第3話 家の名は
「ふわぁ~・・・」
昨夜の出来事をなにも知らない陣はのんきにお昼過ぎに起床。
階段を降りて朝の支度。
「ん?なんだろう?これ?」
リビングにて遅い朝食を食べていると壁にかけられているボードに昨日までは無かった文字が書かれていた。
「誰かが書いたって事?・・・え!?誰かいるの!?」
自分しかいないはずの家の中のボードに身に覚えのない文字が書かれている。その事実により誰かが自分の家の中にいると思った陣は恐怖となる。
「・・・何が書いてるんだろう・・・」
そろりそろりとボードに近寄る。すると、ボードにはこう書かれていた。
『初めましてマスター。私は家です。昨夜レーザーオーガの襲撃があり討伐。地下の倉庫にて保管しております』
そう書かれた文字を見た陣は恐怖よりも困惑が大きくなった。
「・・・家って・・・この家の事?家スキルの家?・・・え?意思があったの?」
そう疑問を口にする陣。するとボードの言葉は変わる。
『家がマスターの使用した家スキルから生まれた家の事かという問いには
「え?でも今こうやってやり取りしてるのはじゃあなんなの?」
『マスターに分かりやすくお伝えするならば私の事は高度に発達したAIと思っていただければ問題ありません』
「AIか・・・なるほど。じゃあそういうものって思っとく。それよりもレーザーオーガってなに?襲撃って言った?」
『
「・・・そのレーザーオーガって魔物を家が討伐したの?」
『
「・・・家スキルすごい・・・」
その後、陣本人も知らなかった地下室に向かう。
「こんなところに地下があったんだ・・・知らなかったな・・・」
地下への階段を降りていく陣。するとそこは何個か部屋が存在した。
「・・・地下なのにこんなに部屋いらないんじゃない?誰か閉じ込めるわけじゃあるまいし・・・」
陣はそう言いながら教えられた部屋へと歩いていく。するとそこには倉庫の文字が。
「ここか」
部屋を開けるとそこは広く石の壁で中央にレーザーオーガの死体が置かれていた。それにそろりそろりと近づいていく陣。
「うへぇ・・・今にも動き出しそうなんだけど・・・これって本当に死んでるの?」
陣は独り言のつもりで呟いた。ボードも持っていないため家から返答が帰って来るとも思っていなかった。
しかし陣の言葉の後に石の壁が動き出す。
『是。レーザーオーガは確実に死亡しております』
そう壁が言葉を紡ぎだした。
「・・・ボードいらなくない?・・・」
『否。雰囲気です』
「絶対意志あるじゃん」
しかしその言葉には家は返答しない。レーザーオーガの死体の確認を終えた陣は魔物について質問する。
「やっぱりこの世界には魔物っているんだ?」
リビングでカップ麺を食べながらボードに向かって質問。
『是。魔物は存在します。魔物が存在する理由ですが「ああ、それはいいや。興味ない」・・・是。了解しました』
「ちなみにさあの魔物はどれぐらいの強さなの?」
『魔物のランクは1から10となっており数字が大きいほどに強さも増していきます。そしてレーザーオーガはランク8の魔物であり強さを分かりやすく言えば国が襲われた場合国家の危機となるだろうレベルです』
「・・・たしかに死んでるのに迫力あったもんね・・・と、いうか強いんだね?家って?」
『是。わたしは世界龍ボルディアなどのランク10の魔物の攻撃であろうとも揺れる事すらありません』
「世界龍?・・・でもたしかに俺は襲撃があったの知らなかったし・・・じゃあここに引きこもっていれば安全だね」
『是。マスターは家の中にいる限り生涯お守りいたします』
「頼むねリン!」
『リンとは?』
「家の名前だよ!意思が無いとはいえこうして会話が出来るんだったら名前を付けないと!ちなみに紅林の林からとってリンね!リンって性別がどっちでもいける名前でしょ?どうかな?」
『・・・かしこまりましたマスター。これより私はリンとさせていただきます』
「これからよろしく!リン!」
『よろしくお願いしますマスター』
こうして家=リンと命名した陣は外には狂暴な魔物が存在するとして一層引きこもりの決意を硬くした。
*****
数日後
「隊長?誰なんすかね?あんな危険な森の近くに家を建てる奴って?」
「さあな?珍妙って話だしエルフとかか?」
「エルフの家を珍妙っ言いますでしょうか?エルフがどういう生活を送っているかぐらいは常識の範囲内でしょう?」
「それだったらダークエルフの方が可能性は高いよな?ここら辺にはダークエルフはいないわけだしよ?」
彼らはバングル王国ギーレモ領ツァイファー・ギーレモ公爵の指示を受けギーレモ領に不法にて建築を行った輩を排除しに来ている。
「お前ら私語はここまでだ・・・確かに珍妙な家だが誰がいつの間に建てたのか分かっていない。もしかしたら凄腕の魔法使いかもしれない。慎重に任務に当たれ」
「「「ハッ!」」」
「では行くぞ」
そこには先ほどまでの緩い雰囲気はない。任務を遂行しようと真剣な表情となった騎士たちのみ。
彼らは知らない・・・その珍妙な家はランク8のレーザーオーガですらなにも出来なかった恐ろしい家だという事を。
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