第3話 特別な課題

「私の体はどうなっているのかな。消えてなくなってはいないよね」

 パズルで遊べる世界には住みたいけれど戻れなかったら大変よ。

「眠っているにゃ。睡眠中のみナクユに来られて目が覚めると元に戻るにゃ」

「体は無事なのね。これで思う存分にパズルを解ける」


 他にも説明されたけれど、一言にまとめるとナクユは夢の世界に近い。人間の子供たちを喜ばせていて、精神のみが来る世界だった。最新技術が進んでいるのか、本当に不思議な世界かは判断できない。異なるパズルを同時に解いている気分だった。


「スカイカス師匠の家に行くのよね。キリリキくんは若いのかな」

「感覚でわかるだろ。スカイカス師匠よりも若いぞ」

「人間の世界だと私たちは高校生くらいにゃ。美奈さんよりも若いにゃ」


「もういいだろ行くぞ。スカイカス師匠を待たせたくない」

 早く進みたいようで、キリリキくんはせっかちかもしれない。キリリキくんが私の手を引っ張った。

「私もパズルが待ち遠しいから早く行きたい」


 数分でスカイカス師匠の家に着くと家の中に案内されて椅子に座った。ロクヨちゃんは部屋の隅で待っている。テーブルの向かい側にキリリキくんとスカイカス師匠が座った。姿や形は同じでスカイカス師匠はキリリキくんよりも一回り大きい。


「よくきてくれた。さっそくじゃが力を試したい。特別な課題は難しいのじゃ」

「私にかかれば高難易度も普通と同じかな。どのようなパズルでも解ける」

「頼もしい言葉じゃ。本当かどうか試させてもらう」


 大きめの紙を渡されたけれど、詳しい理由は説明されなかった。

 紙に目を向けるとクロスワードで、6×6マスの小さいサイズに日本語でカギが書かれている。マス目から違和感を覚えてヒントも目を通すだけでわかった。30秒ほど眺めたあとに顔を上げる。目的は不明だけれどパズルの中身は理解できた。


 スカイカス師匠がクロスワードに見えてきた。パズルのやりすぎかもしれない。

「このクロスワードを解くのかな。それなら無理ね」

 私の答えにキリリキくんが首をかしげて腕を組んだ。


「並戸はパズルを作っているが解くのは無理なのか。俺なら両方ともできるぞ」

「高難易度パズルも解けるけれど、このクロスワードは問題が成立していない。解いても意味がないかな」

「並戸の説明は感覚的に不明だぞ」


 今のだけでは理解できなかったみたいで、何処がおかしいか具体的に説明した。

「黒マスが縦や横に連続していて気になるけれど、この辺りはまだ許せるかな。でも黒マスでマスが分断されているのはクロスワードと言えない。ヒントがだめで安直すぎるのはクロスさせる意味がない感じかな」


「合格じゃ。特別な課題は難しい。ただパズルを解ける人間ではだめじゃ。豊富なパズルの知識と経験が必要じゃ」

「そのために未完成のパズルを見せたのね。解くだけでなくて作る知識も必要なのかな。パズルクリエーターなら誰だって気づくレベルよ」


「物わかりが早いようじゃな。安心して任せられる」

 ルールを把握しているか試されたみたいで、次こそはパズルを解く課題だとうれしい。どのようなパズルか今から楽しみね。

「肩慣らしにもならないから早くパズルを解きたい。特別な課題は何処かな」

 クロスワードが書かれた紙をキリリキくんに渡した。


「スカイカス師匠。このパズルは俺が昔作ったものです」

「失敗作も役立つものじゃな。さっそくじゃが特別な課題を説明する。交差の辞書を取り戻して欲しい。わしの目の前から突如として消えた」


「何処にでもある辞書ではないぞ。パズルを効率よく作るのに必要だ。いつかは俺も手に入れる予定だ」

 熱弁を振るうキリリキくんがいた。このぬいぐるみはクロスワード作りが仕事みたい。特別な課題の情報が聞けたので若手四天王の名にかけて受けて立つ。


「交差の辞書について詳しく知りたいけれど、何に使うのかな」

「パズル作りに必要な辞書じゃ。交差の辞書を見つける段階でパズルを解く必要があるのじゃ。他にもあるが以上じゃ」

 大雑把な説明で、まるでキリリキくんみたい。交差の辞書の特徴も私自身が推測するしかない。


「交差の辞書はクロスワードに使うのよね。もしかして検索システムと同じかな。最初に文字数と確定文字の位置を入力すると、結果は対象となる名詞が見つかる」

「検索システムの意味がよくわからん。じゃが感覚的にはその通りじゃ。他にも色々と機能がある。それは秘密じゃ」

 私が考えた通りでパズルに近づいた気がした。


「交差の辞書が消えたのはわかったけれど、手がかりは何かあるのかな」

「スケルトン国に行くのじゃ。勘が鋭い少女なら消えた先を知っているはずじゃ」

 少女がいるスケルトン国に向かう。やっとパズルが解けそう。何処に向かうのか聞こうとしたけれど目の前の景色が揺れる。急に目眩と頭痛が襲ってきた。


「体調がおかしくて体が動かない。まだ何もパズルを解いてない」

 目がかすんでキリリキくんがぼやけて、気力を振り絞ったけれど体に力が入らなかった。姿勢を保つのも辛くて、そのまま崩れ落ちた。

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