シシファック(偽)
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シシファック(偽)
信濃の山奥に獄王といふ名の猪がいた、身の丈4m、鈍色に輝く鋭い牙も入れると5mには達しようかといふ巨大な猪である。村の田畑は無論のこと、獄王は牧畜の家畜まで一突きに突き殺した。さうしてたった一頭の猪によって村は荒れた。
獄王を退治せんとまたぎ衆も幾度となく狩に出た、しかし人死を出してはほうほうの体で帰ってきた。獄王の硬い額は弾丸をも跳ね飛ばすといふ。
そんな村に一人の旅人があった、こんな山奥に如何なる要件か訝しんだ村長は「すわ! 何者ぞ!」と圧をかけた。その漢は間髪を入れず「兵(つわもの)に見え(まみえ)に来た!」と吠えた。確かにその漢、2mはあろうかという偉丈夫で、全身を纏う筋肉は鋼のように見えた。だが村長には、村に関わり合いのない面倒ごとに思えた。
「こんなところに兵はおらん、おるのは百姓ばかりじゃ」呆れかえって答えると、村長の娘が割って入った。娘は「おる! この村には馬鹿でかい獄王という猪がおるんじゃ! 鉄砲なんかじゃ怯みもしねえ」と云う。男はその名を聞くと「獄王…相見える!」と断言した。
獄王が現れるのは決まって夜である。一旦村長の家に身を寄せると漢が云った「我名は尊王寺、日ノ本一を目指して全国の兵と相見えておる!」
「お前は獄王の恐ろしさを知らんのだ、悪いことは言わん、夜が明けたら山を降りるのが最善だ」狼狽えて村長は答えた。
「強い奴なら、より強い方がよい! 俺は強い奴に勝ちたいわけじゃあねえ! 見えてその身体を伴にしたいだけだ! 俺はそうしか誰とも! 分かり合えぬ!」村長の静止によりいきり立った尊王寺は、涙を流し辺り一帯に轟く声で吠えた。ビリビリと空気を震わせた胴間声に村長の娘は少し粗相した。この慟哭で一行の肚は座った。
夜が更け、尊王寺達は待ち構えていた、半刻も経った頃、待ちかねた奴が姿を現した。藪の中から出し抜けにザッと飛び出すと尊王寺を睨めつけている。その巨軀は尊王寺を遥かに凌ぐ、まず勝ち目はないように思われた。「はー! はー! 獄王よ! さぁ! やろうじゃねえか!」尊王寺が月夜に雄叫びを上げた。すると尊王寺の着物が千々に破けてしまった。プリャリャ〜ン、尊王寺の尻がまろび出る。鍛え抜かれた身体は益荒男(ますらお)と呼ぶに相応しい。しかし何よりも目を引くのは尊王寺の一物である。
「でっけぇ、オラァあんなの見たことねぇ」村長は腰を抜かして尻餅をつくとそのまま失禁してしまった。尊王寺のそれは顔の辺りまで反り返り、ドクンドクンと脈打っていた。とてつもない大きさである。
「獄王の牙と尊王寺の…その…あれはいい勝負だ」娘は思わぬ自分の言葉に恥じらいを覚え、尊王寺の魔羅を凝視することができなくなり、人知れずつぅーっと粗相した。
獄王が突進する、地響きを轟かせ、土煙を上げながらあ一気に肉薄すると頭をグイと下げて牙で貫こうとした。
尊王寺は微動だにせずその牙を肩に背負う形で受け止めた。そして立ちどころもなく開いた獄王の口に一物をねじ込んだ。
「嗚呼…口淫じゃ口淫をしとる」村長が言うとともに、尊王寺の悲鳴が木霊した。獄王の乱杭歯が陰茎を噛み切ったのだ。
「そりゃそうだべ」逃げ支度をしている村長に娘は云った「尊王寺は諦めてねぇ! あれはファックを諦めてねぇ漢の目だ」「ファック…シシファック」村長もドッカと座り込み見届ける覚悟をした。
股間から血を迸らせて、尊王寺はなおも獄王を離さなかった。
(へっ…海綿体に集まっていた血が一気に抜けていきやがる)
キメる! と尊王寺は集中を研ぎ澄ませた「うををををををーーーー!!!」体を捻ると、獄王をどうと横倒しにした。激しく嘶き暴れる獄王をねじ伏せると、尊王寺は血走った獄王の瞳を見つめた。
「俺はお前を犯す。全力で犯す」そう言うと、尊王寺は獄王を腕枕し耳をネロリネロリと舐め始めた。その刹那「いてぇー!!!」果たして獄王が尊王寺の耳を引きちぎったのである。
「へっへ、とんだじゃじゃ馬だな、あぁ! なぁ!」村長の娘に向かって尊王寺は云った。
(馬じゃなくて猪だべ、こいつただの馬鹿なのかもしれん)ヘラリとと笑った娘の先で絶え間なく闘いは続いていた。
距離を取った獄王は、地面を蹴って再び突進の構えだ。尊王寺は中空に向かって正拳突きを繰り返している。嗚呼あの額を拳で割るつもりなのだ。
涎を垂らし充血した眼をぐるぐると回転させ突進してくる獄王を、尊王寺は仁王立ちで待ち構える。
「尊王寺ー!!」思わず顔を伏せてしまった娘が恐る恐る顔をあげる。と、そこには額から血を吹き出す獄王とあらぬ方向に腕が曲がった尊王寺がいた。
すかさず獄王の目線までしゃがみ込んだ尊王寺が優しく云う「おめぇ、メスだろ?メスなのに獄王じゃかわいそうだ。おめぇは今から花子だ」
「ブヒヒ」獄王、いや花子も満更でもない様子で尊王寺を見つめている。そして静かに一人と一匹は接吻した。舌を激しく絡めあい互いの温もりを求め合う。
「あ…でも尊王寺には…その…あれが…」娘が思わず口にした。そのはしたなさに被虐心を覚えた娘は軽く気をやった。
尊王寺はささやいた「花子犯すぞ」花子はさっきまでの狂ったような殺気が嘘のように大人しい。花子の後ろで尊王寺が腰を振る。犯すというにはあまりに優しく、かと思えば物を扱うようにぞんざいにそれを扱った。
「ブヒー!ブヒヒー!」花子が歓喜の声を上げる。
「そんなバカな……見える尊王寺の一物が見える!」村長が驚きの声をあげる。
「見える、、、オラにも確かに見えるだ!」娘はくらりと倒れがかりながら、ふたび気をやった。
尊王寺の腰の速度はとてつもない速さになっている、花子は白目を剥きブクブクと泡を噴いている。
いよいよ終演が迫っていた、ぼたぼたっと尊王寺の股間から血の塊が吹き零れる。いよいよ限界だ。
「逝くぞ! 花子ー!」「ブヒー!!!」「わしもー!」「オラもー!」辺りの木々に休む小動物や、空を飛ぶ鳥がバタバタと落ちてきた。そこに居合わせたありとあらゆる生殖生物が、真っ白な恍惚の世界で逝きに逝ったのだ。
「どうか村に残ってはくれんか」村長が云う。
「俺は一度抱いたメスは二度は抱かん、もっと強い兵を探しに行くだけだ」尊王寺は怪我の癒える間も無く、兵探しの旅に戻った。
「しょうがねぇ、尊王寺はそういう漢だで」ぎゅうっと拳を握って娘が云った。
尊王寺の去った後、花子は以前にも増して村を荒らしまわっているということだ。
おわり
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