俺をいじめていた奴らをリタイアさせる群像劇

ALC

第1話太るのも才能なんだよ

皆に言いたいことがある。

沢山食べられることは才能である。

もちろん食事を我慢できるのも才能だ。

この世に才能のない人間など存在しない。

僕は過去に壮絶ないじめを受けてから、そんなことを考えるようになった。

何故ならば、いじめ行為をする人間にも沢山のパターンが存在するからだ。

前述で沢山食べられることは才能と言ったのはここに繋がる。

つまりは僕は幼い頃から食べることが大好きで身体だけが大きくなり肥満体型であったのだ。

それは就職するまで続くのだが…。

もう少しだけ先程の話の続きをさせて欲しい。

いじめの才能がある人間と言うのも残念ながらこの世に存在するわけだ。

例えば太っている僕に直接的な罵倒を浴びせてくる人間ははっきりといって才能がない。

しかしながら間接的な罵倒をしてくる人間はきっと才能があるだろう。

どういうことかと言えば…。

こんな言葉を口にするのもはばかられる時代ではあるのだが…。

「デブ!」

と言って罵倒をしてくる人間はそこまで悪気もないし才能もないのだろう。

見たことをただ口にしているだけの時点で平凡だ。

「臭いんだよ!」

見た目ではなく、太っていることによって引き起こされた現象を伝えてくる他人はいじめの才能があるだろう。

「お前がいると部屋が暑いんだよ!」

こんな風に周りにもウケを取るようにして罵倒をしてくる人間も危険である。

何故ならば笑いが起こることにより、僕以外はいじめが行われているという自覚が薄れるからだ。

薄れると言うよりも誰も認識できなくなる。

特に学生などはそういう風潮があったはずだ。

そして僕はいじめを耐え抜く才能もきっとあったのだろう。

マンモス校の全校生徒にいじめを受けていたというのに、三年間皆勤賞で通学し無事に卒業をした。

大学には通わなかった。

同年代の人間はかなり幼く感じていた僕は年上の人間が多いと思われた建設現場の職に就くことになる。

現場の人々は僕の容姿を馬鹿にするようなことはまるでなかった。

「お前才能あるぞ?今付いている脂肪は作業を続けて行く中で勝手に筋肉に変わっていく。それだけ肉が付いていたらムキムキになるだろうな。俺はそんなに食えないから筋肉があんまりつかないんだ。見た目だけの話だがな」

就職してすぐに現場の世話役になってくれた上司は僕の体型を生まれて初めて褒めてくれた人だった。

「本当ですか?僕は昔から太っていて…沢山いじめられてきたんです。こんな僕でも変われますかね?」

世話役の上司はそんなことかと笑い飛ばすようにして口を開く。

「いじめなんて生きていれば一回ぐらい経験するだろ?ハブられるとか、仲間はずれにされるとか、シカトされるとか、容姿をバカにされるとか。そんなことは皆誰しも経験してきたはずなんだよ。それをいじめられたと捉えるか。それは自分次第だろ?お前は自分が他人よりも劣っていると思うのか?他人の評価なんて気にするな。自分が自分を信じてやれ。お前にも才能があるはずだ。自分を疑うな。それとだな。いじめを受けてきた人間は他人に優しくなれるものだ。辛い経験だって理解できるから。後はナメられないように一人称を俺にしろ」

しかしながら僕は本日が初対面である上司に対して軽く反論をした。

今までの壮絶ないじめの内容を伝えて、それでも皆勤賞で通学していた事実を口にする。

すると上司はカラッとした笑顔で豪快に笑う。

「それはいじめていた奴らも面食らっただろうな。いくらいじめても効いていない人間に苦虫を噛み潰した様な思いを抱いていたことだろう。でも凄いじゃないか。三年間皆勤賞で通学?いじめられていない人間でも出来ないことをお前はやってのけたんだろ?そして誰にも負けなかった。自分自身にも。そういうやつは社会人になると強いぞ?誰にも負けなかった経験があるから。ちょっとのことでへこたれない。俺はお前を歓迎する。今日からよろしくな」

そこから僕は数年間で体重が激減して筋肉へと変わっていった。

筋肉質の身体で日々を過ごすようになり、どうやら周りからチヤホヤされる自分に気付く。

この容姿は悪くないと言う証だと思った僕は少しだけ邪なことを考えてしまう。

「これを使えば…」

過去のいじめてきた無数の人達に仕返しが出来るのではないかと想像して頭を振る。


ここから昔太っていた僕が容姿を一変させて過去の人物に対してどうにかしようと動く群像劇は始まろうとしていた。

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