第121話 偽善②

 背の高い椅子に座った王は俺たちを見下ろす。真っ赤に染まった目、白い肌、鼻は高く角ばっている。髪の毛は全て抜けていて、その不気味さをさらに加速させている。


「今日集まってもらったのは他でもない。ZEROを叩くためだ。」


彼の名前はハリエス・カリオストロ。通称『モズリアン』の息子だ。モズリアンが率いていた組織『Qattus iswed』の壊滅後、息子であるハリエスさんが新しくこの組織『ユートピア』を作った。


「詳細は追って説明する。が、この前ドナートが一戦交えたようだ。だから、向こうも対策してきているはず。覚悟して遂行してくれ。」

『はい!』


ZEROの壊滅。それはハリエスさんがずっと目標にしていたこと。これを達成して、本当の理想郷ユートピアを作り上げる。それだけがこの組織の存在意義だ。


「ってことで以上になるのだが、何か言っておきたいことはあるか?」


王はいつも通り俺たちにそんなことを訊いてくる。


 俺たちには共通の王に訊きたいことがある。それは、「潜透、百野力。この2人を倒したらこの組織はどうなるのか?」だ。実際のところ、この組織が作られたきっかけになったのは、元いたヨーロッパの組織が潰されてしまったこと。だから、2人が死ねばこの組織にとっての理想郷ユートピアになるって訳だ。なら、2人が死んだあとの世界に俺たちは何の干渉のしようもない。ただ傍観者になるだけだ。


「ないですよ。」

「僕も特には。」

「私も特になし。」

「俺もだな。」

「なら会議は終了だ。また作戦決行の前に呼ぶ。それぞれ、自分で考えて動いておいてくれ。」


王はどこかに消えていき、部屋には俺たち4人が取り残された。


「結局訊けなかったな。」

「無理でしょ。あんなこと訊くの。」

「でもいつか訊かないといけないことだな。」

「まぁ、3人とも。この組織は自由を許してくれてるんですし、思う存分楽しみましょ!」


カルカロが俺たちのことをまとめてくれる。変な話だが、1番年下のカルカロが1番まともなのだ。


 カルカロに連れられて部屋を後にし、エレベーターに乗り込む。上に上がっていき、そして1階についた。


「じゃあ私たちは戻ってるから。また今度ね。」

「俺も今度も生きて合えることを楽しみにしてる。」

「僕はまだここでやることがあるので、これで失礼します。」


3人は散り散りに散っていく。結局その場に取り残されたのは俺だけだった。


「みんなもう割り切っているんだな。それに対して俺は…」


俺は持つ獅子聖剣レオ・グランテを撫でる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る