第23話 新人さんと恋話しちゃいますわ〜!甘酸っぱいカホリがプンプンしますわ〜!

 はーい、皆さん大好きエクリプス一期生、日本からの転生者の血を継いでいる異世界の花屋さん唄上ウタガミオーフェリアでーす。今日はやっとできる新人女子たちとの恋バナ!しかもオフコラボのために可愛いお顔も表情もリアルタイムで見られるのもベネ!


 グフフ。若い娘のあられもない表情を合法的に見られるなんて最高っ。Vtuberになって良かったぁ。


 今回の新人二人はどっちも小柄の可愛らしい女の子。水瀬さんは現役JKというVtuberの中でも希少種。JKを名乗る人が多いけど、実際に高校生な人はほとんど違うから本物は貴重ですわ。まあ、他所には中学生がいてその時には界隈がざわついたのですけれど。


 そして霜月さん。彼女も可愛らしいのだけれど、特に気になっているのが同期のリリさんとの関係。霜月さんがちょっと不調だった際に助けてくださったみたいでかなり意識しているご様子。


 こういう、くっつく前の男女を脇から眺めるのがたまらねーんですわ!


 そんなこんなで配信を始めて自己紹介もして、ちゃっちゃと質問を始めていきますわ。


「じゃあ最初はジャブから行っちゃおうかなー。歳上歳下だったらどっちがいい?まずは霜月ちゃんからー」


「あたしはどっちでも……。年齢で判断したことはないので」


「ほうほう?水瀬ちゃんは?」


「私は断然歳下!おねショタしか勝たないから!」


「ああー。水瀬ちゃんはおねショタなんですのね。いいご趣味ですわ」


 霜月さんは無難な回答。いえ、男性経験というか恋愛経験がなさそう?そんな匂いがしますわね。ふふ、堪らないですわぁ。


 こういうおぼこさん、初めて知った男性。初めて知った恋の蜜。


 わたくしの大好物ですぅ。


 水瀬さんはこの歳でおねショタ好きとは、業が深いですわね。十六歳から見たショタとは本当のショタしかいないのでは?


 いえ、わたくしもショタは好きですけれども。


「オーフェリア先輩はおねショタ、ダメですか?」


「ダメではありませんわ。ただわたくしのベストヒットゾーンはおにロリですので」


「ああー、おにロリ。なくはないです。おねショタの真逆。アリです!」


「夏希、おねショタが好きなんだ……。というか、おねショタもおにロリも一般の好みではないような……?」


「霜月ちゃん。昨今の女子は様々な少女漫画で性癖が開拓されてるんですわ」


 昔からそうですが、少女漫画はすごいカップリングや攻めた性事情とかを平然と少女誌でやっていますし。少年たちが少年誌でバトルを楽しんでいる間にわたくしたちは恋愛のドロドロを楽しんでいるわけでして。


 ちょっとその辺りを突いてみましょうか。


「霜月ちゃん、少女漫画は嗜まれていましたか?」


「いえ、正直あまり……。魔法少女のものとかは読んでいましたが、恋愛ものはそこまで読んでいなくて。だから結構恋愛話は苦手なんですよ」


「まあ、そうなんですの。でしたら初心者向けの少女漫画を紹介しましょうか?アニメも良いかもしれません」


「あ、それは是非。今あたしって色々なことに手を出しているので紹介していただけるのは嬉しいです。時間を見付けて見ますね」


 沼へ一人ご招待ですわ。


 でもリリさんに助けられたようで、それで惹かれてしまうのはおそらくそういった知識・経験不足ですわね。多分一目惚れに近い形でしょう。


 リスナーの皆様にバレないように引き出していきましょう。もちろん水瀬さんも面白いネタがないか探っていきますが。


「では続きまして。この辺りも定番の質問ですわね。身長は高い方が好みですか?それとも気にしない?」


「高い方、ですね。高いところにあるものとか取ってくれたらそれだけで優しいなとか頼れるなと思えるので」


「私は気にしないです。ショタは心と言動がショタだったら身長はどうでもよくて」


「ほーほー。水瀬ちゃんは高潔なおねショタの魂をお持ちのようで。霜月ちゃんは頼り甲斐のある人がいいのですね」


 おもっくそクロですわね。


 ま、まだ笑うなですわ……!これはわたくしだけの愉しみですもの。


 確かちらっと後ろ姿を見ただけですが、リリさんの後ろ姿は普通に背が高かったですものね。


 ですがリリさんの設定では二人より小さいのでリリさんを示唆していないこの回答。リリさんへ誘導させないという点では最高ですわね。中の人を知っているからこそですが。


 そして筋金入りのおねショタである水瀬さんは同士ですわね、きっと。


「さて、三つ目の質問にいきましょうか。お相手との趣味は共有したいですか?それとも相手の趣味は相手の趣味として無関心でいますか?」


「うーん、難しいですね……。あたしは相手の趣味は知りたいし、共有して分かり合いたいです。ひとまず全部聞いて合う合わないは判断したいです」


「私も趣味は共有したいです。好きなものが同じだとアガリませんか?」


「趣味が合うと話も続きますものね。会話が続くのは関係が長続きする秘訣ですわ」


 わたくしがアドバイスめいたことを言うと感心したように頷く霜月さん。もしかしたらこの情報を基にリリさんを誘ったりするのでしょうか?その相談役とかやらせていただけないかしら。


