第3話 妹突撃!

 昼休みも中頃に入っただろうか。弁当を食べ終え、教室の自席でぼーっとしてると…。


「すみませ~ん。荒波透の妹なんですけど、お兄ちゃんはどこにいます~?」


声のほうを観ると、廊下に渚が1人でいて教室を見回している。クラスメートの大半は、俺か渚を観ている状況だ。めちゃ目立ってるじゃん…。


「あそこだけど…」

渚に一番近いところにいる女子クラスメートが俺を手で示す。


「…あ、いたいた。教えてくれてありがとうございま~す」


そして、渚は俺のところにやって来た。


「ねぇお兄ちゃん。水寺さんはどこ?」


その声も比較的大きめだ。これも全員に聴かれたな。


ただでさえ注目されてるのに、火に油を注ぐ様なもんだろ。5限は体育だが、これは質問攻めにあうと思ったほうが良いな。


「あっちだ」


俺が目で示すと、渚はすぐさま向かって行く。水寺さんは好口さんと2人で弁当を食べているところだ。


「えーと、私に何か用かな?」

彼女は心当たりがないせいか落ち着きがない。


「放課後にお兄ちゃん含めて3人で話したい事があるんですけど良いですか?」


「良いけど…」


「ありがとうございま~す。…じゃあお兄ちゃん後でね」

渚は俺に小さく手を振ると、教室を後にした。


一部の男子がニヤニヤしている。あぁ、あの時の悪夢が再来するのか…。



 昼休みは終わりかけなので、男子は教室・女子は更衣室に移動して着替え始める。なので、教室には男子しかいない状況だ。


「おいおい荒波。さっきのは何だよ?」

遠藤君が俺に近付いてきて言う。


「修羅場が始まりそうな感じじゃなかった?」

そう言いながら、青山君も近付いてくる。


「それはオレも思った。荒波兄妹ってもしかして、シスコン・ブラコンなんじゃないか?」


そう結論付けてもおかしくないか。からかわれるんだろうな…。


「羨ましいよ~」


え? 一瞬、青山君が言ったことが理解できなかった。


「オレもだ。あんな可愛い妹に好かれるなんて最高じゃないか!」


「2人とも、俺をバカにするんじゃないのか…?」


「んな事するかよ。オレにも妹がいるんだけど、ゴミのように見られるんだぜ。ひどいもんだろ?」


遠藤君の兄妹仲は良くないようだ。


「バカにしてきたのは、そいつの嫉妬だよ。荒波君が気にする事じゃないさ」


そうなんだろうか? ここは青山君の言葉を素直に受け取るか。


「妹ちゃんが水寺さんにああ言ったのは、荒波が嫉妬されるぐらい妹ちゃんと仲良くしてる証拠だろ? 」


「荒波君は妹さんといろんなことを話すんだね。兄妹仲が良いのは良い事さ」



 妹と仲良くする事を肯定的に観る人もいるのか。とはいえ、さすがにHしてるとは思ってないよな…。


人の目を気にする俺だが、少しずつ考えを変えたほうが良いかもしれない。人の目より自分の気持ちに正直にならないと。


「荒波。そろそろグラウンドに行こうぜ」


遠藤君に背中を押され、俺達3人は教室を出る。

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