姉が婚約破棄されまして

@wanpaku0106

第1話

「ライル様、草むしりなんて私らでやりますんで」

農家の青年の言うことも尤もだ、辺境伯家の嫡男が洒落っ気0の服装で麦に囲まれながら草むしり


「いやいや、今日はもう政務も雑務ないし暇だからねー、好きなんですよ土いじり、それに


なんだか胸騒ぎがしてじっとしていられないんですよ」

休憩小屋から水を持って青年の妻が顔を出す

「ああ、今頃王都では太子の成人パーティーですか、美しいんだろうなぁスミカ様」

「ハハハいつも見てるでしょうに、まあ姉様のパーティードレス姿はすごいですよ。ほぼ女神」


これを聞いた夫妻は声を上げる笑い出す

「ハハハ相変わらず姉弟仲良さそうで素晴らしいですね。でも寂しくなりますねー来年にはお嫁に行ってしまうんですもんね」


「まあ仕方ないですね見初められて、姉と父が承諾してしまった以上、幸せを祈るしかないです」

寂しさを隠しなんとか笑顔を作る


その時、ライルの影が揺れた


ー若様、大変だ

王太子がスミカ様に婚約破棄を宣告、神聖皇国皇女ルミアとの婚姻を発表したー


「すみません、諸用を思い出したので失礼します」

少年の姿が影に沈み消えていく


報告の声はライルにしか聞こえていない


しかし青年夫妻は少年の雰囲気で本能的に悟った


この国は大変なことになる


__________


王宮パーティー会場


「皆の者、わたしの成人記念パーティーに集まってくれてありがとう!嬉しく思う。

さて、このよき日に皆に報告したいことがある!私は本日カウント辺境伯家令嬢スミカとの婚約を破棄し神聖皇国皇女ルミアと婚姻する!これにより神聖皇国、そしてマイル教とより強固な絆が結ばれ王国はより豊かに繁栄するだろう!」


皇女ルミアと入場した王太子の突然の宣言


あっけに取られざわつき始める会場

しかし、皇国側の招待席から大きな発せられた拍手に少しずつ祝福の雰囲気が広がっていく


「殿下、これは一体どういうことでしょうか?」

怒鳴り声ではない、決して大声でもない

しかしこの拍手の中なぜかよく通る声で

しかし少し震えた声で


左目に眼帯を付けた女神[ライル談]スミカが問いかけた


「大陸最大の神聖皇国の皇女との婚姻、しかも王国の国教であるマイル教からの勧めだ、自国のたかが辺境伯家の娘と比べることなどできるわけがない」

無情な言葉にスミカの手が震え始める


「し、しかしこの婚約は殿下が「お前が悪いんだ」


「え?」


「お前が悪いんだろう!?一目惚れしたのに顔に怪我しやがって!しかも失明だと!?そんな汚らわしい顔で俺の隣に立つ気か!」

ここで我慢の限界だったのか1人の貴族が声を上げるスミカの父であるラングだ


「殿下!それはあまりに酷い!スミカの怪我は殿下を助ける為に負ったものではないですか!?」


そう、馬の後ろ足で蹴られそうな王太子を庇って負った怪我


「だからだよ!その傷を見るたびに思い出す、王太子である俺に罪悪感を与えるとかありえないだろう!普通なら自分から身を引くもんだ!」

あまりにも自分勝手な言い分に皆心の中で不安を覚える

こいつが王太子で大丈夫だろうかと


不穏な空気の中、ドアが開かれ共を連れた男が入場してくる

それを見た全員が慌てて平伏する

「もういい黙れグレン。

王としてスミカとの婚約破棄、皇女ルミアとの婚姻を認める。辺境伯家には詫び状と慰謝料を準備する。皆皆あとは自由にくつろいでくれ、以上だ。

グレン我に着いて参れ」

簡潔に自体を収拾し退場しようとする王

その後姿に辺境伯ラングが声をかける

「陛下、私達はこれにて失礼致します。息子にも伝え話し合わねばなりませんので」


王は振り返らずに歯を食いしばりながら片手を挙げ応えた。

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