シュールな人々
羽弦トリス
第1話落ち武者
20代の話し。
うちの会社で、落ち武者と呼ばれた社員がいた。
月代の様にハゲでいて、髪の毛が長かったので落ち武者なのだ。
この人、酒癖が悪いというかアル中。僕が現場監督してると、
「監督!ガソリン入れてくるので、200円下さい!」
と、言う。現場にカブで来たので、バイクのガソリン代だと思っていた。
5分後現場に戻る。
「監督、有難うございます。ガソリン入れて来ました」
「200円で足りたの?」
「ハイッ!発泡酒は安いんで」
僕は仰天して、
「◯◯さん。ビール飲んで来たの?」
「いえ違います!発泡酒です」
「同じことだわ!」
そして、夕方4時頃になると、
「か、監督。もう、帰っていいですか?定時なので」
うちの会社の定時は4時だった。
朝が早いので。
「だめ、後30分で仕事終わるから、我慢しなさい。頼むよ◯◯さん。酒飲みたいのはみんなだからさ」
落ち武者は、何とか30分耐えて会社の車で帰った。同乗していたが、運転手にもっと飛ばせ!と、五月蝿い。
ある日、夜勤前に吉野家で牛丼を食べていたら、落ち武者が現れ、持ち帰り弁当を注文していた。関わりたくないので、隅っこに身体を隠す様に食べていた。
すると、落ち武者がお会計の際、30円足りないらしい。
対応した女性に、マケロと言った。
ちゃんと、貰わないと弁当は渡せませんと言う。
キレた落ち武者は、
「てめぇは、顔はわりぃ、性格もわりぃ。ま◯こも臭えときたもんだ!」
と、悪態をつき、女性は警察に電話しますと、言うと帰って行った。
僕は恥ずかしくてしょうが無かった。同じ会社の制服を着ていたからだ。
この落ち武者、定年退職6か月前になって、警察に捕まった。
コンビニでたむろする女子高生に向けて、下半身を露出した。
そして、止めに入ったコンビニ店員を殴ったのだ。
定年退職の半年前に落ち武者は依願退職という形でクビになった。労働組合の力で退職金も出た。
あの、女性店員に言い放った言葉は忘れられない。
あれから、15年か〜。
まだまだ、紹介したい猛者がいる。
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