第44話 リジVSスカ

【前話までのあらすじ】


ミミス村・094部隊の施設内からワイズ・コーグレンを助け出したロスたちだったが、それも094部隊長ゲルの罠のひとつに過ぎなかった。「お前たちは『何を』目的にしている」ゲルは謎の質問をすると、『牢獄の魔道具』の力を使ってロスたちをバラバラの場所に飛ばしてしまう。パーティとして戦えない彼らの個々の力が試される。

◇◇◇


【本編】

 —リジとワイズの森—


 「ライス! ロスさん! ギガウ!」


 「リジ、これはどういうことだ。いったい何が起きた?」


 「わからない。ただ、きっとこの森は脱出不可能なんだと思う。おじいさま、決して私から離れないでください」


 「あ、ああ」


 森は濃い霧のせいで視界が悪かった。


 「ケケケケ、メイド、メイド。可愛いメイド、でもジジィはいらね。メイド、メイド」


 「誰よ」


 「可愛い声。やっぱり女の子はいいなぁ」


 声は真上からするようでもあるし、右から左に流れていくようでもある。


 「姿見せなさいよ!」


 「ばぁ!」


 突然、リジの目の前に、目を細めて、大きく口をあけて笑う顔が現れた!


 「キャッ」 驚いて尻餅をつきそうになったリジ。


 男の顔は素顔ではなく、白いお面の顔だった。


 「驚いた顔も可愛いなぁ。俺のメイドにしようかな、ジジィはいらね」


 「あ、あなた、何者よ?」


 「俺は、スカーレット・オブルト・ジューストだ。どうだ、男の俺にふさわしいカッコイイ名前だろ」


 「あなた、それ本名なの? スカーレットって女性に付ける名前でしょ?」


 「え? そうなの? そうなのか..じゃ、スカルス..いや、ストレス..ス.. スカ・オブリュ・ジャイクロ..だ!」


 「名前、全部変わってるじゃん、あなた馬鹿でしょ」


 「な、なんだと! お、おまえは何て名前だ、メイド!」


 「私はリジ! リジ・コーグレンよ!」


 「リズ.. かっこいいな..リズ・コクレン」


 「リジ・コーグレンよ! やっぱり馬鹿ね」


 「う、うるさい! 生意気なメイドめ! お仕置きしてやる!」


 [ —ウァルス— ]


 スカの耳飾りが光ると、圧縮した空気のブーメランがリジを襲った。


 霧の流れで軌道が読めたリジは剣を抜いてそのブーメランを引き裂いた。


 「そんな丸見えの技なら軽くいなせる! あきらめなさい」

 

 「ケケケケケ」


 後ろからリジの脇の部分を何かが引き裂いた。


 リジはとっさに脇に手を当て出血を確かめた。


 「大丈夫、大丈夫、服を裂いただけだから。ケケケ、それの方が露出が増えていいなぁ」


 リジのメイド服は脇から胸の部分まで切れ目を入れられたのだ。


 「こ、この! せっかく気に入ってたのに! この変態め!」


 「次、いくぞぉ」


 [ —ウァルシオール— ]


 耳飾りが光り、スカの手の平から圧縮した空気の塊が放たれる。


 それは速さこそないが軌道を自由に変えてリジに向かってくる。


 「こんなもの!」


 切り裂こうと剣をあてるが押し返される。


 「お、重い」


 下方から他の空気弾がリジの下腹を押し上げるように当たった。


 「グ、グゲェ」


 リジは身体を折り曲げ、胃の内容物を全て吐き出した。


 「汚いな、汚いな。でも次はどうなるかな?」


 膝を叩いて立ち上がるリジ。


 「ちょっと、待っててあげるよ。でも、なんでメイドは魔法を使わない。精霊いるのに」


 スカは両手で大きな圧縮空気弾を作っていた。


 「わ、私は魔法使いじゃない。剣士だ! 精霊は..精霊は人が使うものじゃない」


 「ふぅん。言ってることわかんね」


 スカの手から巨大な弾が霧を巻き込みながらゆっくりと近づいて来る。


 [ — 一度、剣を鞘におさめて — ]


 リジの心に精霊フゥの声が聞こえた。


 リジは疑いもなく剣をおさめた。


 「あきらめた、あきらめた! 骨バラバラだ」


 「スカ、もう一度言うわ。私は剣士。剣士は剣で闘うのよ」


 鞘の中に圧縮した空気がたまると、リジは剣を抜いた。


 — シ..  リィィン —


 水晶の音が鳴ると空気弾は二つに割られ空気中に飛散した。


 「な、生意気な! 素っ裸にしてやる!」


 無数の空気のブーメランがリジに放たれた。


 しかし、『聖なる空の剣』は空を飛ぶ燕のごとく、凄まじい速さで全てのブーメランを切り裂いた。


 そしてスカの頭を真一文字に斬ると、スカのお面と耳飾りが地面に落ちた。

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