監視なら、快く引き受けるのですが?」
そう提案するモネであるが、母親の表情は未だに厳しいままである。まるで、「母の意見は絶対」であるかの如く…
「ああやって
本殿を出たカルマンではあるが、肝心の人物への通信手段がなく、途方に暮れていた。
「シュゼット様の言う通り…モネさんを選んだ方が…」
そう呟きながら、本殿から見て左側に目を向けたカルマンは、不意に独房ともとれる一室の前に足を運ぶ。そこではセレーネが巫女の修行に打ち込んでいるのかと思いきや、ずっと横になったまま動こうとはしていなかった。それを見たカルマンの怒りのボルテージが最高潮に到達し…
「サボってんじゃねぇっ!!!勇者と一緒にいるってことは、そんな甘っちょろいモンじゃねぇんだぞ!!!!!」
突然のカルマンの怒号に、セレーネは思わず起き上がり、声のする方向に目を向ける。そこには険しい表情で半人前の巫女を見つめる勇者の少年が立っていた。
「俺達にウソなんてつきやがって…ホントは巫女でもなんでもねぇじゃねぇか!!!」
「ち、違います!私は…」
「俺やヨハンやジュリアも…自分の明日や未来のために、毎日毎日剣や魔法の修行に明け暮れてきたんだ!!!それなのに、お前の体たらくは何なんだよ!巫女として全然修行すらしていねぇ!!!こんなんで勇者の仲間になれるなんて、大間違いなんだよ!!!!!」
偉大なる祖母がいた頃は、ずっとサボっている事も多かった。サボりたくなる気持ちも分からなくはない…だけど、彼女がいなくなってから、「自分は勇者として生きなくてはいけない」という事を思い知った。それ以来、苦手だった勉強も、乗り気でなかったスイーツの修行も頑張って、今の自分がある…剣やスイーツの扱いで擦り傷を作ったり、血豆を何度も潰してきた…今のカルマンにとって、目の前にいる半人前の巫女は昔の自分のようにも見える。
「無能な巫女なんていらねぇ…これは命令だ…今から、お前を俺達のパーティーから追放する!!!」
まるで雷が落ちたような衝撃に、セレーネはショックを隠せない。それでも、カルマンの厳しい表情は崩れない。
「俺を「運命の人」だって言うなら、修行だってなんてことないよな?もうグレイさんをオランジュ領に呼び出す準備はできてる。短い間だったけど、サヨナラだな。」
そう半人前の巫女に告げると、カルマンは本殿の方へ身体を向け、本殿の方へ戻って行く。その様子を見つめるセレーネの両頬に一筋のしずくが伝い、床を湿らせる。
そんな彼女に呼応するかの如く、
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