第2話

「予約している志村ですが」

 志村は妻の美緒とベビーカーに乗せた長女の麻理を伴い、不動産屋のガラス張りのドアを押しつつ、カウンターに声をかけた。

「お待ちしておりました。今日は、お車で、希望に沿った物件を、2、3紹介させていただきます。各物件の概要はこちらを参照してください。担当は林になります。林、ご案内、よろしく」

 店長らしき男性が志村に向かって、また、部下らしき若い女性スタッフに向かって話した。

「林と申します。今日は3件の物件を巡ります。車を取ってきますので、外の歩道でしばらくお待ちください」

 後楽園駅に初めて降り立った。東京ドームの白い屋根が間近に見える。妻は、広島カープの大ファンだ。休日は、野球観戦をライブで行えるかもしれないなと志村は心をウキウキさせた。

 ミニバンに乗った林が不動産屋の前に滑り込んできた。志村はベビーカーを折りたたんで後部座席に置き、麻理を抱っこ紐を使って上半身で抱えて、そのまま後部座席に乗り込んだ。続いて、美緒は助手席に乗った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る