第3話 N県、交通事故で交通事故死亡者ワースト県の汚名返上
昨日、N県F市の県道で赤信号のため停車した霊柩車に、共に火葬場に向かっていた小型乗用車が追突するという事故が発生した。原因は乗用車を運転していた親族の前方不注意と見られるが、この事故でN県の交通事故死亡者数が全国一位から二位に繰り下がり、ワースト県の汚名返上となった。
事故が発生したのに何故、一位の座を譲ることになったのか? その顛末はこうだ。霊柩車にはポックリ病で死去したF市のSさんが棺の中で永眠していたが、追突のあと突然、棺がガタゴト揺れだしたという。不審に思った運転手が蓋を開けると、中からSさんがぬうーと起き上がってきたのだ。驚きのあまり腰を抜かした運転手に代わって喪主が運転する霊柩車は急遽行き先を県立病院に変更し、診断の結果、Sさんは目出度くこの世に復活することになった。追突のショックで息を吹き返したものと見られている。
この話を聞いたN県警察本部では、Sさんの取り扱いについて慎重に検討を行い、交通事故で死者が生き返ったことから交通事故による生者一名として計算することにした。このためN県の交通事故死亡者数は前日から一人減少し、一方、一名の死者を出したT県がN県の死亡者数を上回る結果となった。
N県警察本部長の話「Sさんの降天により事態が好転する結果となったが、いずれにしても非常事態宣言を出して以来の念願が達成できて喜ばしい」
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