第6話


 帰り道、積雪を踏み分けて歩きながら、ペールがふと口を開いた。

「姉さん。ひとつお願いをしてもいいかい?」

「なにさ」

「ぼくが帝都に行っている間、誰とも結婚しないでくれ」

「は?」カーステンは怪訝そうに眉を顰める。「あんたに言われるまでもなく、あたしみたいな女を嫁にしようとするやつなんていないだろ」

「そうかなあ……。でもまあ、姉さんが結婚しないというのなら、それでいいよ。うん、それでいい」

「……」

 会話はそれっきり止まる。

 カーステンは、弟弟子がなにを言わんとしているかを図りかねたが、しかし、こいつがわけわからないのはいつものことかと思い、とくに気にしなかった。

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