〝無能〟

prologue

 今日も上履きの画鋲を捨てる。

 今日もバケツの水を浴びる。

 今日も保健室に行く。

 今日も感情を消す。

 今日も殴られる。

 今日も蹴られる。

 今日も罵られる。

 今日も腕を切る。

 今日も薬を飲む。

 今日も傷が増える。

 今日も……


 ────死にたくなる。


『無能でごめんなさい。──────。』


 今日、僕は飛び降りた。


 *


 病室に響く、一定のリズムの機械音。

 そこには、真っ白のベッドで腕に沢山の点滴を付け、腕や頭などに包帯が巻かれ寝ている黒髪で今にも折れてしまいそうなほど細い身体をしている青年。そして、その少年を囲って立っている4人の青年がいた。


 スラッとしているように見えるが、しっかりと筋肉のついている身体。青みがかった黒髪に、赤色のメッシュのセンターパート。不思議と見つめてしまう、青水晶のような瞳を持つ青年。


 “緋桜 蒼斗”


 が辛いのは僕が一番わかってたはずなのになぁ……。


──明日は何して遊びましょうか。


「ぐすっ……ははっ……僕は──」


 最低だなぁ。


「〝約束〟……したのに……ごめんね」


#最低な僕



 マッシュの青年は、キラキラと輝く黒緑の髪、そして美しい翠眼。細くしなやかな体つきで、異色な……不思議な雰囲気を纏う。


 “黄鈴 ゆう”


 また、いなくなっちゃうの?

 また、みんな離れていっちゃうの?


 なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……?


「まただッ俺ばっかり……〝約束〟したのに……、嫌だッ……戻ってきて、目を覚ましてよッ……」


──ははっ……泣かないでよ。


 君の少し困った、でも、すごく、嬉しそうな、無邪気な笑顔が、台詞言葉が、頭から離れない……。だってさ……、その笑顔は、君の──。

 

#声が鮮明に残る



 薄く桃色がかった茶髪の青年。彼の赤茶色の瞳は、秋を想像させる美しさを持つ。ほどよく筋肉のある均整のとれた体。少年のような、でもどこか大人のような雰囲気をしている。


 “東雲 紫苑”


──お前は俺の最強で最高の相棒だ。


 ずっと、一緒にいたのになぁ。

「信じてあげられなくてごめん」

 “ごめん”で済むわけがない、絶対に。俺のせいで彼は、壊れてしまった狂ってしまった

「……こんな奴でも、許してくれるか?また側にいていいか……?なぁ……」


#俺はお前の“元”相棒



 雪のように白く美しく、細しなやかな髪の青年。潤いに満ちた、神秘的な淡い紫の瞳。黒緑髪の青年と同じく、細くしなやかな体。東雲と違い、凛とした、大人のような雰囲気を纏う。


“望月 零”


──の笑顔が……大好きだよ。


「ごめんね」

 僕のせいで、彼は壊れてしまった。

 僕が大好きな彼はベッドで静かに眠っている。


 死んでしまうのかもしれない。

 二度と目が覚めないかもしれない。

 拒絶されるかもしれない。

 もう一緒にいられないかもしれない。

 

 そうなっても、仕方ない……なぜなら、僕は、僕たちは、決して許されないことをした。だから、一生この罪を背負って生きて、償っていく必要がある。

 許されなくてもいい、拒絶されてもいい……。ただ、君の目が覚めればいいからッ……。

「ごめんっ……。ごめんなぁ。目を覚まして……

 戻ってきてよ……帰ってきてよっ…」


#一生分の罪





『音……!』














 #無能でごめんなさい



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