真宵猫ー魔女擬き《ウィッチクラフト》ー3
相手は確実に油断している。
こちらを取るに足らない動く餌としてしか認識していないのだろう、その油断を突いて大技を叩き込む。
【二級魔法:
杖に魔力を込め相手に向けて杖を振る。
魔法には三階級の位があり、一番弱い位が三級魔法、三級はその場所にあるものを使って打つ魔法。
例えば近くにある火を使ったり空気中にある水素を集め水球を作って打つなど簡単に言えば超能力の念動力のようなあるものを操って使う魔法だ。魔力の消費量も少なく連発できるためよく使用する。
そして今使った魔法が二級魔法、この位は無から有を作る魔法。何もないところから炎を出したり先ほどのドレスの女が何もないところから黒色の棘を出したりするのがこの魔法だ。
そして今
相手へと向け放った華翔龍炎は大きなうねりを見せてその炎の顎へと獲物を喰らうためドレスの女へと喰らいつく。
「――――なッ!?」
怜からの反撃を予想していなかったのか驚きを隠せずに回避に遅れるドレスの女、その顎は女の右腕を持って行く。
「くっ!」
痛みを堪え左に飛ぶ女、自分で作った棘壁があるため左側に回避せざるをえず着地地点などは予測しやすい。そこを狙ってさらに追撃する。
【三級魔法:
初歩魔法と言っても威力は金属バットで殴られた程度のダメージはある。先生が使えば大砲並みの一撃を打てるが今の僕には無理だ。
それでも当たりさえすれば結構なダメージにはなるので数を作って相手にぶつける。
「チッ!」
舌打ちが聞こえたかと思うと女の影から漆黒の騎士が現れ水球を全弾防ぎきる。
「うそだろ……。」
予想外だ。一対一ならまだしも漆黒の騎士が会らわれたことにより強制的に二対一になってしまった。
それに正直初手の攻撃で仕留めたかったしせめて追撃の水球は当てたかった。
これからどうしたもんかな……。
「ねぇあなた?それ、魔法よね?」
次の手をどうするか思考していると向こうが話しかけてきた。
やはり向こうにとってこちらが反撃してきたことに驚きを隠せないようだ。
「はあ~正直油断したわ、おかげでほら見てよ、右腕無くなっちゃったじゃない。それに騎士も出しちゃったし本当に―――腹が立つ!」
空気が一瞬で変わる。
先ほどまで本気で油断していたのだろう、それかこちらを自分でも言っていたように餌だとでも思っていたようだ。
ただこちらが致命傷レベルのダメージを与えたため完全に敵と認識したようだ。
というかいきなり戦闘が始まったため気にする時間もなかったが相手の黒い棘壁も魔法、だよな?
この化学が発展した現代で空想でのみ存在する魔法の使い手など先生以外会ったことがない。もちろん人除けの結界が張ってあったためそういう事態も想定していなかったわけではないが初めて見た。
それは向こうも同じの様でこちらにその旨の質問を投げかけてきた。
「ねぇあなた。あなたってもしかして私と同類?」
「同類?」
聞き返すが返事は無い。一人でブツブツと何かを呟いている。
「いえ、それは無いわね。だって男だもの、じゃあ何?協会の何か?それともあっちの子供がもしかして―――なんてことはある?それなら実は女でしたって言われたほうが納得できるわね。……聞いてみましょうか。」
何か覚悟を決めた感じでその場で小さく頷くとこちらに向かって話しかけてきた。
「ねえ一応、聞くのだけれどあなたってもしかして女の子だったりする?」
「え?いや、男ですけど……。」
「そう、よね……。あなたっていったい何者なの?どうして魔法を使えるの?」
「えっと、一応魔女の弟子をしています。」
「魔女ッ――――!?」
ドレスの女はいきなり血相を変えるとくつろぎながらこちらを眺めている先生へと視線を飛ばした。。
「まさか……!いや、そんな……でも!」
一人混乱しているドレスの女は人差し指を噛みながら何かブツブツと呟いている。
そんな女を見兼ねたのか先生はいつの間にかかけていた似合わないサングラスを外すとドレスの女へと声をかけた。
「あなたが頭の中で考えていることは正解よ。」
「――――ッ!?まさか今思考を!?」
先生はその問いに沈黙で返す。ただ口元は笑っている。
怜には先生とドレスの女の今行われている駆け引きのすべてを把握することはできなかった。が先生がドレスの女の目を見た瞬間何かしらの魔法を使ったことだけは魔力の流れで読み取れた。
女の言葉からも思考を読む魔法を使ったのだろう。テレパシーや念話なんかの応用だと思われる。
そんな駆け引きが行われたことによってか女の態度がガラリと変わる。先ほどまであった棘壁を消し、横にいる騎士と共に片膝を着き深く頭を下げる。横に騎士もいるためか昔の騎士が王に忠誠心を示す時のようなポーズだ。
「……ふぅー申し遅れました。わたくし色欲の魔女様より魔力を賜りましたカレン・ディベルと申します。崇高なる魔女様に拝謁します。あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「そう、あなた色欲に……。いいよ、特別に名乗ってあげる。私の名前はリリム=ヴェル=ヴァーミリオン、災禍の魔女と呼ばれているわ。」
「――――ッ!!災禍の魔女、あの三大魔女の一人、ですよね!?」
三大魔女?それに色欲の魔女って……。
わからない単語に首を傾げる怜、どうやら先生以外にも魔女がいるらしい。
先生が災禍の魔女だと知ると先ほどのドシリアスな態度は何処へやらカレンは推しにあったオタクのようにきゃあきゃあと嬉しそうだ。
「ええ。それで、あなたは色欲の
「あ、はい!色欲の魔女様に血をいただき
「そうなのね。それであなたに聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」
「はい!どうぞ!」
ただ先生は質問を投げかけなかった。いやできなかった。
階段から誰かの上ってくる足音がしたためである。
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