第408話

 マニプーラワールドオンラインは、リメイクブームの一つといえる。


 家庭用ゲーム機の流行と同時にアダルトコンテンツのゲームがパソコン用ゲームで販売されていたけれど、だんだん規制されて衰退する。

 オンライン環境がスマートフォンの普及とパケット定額制の通信料が導入されソーシャルネットワークのネットゲーム(ソシャゲ)が流行して、そのあとのアプリのオンラインゲームが、ソシャゲブームに続いた。


 アダルトコンテンツとして、アダルトビデオからアダルトDVDに、そのあとは海外サーバーで配信されたアダルト動画が流入してくることで、売上が低迷していく。

 アダルトビデオからアダルトDVDに移行していく過程で倫理規制が制定されたり、企業側で自主規制などが行われていく。

 いわゆる成人映画からアダルトビデオに移行していき、テレビで視聴できる番組の内容も規制がかかり、だんだん個人用コンテンツに閉じていった。

 聖戦シャングリ・ラのスポンサー企業であったサンダースは、アダルトビデオの全盛期からの映像作品を制作してきた老舗メーカーだった。


 聖戦シャングリ・ラは、ソシャゲブームで、プレイヤーたちによるアイテムやキャラクターのガチャによる課金で儲かると噂を聞いたサンダースの社長が、ゲーム市場に参入するために、パソコン用アダルトゲームでヒット作を出していたゲーム制作会社の社員を集めてゲーム制作会社を立ち上げた岡田昴をプロデューサーとして採用して制作開始された。

 アダルトゲームで儲けて、アニメ制作の赤字を埋めていた会社もあったが、それは家庭用ゲームの普及でパソコン用ゲームの売上が低迷すると方針を変更していくことになった。


 アダルトコンテンツとしての二次元のアニメは、アダルトビデオで制作され、それはパソコン用ゲームからソシャゲのキャラクターデザインのデザインに採用された。アダルトゲームはパソコン用ゲームからアプリのゲームでその演出が再利用された。

 パソコン用ゲームは価格が高かったがアプリのゲームはソシャゲと同じように途中で消費者であるプレイヤーの課金で収益を上げるように考えられて制作されていた。


 家庭用ゲームなどでも二次元のアニメ画像とポリゴンによる立体映像が採用されていたけれど、アダルトゲームとして動きのぎこちなさや表情などが不自然という意味で、撮影された映像にはかなわなかった。


 二次元のアニメ画像をどのようになめらかに動かすか、表情を表現するかという点で、マンガの絵の表現がアニメ画像に使われ、それはのちにゲームにも採用されて、撮影された映像作品とは別の需要を獲得していった。


 アニメブームから、声優ブーム、その流れからのVTuberアイドルの流行までの変遷もあるけれど、それはテレビから個人視聴のネット動画へ移行して、テレビ局でなくても個人が番組を動画として発信できるようになった一般化の流れの中にある。


 ゲーム制作は企業から一般化の流れには移行しきれなかった。

 むしろ、逆行したともいえる。


 マンガや小説は一般化の流れで動いていて、雑誌や書籍もデジタル化していくのと、情報発信の人気は無料動画配信コンテンツに押され気味である。

 読者は氷山の一角で、それ以上に制作側に憧れる人の方が多くいた。

 それは以前はコミックマーケットなどで同人誌をサークルを作り制作販売していたことなどでも知られてはいた。

 それがネットワークシステムの普及によって、出版社を介在しないで作品を広められる環境が整っていくことで、企業の予想よりも多かったことがわかった。


 マンガやアニメ好きのファンでありゲーム好きのファンでもあるという人は、家庭用ゲームの流行のなかで育った。

 

 マニプーラワールドオンラインは、ソシャゲ以上に、一般向けの家庭用ゲームに近い。アダルトゲーム要素を削除して調整されている。


 家庭用ゲーム市場が縮小していくのと同時に、オンラインゲームとしての快適なプレイ環境を維持するクオリティのために、制作にかかる予算が以前の家庭用ゲームよりも高額だけれど、市場を自国だけでなく海外の市場にも拡大することで利益をさらに上げようと狙った時に、アダルト規制基準を消費者のプレイヤーが多い一般向けのコンプライアンスに合わせたという事情がある。


 ソシャゲブームや、家庭用ゲームの流行のファン層をつかんで利益を無難に確保しておきたい目的から、マニプーラワールドオンラインはリメイクブームと同じ考えから制作されている。


 パソコン用ゲームのファン層――ニッチ戦略として特定のファン層を消費者として狙った考えから制作された聖戦シャングリ・ラはゲームから、ラノベ化やマンガ化とジャンルを越えてバージョンアップして新たなファンを獲得していく。

 

 この聖戦シャングリ・ラとマニプーラワールドオンラインは、ウィルスと細菌のちがいに近い。


 細菌は単細胞の生物で、細胞分裂により増殖する。 基本的には、栄養素さえあれば、自身のみで増殖できる。

 ウイルスは生物の細胞に感染する複合体で、細胞ではない。 ウイルスは生物の細胞に入り、その中で細胞の機能や構造に依存して増殖する。


 マニプーラワールドオンラインは細菌的。聖戦シャングリ・ラはウィルス的である。

 

 ウイルス進化説というものがある。これは自然淘汰による進化を否定する。進化は、ウイルスの感染によって起こるという説である。


 メイプルシロップ先生のあと、岡田昴をゲストに呼んだ配信では、リメイクブームの話から、ゲーム業界の流行の歴史やウィルス進化説まで話が広がった。


 配信者の双子のVTuberのいつきのぞみは、ゲストの話を聞いていた時はわからなかったことをあれこれ調べながら動画編集をしていて、前回に引き続き知恵熱が出るんじゃないかと思った。


►►►


 エリザがストラウク伯爵やマキシミリアンから、ホムンクルスや魔石についての考察を聞いていて、わからなすぎて、やはり知恵熱が出るんじゃないかと思っていた。


「よくわからないから、そういうもんだって考えたほうが、らくちんだと思うけどなぁ」


 アルテリスが、屋敷の周辺を散歩にわかなさすぎて考え込んだエリザを連れ出して、そう言うと笑っていた。


「アルテリスは、もっといろいろ考えたほうがよいぞ」


 足元を歩いているシン・リーは、アルテリスを見上げてそう言った。




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