13.

「高城君ごめんね?急に休みの子がでちゃって」



「大丈夫ですよ店長。でも僕今日大学お休みしちゃったんでできるだけ裏方のお仕事の方がありがたいです」



「え、そうだったの?体調大丈夫?」



「寝不足気味だっただけなので体調は大丈夫です」



「寝不足?何か悩みでもあった?」



店長に心配され写真の事について相談した方がいいのだろうかと一瞬迷う。

でもただの写真で悩みすぎなだけな気がしなくもないと相談するのに躊躇う僕の背中を店長がポンポンと優しく叩く。



「まぁ言い難いこともあるわよね、言いたくなったらいつでも相談しておいで、あと数分したら裏方の子と交代してもらうから宜しくね高城君」



「はい」



店長に気を遣わせてしまった…。申し訳ない。

僕は店長への罪悪感を消すために今まで以上にテキパキと働いたのだった。



「はぁ…お腹いっぱい食べた…」



お昼ご飯と夜ご飯は店長が残った具材で賄い料理を作ってくれたのでそれを食べてきた。

店長が作ってくれる料理美味しいし今日の夜ご飯代が少し浮いて一石二鳥だった。


手作り料理と言えば…宇都宮君を成り行きで家に泊めた時に作ってくれたバンバーグ美味しかったな…。

押しの手料理&推しに間近で会えたことに感動してあの時は上手く話せなかったからちゃんと美味しいって言えなかったや。



「また食べたいな…」



なーんてね、推しに2度も手作り料理をご馳走になるなんてそんな恐れ多い。

宇都宮君の事を考えていたらタイミング良くメールが送られてくる。

内容はハンバーグを作りすぎたみたいで一緒に食べない?とのお誘い。


おうふ、タイミングが悪かった…僕さっき店長のご飯食べてお腹いっぱいだ。

…どうしよう、せっかくのお誘い断るしかないよね…。


推しの手料理なんて2度と食べれないかもしれないが泣く泣く宇都宮君に事情を説明してお誘いを断った。



「はぁ…ショック」



項垂れながら家までの距離を歩いてふと疑問に思った。


いつの間にか宇都宮君とメールのやり取りをしていたけど連絡先…いつ交換したんだっけ?

…思い出せない。

推しの連絡先がスマホに登録された事に感動して宇都宮君との会話を僕が覚えてないだけかな…明日宇都宮君に聞いてみようかな…。


スタスタと階段をのぼり、家に入った昴は疲れていた為この日はポストを確認しずに寝たのだった。




「…将人、誰かに写真撮られたことある?」



「あ?勝手にってことか?」



「うん、隠し撮りとか」



「そんなんねぇぞ…昴誰かに隠し撮りされてんの?」



「いや、うーん、どうだろう?」



将人に質問したら質問で返された為適当に誤魔化しておく。将人は隠し撮りはされたことないのか…。


鞄の中に入っている2日前に届いた封筒を確認した。その封筒の中身は相変わらず僕の写真と宇都宮君とのツーショット。

でも今回は少しだけ違って「学校休みって聞いたから心配してたけど元気そうでよかった」ってメッセージと共にバイト中の僕の写真も入れられていた。

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