gold 異能力デスゲーム

林花

第1話

「神とはいるのだろうか?」


もうすぐ、僕の好きな女の子の誕生日だ。僕は、昨日珍しく夜にスマホの胡散臭い「高校生の女の子へのプレゼントにおすすめ5選」というサイトを見ながら、いやらしくないか?いや、これは守りすぎてつまらなくないかという答えのない自問自答を繰り返していた。スマホを見ているだけではらちがあかないと思い、女子高生がよく行く都会の複合施設に行く計画を立てた。

昨日夜遅くまでスマホで調べていたせいかまだ眠い。眠い目を擦りながら身支度をして目的地に向かう。

行く道中を歩いていると

男「こっち来いよ、いいじゃねーか。俺と一緒に一息つこうぜ。」

女「やめてください。」

男と女のいる大通りの路地を見ると、黒服のスーツを着た男が華奢な女の腕を掴んでいた。辺りを見渡しても、周りの人間はその路地を避けるように大回りをしていた。

僕(やべー。マジもんなやつやん。怖い。ここでちょっかいを出したら一生追いかけられそうな見た目をしている。関わらないのが身のためだな。)

僕は路地を通り過ぎる。

女「誰か、助けて。」

僕「おい、嫌がってんだろ。離してやれよ。」

男「あん、誰だてめー。」

男はこっちに振り返ると

男「ちぇっ、お前、運上か。」

男が腕を離して逃げていくと、女もこちらを一瞥すると怯えたように逃げていった。


人がいっぱいいる交差点に場面が切り替わる。

スマホを見ながら昨日調べておいた店を探そうとする。辺りは高々と並ぶ高層ビルに目まぐるしく変化する電光掲示板が埋め込まれている。

運上「確かこっちだっけ。」

スマホで地図アプリを起動して、場所を確認する。

立ち止まっていると、いろんな人がぶつかってくる。まるで自分がモノみたいだ。僕と同じ人間か?

運上(この、交差点の反対側にあるみたいだ。)

交差点の歩行者信号が青になるのを待つ。

青になり出した途端、軍隊の行進のように人々がいっせいと動き出す。横断歩道を半分くらい渡った時。

???「運上光」

突然名前を呼ばれ、横断歩道の途中で立ち止まり、辺りを見渡す。その間に横断歩道を渡る人々にぶつかる。

???「上だ。」

そこには、ネズミ型のホログラムのようなものが映し出されていた。辺りを見渡すと誰も上を見ないでみんなが横断歩道を歩いている。

運上(そうか、今流行りのフラッシュモブ的なやつか。みんな、俺を騙そうとしてるんだな)

???「馬鹿なやつだな」

運上(待て、この音声は耳から入ってきてるものじゃない。まるで脳に直接音声が流されてるみたいな感覚。しかもこの人数がエキストラとは考えにくい。)

