第十話 永劫の時を生きし夫婦に幸あれ
≪…ありがとうございます。星さんの遠き子孫のお方よ。お名前をお聞きしてもよろしいかしら…≫
(星の爺さんと抱擁をしていた耀の婆さんは、心穏やかな波長で俺に語りかけて来た。その声を、星の爺さんは優しく見守りながら、俺に身体を返してくる)
南雲澪と言います。父の名は南雲樹、そして母の名は南雲岬、旧名を北条岬と言います…
(俺は自らの自己紹介と両親の名を口にした。すると、耀の婆さんは驚いた表情を浮かべると、とっても優しい笑みを浮かべて来た)
≪…ふふっ…そうですか。小夜ちゃんの子孫と南雲の子孫が巡り会い、結ばれたのですね…≫
(小夜という名を初めて聞いた俺は、不思議に思いながら婆さんの言葉の向けられるその先には、俺の後方にいる憐の爺さんに頭を下げていた。そして、耀の婆さんは、憐の爺さんに感謝の言葉と反省の言葉を述べていた)
≪悪霊達に騙されていて申し訳ありませんでした。憐さんにも、私は酷い言葉を言ってしまいました。誠に申し訳ございませんでした≫
(謝罪の言葉を憐の爺さんは軽やかに笑い、婆さんの元に近寄ると、婆さんの頭を優しい微笑みを浮かべて撫で始めた)
なに言っておる…、お主の男を死なせた。わしに取っては罰せられている様な一言で嬉しかったぞ。それよりも、わしがそちらに行く時にはしっかりと、お主達が待っていてくれるのであろうな…そして小夜も交えて、四人で酒を酌み交わそうぞ…
(憐の爺さんの表情は、曇りのない晴れやかな表情を浮かべていた。そして爺さんの口からも出た、小夜と言う名を抱きながら、俺は星の爺さんに身体を貸した。その時に爺さんからポツリと告げられた)
≪…ありがとう…澪よ…これにてわしと耀は共に旅立てる。だがその前に娘を戻さねばならぬな…≫
(穏やかな声の波長に変わり、菫を戻す為に星の爺さんは何かをしようとしていた。その時だった。親父からの言葉を爺さんに伝える)
≪心配せずとも悪霊達が飛散した事により、東雲菫は肉体に戻りしある。あれを見てみよ…≫
(親父の声が指す方向からは、菫の霊体がゆっくりと肉体に戻りつつある姿が見えた。そして俺は安堵した。そして、親父から星の爺さんと耀の婆さんに言葉を送られた)
≪南雲星、東雲耀よ。汝ら、お互いの手を二度と離すでないぞ!!其方ら二人であれば、険しき道もきっと乗り越えられようぞ…行きなさい…天の光が示す道へ…。二人ともに、手をしかと握りしめての…≫
(親父からの言葉を受け取った二人は、俺の身体と菫の身体から抜けると、二人して俺達全員に深々と頭を下げて、天の光の下に歩み始めて行く)
ん…っ…えっ!!…なんで!!私、澪さんに抱きしめられているんですか!?
(目を覚ました菫の叫び声が、西野家の屋敷に響いていた。その俺達の姿を、夫婦は笑みを浮かべながら見守り、親父や山の神々、そして憐の爺さん達は大爆笑していた。そして空は夕焼けに覆われ始めて来た)
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