 FORの三人は仲が良い上に、霜月さんの恋模様。リリさんがどう思っているのか分かりませんが事務所で見られる恋愛模様なんて最高ではありませんか。


 Vtuberは恋愛なんて相手を探すのも大変ですし、バレたらファンに叩かれますもの。恋愛営業ならいくつか見ますが、ガチ恋なんて本当に見ません。それも同じ事務所なんて、ねえ。


 こんな極上のナマモノ、見過ごしてたまるものですか。


「四つ目の質問にいきますわ。初デートならどこに行きたいですか?デートプランでも可ですわ。これは水瀬ちゃんからいきましょうか」


「デートかぁ。定番なのは東京の名前がついた浦安のテーマパークですよね。ただ初デートだと別れるカップルが多いからってオススメされてないですけど」


「夢の国ですわね。あそこは先程の質問に掛かっている部分がございまして。アトラクションを待つ間に一時間とか平気で待つでしょう?その間が保たなくてこの人ダメと思って別れてしまう方が多いそうですわ」


「夢の国で現実的な理由で別れちゃうんだ。こっわ」


 水瀬さんと話していると、初デートで夢の国には行かないようにと脳内メモでもしているのでしょうか。真剣な表情でわたくしたちの話を聞いていますわね。


 ではそんな霜月さんはどんな場所を選ぶのか。気になりますわ。


「では霜月ちゃんはどうでしょうか?」


「デートって想像がつかないですけど……。公園に行ってレジャーシートを広げて、お弁当を食べてお昼寝して……。そんなのんびり過ごせたらなと」


「乙女か⁉︎そして庶民ですわ⁉︎」


「乙女ですし庶民ですが⁉︎」


 なんというピュアっピュアなデートコースですか!というか若い人ではなく老後のようなのんびりデートを構想していたために思わず突っ込んでしまいましたわ。


 大人ですのにお金をかけないデートとは。これを言うのが水瀬さんなら高校生らしくて微笑ましいですわって言えましたが、霜月さんの年齢と元社会人というのは聞いていましたのでお金は持っていそうなのですが。


 もう少し水族館とかそういうのを期待していたのですけれど。もしかしてそういう情緒まで幼くいらっしゃる?


 この配信の前にFORのお三方の配信は見させていただきましたが、リリさんは年齢不相応の落ち着きを持った人。水瀬さんは年齢相応の高校生らしい素を出す天然の人。


 そして霜月さんは年齢を偽っている、キャラを演じているのではなく。素が不安定で幼い人・・・・・・・・・


 予測していたことが合っていたのは嬉しいのか、微妙なのか。


「いえいえ、質問を追加でしてしまいますがもっとお洒落なデートをしたいと思わないのですか?二十歳ですし、お金もあるでしょう?」


「お洒落なデートってなんですか?カラオケデートとかですか?」


「それはむしろ学生デートですわ!」


「あっ……」


 お洒落なデートの例としてカラオケデートなんて陳腐なものが出てきたためにまた突っ込んでしまいましたが、このことに水瀬さんが反応していました。


 まるで何かダメなことを言ったかのように手で口を抑えています。


 この反応、もしやリリさんに事務所で誘われたのがカラオケデートだったということでは?


 それをお洒落なデートとして挙げるのであれば、それはリリさんを意識しすぎでは?


 よ、よだれが止まらねえですわぁ〜〜〜〜〜!


「まあ、趣味が合っていなくてもカラオケデートは定番ではありますわよね。うん」


「きゅ、急にどうしたんですか?冷静になって」


「大事なのはお金じゃないと思っただけですわ。次の議題に行きましょう」


 ここでリリさんのことがバレてしまうとわたくしの観察がつまらなくなりますし。


 リリさんと霜月さんが恋仲だとバレてリスナーによって燃やされてしまったら二人は平穏に過ごせないでしょうから。我慢の時ですわ。


「好きなタイプはいますか?どんなことでも良いですわ。ダメなことでも大丈夫です。例えばタバコを吸う人はダメとか、お酒に強い人とか。どんなことでも大丈夫です。これも水瀬ちゃんから聞きましょうか」


「何でもいいので一つの事柄に一生懸命なことですかね。スポーツとか頑張って怪我したりしているショタ良くないですか?」


「大いに分かりますわ。そこをお姉さんが手当てしてあげるのですわよね。そういう鉄板、嫌いではなくてよ」


「そうそう!それで家に連れ込めたら最高ですよね!」


「せめて相手の家の方が良いですわね。自分の家はマズイ気がしますわ」


 おっとお?


