シュレーディンガーの物語
そばあきな
1000字以内の物語
『drive to 前世』(535字)
私の友人は、ドライブ感覚で前世に行くことができる。
行き方も簡単で、友人が「行きたい」と思いながらどこかの扉を開ければ、その先が前世になって行くことができるのだ。
だから、扉さえあればすぐに行けるし、反対に帰りたい時も、必ずしも行きの扉と同じでなくても帰ることができるのだという。
実際に友人が前世に行くところを見たことがあるけれど、扉をくぐったはずの友人が一瞬で姿を消してしまったのを見た時には、友人の話は本当だったのだと驚いたものだった。
そして、現世に戻ってきた友人は、いつも前世で経験してきたお土産話を私にしてくれる。
コンビニに行ってきたみたいなテンションで「さっき前世に行ってきて〜」と話を始めるから、毎回心の準備ができないけれど、友人が語ってくれる話はいつも面白いのだ。
友人は、大正ロマンが漂うレトロな時代だったり、刀で切り合う武士の時代だったり、和歌に想いを乗せる平安の時代だったりと、様々な時代を渡り歩いていた。
その中には、現世よりも楽しそうな前世もあった。
留まろうと思えばその前世に留まれることもできるのに、最終的に友人はこの現世に帰ってくる。
「君がいる現世がいい」と言って、しばらく外国に行っていてハグの習慣がついた人のように、毎回私を抱きしめてくれるのだ。
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