第17話
翌日。
資金を貯めたいのと、信用を積み重ねたいので冒険者ギルドへ。
建物に入ると、あのひょろっとしたギルド職員さんがすぐに私を見て呼んでくれた。
「リーザさん、リーザさん」
なにやらいいことがあったのか、満面の笑みだ。
「はい、なんでしょう……職員さん」
そういえば、良くしてもらったのに名前も聞いていなかったと思いつつ、私はギルド職員さんに応じる。
「あ、私はカイムといいます。よろしく」
「こちらこそ、お世話になっております」
改めての挨拶の後、カイムさんが教えてくれた。
「一昨日持ってきてくださった物、まだ確実な結果が出ていないんですが、どうやら薬の材料で間違いないみたいです。効果も強そうなので、きっと病気の治療などに役立つでしょう」
「そうだったんですか、良かったです!」
自分が持って行った物が、人の役に立つ物だったとわかって嬉しい。
「それで、良ければあの植物も、もう一度見つけたら採取してくれると嬉しいです。これは掲示予定の依頼書の写しです」
カイムさんが、私に依頼書を見せてくれた。
植物の鑑定にはもう三日ほどかかるみたいだ。その後に掲示予定なのだろう、三日後の日付が書いてある。
依頼といってもいくらでも欲しい物だからか、依頼受諾は複数可。
他の冒険者なんかにも声をかけたいんだと思う。
そして金額。
「850ソル……」
私がもらった金額より低かったので、ちょっとうろたえた。
「あの、もしかして一昨日の私ってもらいすぎ……」
「あれは先行投資ってやつだから。ああいうのも、ある程度規定に乗っ取って払っているから気にしないで。気になるなら、最初に見つけた人へのお礼だと思ってくれれば」
その説明にはちょっと納得した。
最初に見つける人がいなければ、次もないのだ。
「それで君を呼んだのはね、いい依頼があったからどうかなと思って」
「え、私にですか?」
指名で依頼を受けるような身じゃないので、たぶん私みたいな子供でもできそうな依頼があったから、教えてくれるんだろう。
そう思って、次に出してくれた依頼書を見る。
採取依頼だ。
内容は白の領域にある物で、どうやらまた植物らしい。
なんでも、白の領域にあるもので、白いクローバー限定で、いくらか採取して欲しいらしい。
魔物が死んだ場所が畑だったりすると、そこで作物が育ちにくいらしいけれど、白の領域の白いクローバーを使った薬品を使うと、回復するそうだ。
林業にしろ農業にしろ、大助かりな薬品だ。
必要な人がいるからこそ、この依頼が出ているんだろうけど……。
ちょっと考える。
今日の私は、一度は白の領域の外にある物を採取する依頼を受けてみてはどうかと思ったのだ。
昨日、ベルさんに案内してもらった雑貨屋で、薬草の本も買ったことだし、安全な場所での採取というのをしてみようかと思って。
願い通りの、私がわかるような薬草の採取依頼はないかもしれないけど、それだったら普通に薬草をとりにいって売ってもいいかな? と思っていた。
だから白の領域へ行くつもりがなかったのだ。
でも……これ、期限が長いみたい。
「本当に、期限は二週間以内ならいいんですか?」
すぐほしいんじゃないかなと思ったけど、カイムさんは「そうです」とうなずいた。
「薬は今すぐ必要なわけじゃないらしくて。次の需要がある時までに作るために、今のうちに採取依頼を出しておきたいらしいんですよ。たぶん、夏前の魔物の活発期に合わせて用意しておけば、畑に被害があったりした場合に需要があるって思っているんじゃないかな。依頼者は薬師だから」
なるほど。今、被害を受けている人はいないのか。ゆっくりでも大丈夫だという話に納得する。期限が長めながらも設定されているのも、薬を作る時間を考慮して、これぐらいということだと思う。
「数がいくらあっても嬉しいらしいので、複数人に依頼を出しますから、気楽にやってくれていい依頼なんですよ。難しそうだったら、早めにリタイアを申し出てくれれば大丈夫です」
その言葉で、私みたいな子供に依頼をしてくれた理由がわかる。
他の人にも依頼を出すから、誰かが失敗しても大丈夫な依頼だからだ。
なにせ私では、魔物とは戦えない。そういう理由で白の領域に出入りしにくくなった時に、リタイアしても大丈夫な依頼をまわしてくれたのだ。
「お気遣いいただいてありがとうございます」
お礼を言う。
そして私はこの依頼を受けることにした。
ひとまず、今日は薬草を探してみて、難しそうだったらこの依頼のクローバーを探そう。
報酬をもらったら、またしばらくは落ち着けるから、改めて普通の薬草探しの技術を上げる時間にあてることができる。
そういう感じで、やっていけば白の領域に挑まなくてもやっていけるようになるかも?
町の外に出るのも、本来はそこそこ危険なのだ。
白の領域以外にも魔物が絶対出ないわけではないし、普通の獣もいるし。
とにかくお金と信頼の積み上げは大事なので、二週間の間に、何度か白の領域へ行って探してみよう。
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