会いたい思いは恋なのか?

 廊下を歩いていて、他のメイドとすれ違うと、ふとその中にアナベルがいるような気がして、振り返る。


 いないよな……。


 突然セオドア様と声をかけられる気がした。気の所為だ。そんなこともう無いんだよな。


 食事に誘った店にも行ってみる。また来ないだろうか?偶然会えたりしないだろうか?


「セオドア!またあの娘とおいでよ!」


 そう店の者に声をかけられた。……なんだ。やっぱり来ていないか。

  

 そうだよな。


 どこかスッと寒くなってしまった日常。前に戻っただけなのにな。


 城に帰ると陛下はいなかった。机の上に書き置きがあった。


『ちょっと出かける』


「は!?どこに!?」


 行き先を普通は書くものだろうがっ!探しに行こうか!?いや、やみくもに探しても仕方ないか!? 

 

 三騎士に尋ねようと踵を返す。ドアの前にニヤニヤしてるエリックがいた。


「エリック、陛下の行き先、知っているのか?」


「知ってるさ。やっぱり我慢できなかったみたいだ。予想どおりさ!リアン様のところへ迎えに行ったんだ!」


「迎えに!?」


 やれやれと両手を広げ、呆れてるエリック。


「あんなにリアン様のことが好きなのに、手放せるわけがないと思ったんだ。良いよなあ。1人を一途に愛せるって!」


「エリックは?」


「可愛い女の子はみーんな好きさ!誰かを選ぶなんて難しいなー」


 聞かなきゃ良かったと思ったが、まあ、良い。


 ウィルバート様は自らリアン様を迎えに行ったらしい。帰って来る。あの人も!


 思わず駆け出していた。城の門のところまで迎えに行く。こんなに……心が今まで弾むことなんてあったか?


 帰って来る。また会える。それが嬉しい。


 俺は茶色の優しい目と再び出会った。


「おかえり」


「待っててくれたのですか?ただいま帰りました」


 フワリと優しい笑顔を見せるアナベル。その春の日差しのような雰囲気に目が離せなくて、どうしました?と聞かれる。


 ……なんでもないと慌てて目を逸らす。


 なんでもないなんて、嘘だ。この想いはきっと……本気でアナベルを好きになってしまった。彼女を見ると他の人とは違う心の奥が温かいような気がする。会えないと辛い。


 これが好きと言う感情なのだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る