二人一役を演じきります!
「アナベル、王妃様に朝食持っていこうか?」
「あっ!大丈夫です。わたしが持っていきます。お気遣い、ありがとうございます」
他のメイドが気を利かして朝食を運んでくれる申し出を断り、サッと動いて持って行く。キョロキョロあたりを見回してドアを開け、誰もいない部屋に入る。
コソコソとお嬢様がいつも食べるであろう量を食べていく。このくらいでしょうか?ハッ!大変です……お茶用のお湯が減ってませんでした。慌ててお茶を淹れる。
日中は怠惰に過ごすという名目で、部屋から出ない。
「王妃様は今日は出ないのかい?」
「はい。今、夢中の本を見付けてしまって、読んでいます」
「ハハッ!相変わらずだ!」
警備の騎士が可笑しそうに笑う。珍しいことではないので怪しまれない。……ゴロゴロ過ごしていても他の方に違和感を与えないとか、どんな王妃様なのでしょう。
我が主ながら……ま、まぁ、きっとこれもリアン様はこういう事があると思って怠惰に日頃からしてるのかもしれませんしね。そう!そう思っておきます!
陛下がごくまれにやってきて、まだ帰ってないよなぁとソワソワしている。
「バレていないか?すまない。アナベルには無理を言ってしまって」
「大丈夫です。お嬢様との付き合いは長いので、色々とありますから」
「それは言えてる。リアンといると飽きない」
いえ、退屈とか飽きないとかそんな意味ではありません!と思ったけれど、陛下がフフッと楽しげに笑ったので、それ以上のことは言えなかった。
実はこの王様も変わってる気がします……。不敬だから口には出しませんけど。
夜、誰もいない部屋の灯りを落とした。
「もうリアン様はお休みしたの?いつもより早くない?」
「今日はお疲れだったみたいです」
早かったかしら!?頬に一筋の汗が流れる。
「そうなの?良かった!アナベルを待ってたのよ」
「何でしょう?」
「デザートにコック長が生クリームたっぷりのフルーツケーキを作ってくれて、みんなで食べよーって!」
わたしはかたまりました………。なぜなら夕食も2人分食べているからです!む、胸焼けがします。
この二人一役での一番の難関は食事です。わたし、太ってしまいます。
「わたしは良いです。みんなで食べてください」
えっ!?いいの!?体調でも悪いの!?と騒ぐ同僚達。
「いいえ、とても元気です!」
「じゃあ……一口でも?」
「いいえ!その……ダイエット中なんです」
「太ってないよ!むしろ太ったほうがいいよ!若いもんはすぐ太るとか体型を気にしすぎる!」
年配のメイドがそう言って、ガシッとわたしの手首を掴んだ。
お嬢様ーーっ!早く帰ってきてくださーーーい!
心の奥底から叫びました。
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