汗がたらりとほおを伝う。

???「お前は、神候補者に選ばれた。」

運上「は。」

辺りを渡る歩行者が一瞬振り返る。

???「これから、神候補者でデスゲームをしてもらう。

ルール1 神候補者が1人になるまで神候補者に殺し合いをしてもらう。

ルール2 期日までに神候補者が1人にならなかったらこの世界を壊させてもらう。

ルール3 神候補者が死んだ場合、誰の記憶にも残らずいなかったことにされる。

ルール4 神候補者が近づいた場合、わかるようになる。

ルール5 神候補者はこの〇〇都からは出られない。

ルール6 神候補者には能力が与えられる。

ルール7 神候補者の勝者には一つ願いが叶えられる。」

運上「は。」

呼吸が夏の犬のように浅くなる。苦しい。

ぷっぷっー。車のクラクションが鳴らされる。

俺は突然走り出した。

運上「なんだよ、なんだよ。」

胃の中が熱い。何かに掴まれてるみたいだ。

ショルダーバッグのベルト部分掴みながら急いで人をかぎ分ける。

通行人「おい。」


駅に着くと電車に乗っていた。何駅くらい乗っていただろう。駅に乗る人たちと降りる人たちが僕だけを取り残して移り変わっていった。

電車から降りて、町に出た。知らない町だった。一度も来たこともないし、知らない店ばかりが並んでいた。

歩いた。とにかく歩いた。離れたかった。

30分ぐらい歩いただろうか。

ぐーという音が腹の中から鳴った。辺りを見ると、アンティークな木目調のカフェが目に入った。右ポケットに入っている財布を見ると1万円札が入っている。


チャリン。

店員「いらっしゃいませ。」

アルバイトかと思われる若い女の子がエプロンに身を包んで出迎えてくれた。

中に入るとコーヒーの香ばしい香りが鼻に入ってくる。新聞を広げてコーヒーを啜る中年男性、友達と談笑をしている女学生。

4人ぐらい座れる席についた。メニュー見て、卵サンドとホットコーヒーを頼んだ。

運上(なんだったんだ。確実に俺しか見えてなかった。幻覚か?俺はおかしくなってしまったのか。)

まて、俺以外にも見えてた人間がいたんじゃないか?ショルダーバックからスマホを取り出してニュースアプリで地名を入れて検索する。出てこない。いや、SNSなら1人くらいはいるんじゃないか?SNSアプリを起動して検索する。

出てこない。スクロールする。まじサイコー。今日誰々と待ち合わせ。とか言う投稿ばかりだ。

もう秋だってのに汗がたらりと垂れてくる。ダラダラと垂れてくる。やばいやばい。ネズミ型のホログラムの映像が頭の中で思い出す。デスゲームをしてもらう。デスゲームをしてもらう。何度も頭の中で繰り返される。息がだんだん早くなる。やばいやばい。

「あの、大丈夫ですか?」さっきの店員さんが覗きこんで話しかけてきた。

運上「大丈夫です。ありがとうございます。」

店員「こちら、ホットコーヒーと卵サンドです。」

軽く会釈をする。ホットコーヒーをすする。胃の中のものが逆流してくる感じがした。やばい。急いでトイレに直行する。トイレには窓がついている。今朝から何も食べてないからか、唾液しか出ない。

席に戻ってコーヒーを飲む。吐いた後だからか口の中が酸っぱい。

運上(何も起こらない。あれは幻覚だ。きっと寝不足だからだ。)

息を大きく吸い吐き出す。

周りを見てもみんな仲良く談笑し合ってる。笑いあっている。

さっきの店員さんを見ると忙しなく料理を運んだり、注文を取りに行ったりしてる。入ってきた時には気づかなかったがジャズがbgmで流れている。落ち着ける曲だ。

頭の中でピッ。という音が流れてくる。

運上(なんだ?今日は自分がおかしくなっているみたいだ。)

白い食器に置かれている卵サンドを一口かぶりつく。美味しい。マヨネーズのしょっぱさがちょうどいい、隠し味に醤油と鰹節が入っているみたいだ、和な味がする。

ピッ、ピッ。だんだんとその間隔が短くなっていく。

(なんも起らない。何も起こらない。)ピピピ。

チャリーン。ドアが開く音がする。

「いらっしゃいませ。」さっき、心配してくれたお姉さんが接客をする。

(ほら、俺の考えすぎなんだ。きっと寝不足なんだ。さっさと帰って寝よう。)

パーン。

銃声音が店内に響き渡る。刹那の沈黙の後、店内にいた客たちが一斉に悲鳴をあげる。

「はずれか。」

(俺だ。やばい逃げなきゃ。)

さっき入ったトイレに入り込む。鍵をかけて、自分の胸くらいの高さの通気口くらいの窓に手をかける。

(この高さからでれるか。)

がたがたトイレのドアが振動している。

「開けて」女の人の声が聞こえる。

ごめん。心の中で小さく謝ることしかできなかった。

逃げるしかない。窓から頭から突き出す形で出る。うわー1メートルくらいの高さから頭から外に出る。

(いてー。)

早く逃げなきゃ。

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