第10話

 メトロMの地下1階は、ファーストフードのハンバーガー屋、豚カツ屋、カレー屋、パン屋、テイクアウトのお寿司屋などが出店していた。文京区という土地柄から、高級店が多いのかなと志村は想像していたが、庶民的な飲食店ばかりであった。

 志村を一番喜ばせたのは、3階に大型書店の丸善が営業していたことだ。東京駅が最寄りのオアゾの超大型の丸善よりは、品揃えは少ないが、これから入居しようとしているマンションの最寄駅に書店があるのは、読書好きの志村にとっては、とても有り難いことだった。

 美緒も読書好きだが、新書の購入は専らメルカリ、ヤフオクあるいはブックオフなどの活用によるものだった。

 志村夫婦に共通している点は、書物は知識にもなるし、娯楽にもなるし、コスパが最高だと認識していることだった。二人が若かった時は、ビーチリゾートで、綺麗な海を時折眺めつつ、ビーチパラソルの下、仕事のことは忘れて、お気に入りの本を読むことが何よりの楽しみだったのだ。

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