 水瀬さんは高校生だからと結構甘めに考えていましたが、これは相当沼に沈んでいるヤベー子ですわね?分別はついていると思いたいのですが。


 まあ、大丈夫でしょう。わたくしはブレーキ役になりたいのではなく、あくまで傍観者として様々な性癖を見守っていたいだけですので。


「霜月ちゃんは何かありますか?仕草とかでも良いですわ」


「バレンタインの恋愛相談でも言いましたけど、あたしが困っていたらそっと手を差し伸べてくれて話を聞いてくれる人が良いです。気分が沈んでいたらどこかに連れ出したりしてくれたら良いかなと」


「ああ、察しの良い方。今だと希少ですわよね。鈍感な方が増えたというか、言葉にしないとわかってくれない方が多いというか。こちらは仕草や化粧、バッチリ決めたお洋服などでアピールしているのですから褒めてくれるくらいはして良いと思うのです。褒められて嫌な女子はいませんからね?本当に生理的に無理な方以外には褒められたい生き物なのです」


「ですよね!ナンパとかして欲しいわけじゃないですけど、ちょっとは努力を認めて欲しいというか!」


 なるほど。霜月さんは自分に自信がないのですね。そして卑屈な自分を認めて欲しいという根幹がある。


 おそらく今まで認めてくれたのは極少数、それも仕事上の付き合いや家族だけだったのでしょう。


 だから、同じ同僚とはいえ関係値が深すぎるわけでもない、期間としては全然長くないのに同期というだけで救いの手を差し伸べて、実際にどんな会話をしたのかは知りませんが復調するほどのことを話せたリリさんはまさしく承認欲求を満たせる方だったと。


 準備期間を含めても三ヶ月にも満たない付き合いの異性。毎日顔を合わせるような業種でもないのに不安の種をピンポイントで見付けて解消してしまったと。あのカード剥きの配信前後では霜月さんの様子は全然違いますし、それくらいは割と誰でもわかります。


 そこにエクリプスのライバーはゴートン君からのリークもあって事情を知っているわけでして。


 でもこれ、事実を列挙すると確かに惚れているのは当然の流れでは?


 こんなエスパー染みた内心を読み取ったこと。解決案を出せる頭の柔らかさ、優しさ。誰にも聞かれないようにカラオケに連れ出すという配慮ができる点。そしておそらく手を差し伸べたのはただ同期だからという理由だけ。


 これ、少女漫画でしたらスパダリ(スーパーダーリンの略)と呼ばれるヒーローでもおかしくはありませんわね?


 そういう恋愛事情に疎かった霜月さんがリリさんに完璧な白馬の王子様ムーブをされてしまって恋に落ちてしまっただけだと考えると。


 霜月さんが漫画のヒロインですわね、これ。


「ただ昨今の事情を考えると異性を褒めるというのも難しいというか。どんな言葉がセクハラ、パワハラになるかわからない時代ですもの。男性の方々が保守的になってしまって絶食系にジョブチェンジしてしまうのも時代の流れなのかもしれません」


「絶食系?」


「草食系の下位互換と言いますか。女性に一切手を出さないような男性の方ですわ」


「そんな男性も増えてるんですね」


 配信ではこの後もいくつか質問をして、最後にお決まりのように非公式wikiに記載よろしくとわたくしのリスナーにお願いをして配信を終了しましたわ。


 エクリプスの非公式wiki、割と充実していてその人のプロフィールをざっと確認するには適しているのです。公開されている情報や雑談などで語られたよっとした情報をとても細かく纏めてくださっていますから。


 配信が終わった時間が遅かったこともあって三人で外食へ。美味しい釜飯のお店があったのでそこへ行きました。個室もあるので話しやすいのですよね。


「しかし、本当にリリ様のことが好きなのですね。分かり易かったですわ。霜月様」


「いえ、あのっ……!リリ君のことは大事な同期であってそういうのじゃ……!」


「エリー、無理だよ。オーフェリア先輩どころかエクリプスのライバー全員の共有事項になっちゃってるって。それにさっきの配信で疑惑だったのが確信に変わっちゃったよ。カラオケデート出したらもう、ねえ?」


「言わないで、夏希ちゃん……!」


 顔を真っ赤にしている霜月様、ご馳走様ですわ。


 恋愛話が好きなことはキャラクターのことではなく、わたくし自身の紛れもない趣味ですから。


 これからも二人の絡みを楽しませていただきましょうか。どうやらエイプリルフールに何か仕込んでいるみたいですし。


 水瀬様はリリ様への思いはまさしく同期や兄へ向けたものでしょう。三角関係のドロドロにはなりそうにないのも高評価ですわ。そんな愛憎劇など実家のゴタゴタだけで十分ですから。

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