第6話記憶

「うん逢えた・・・。」


 恒子は斜め45度を見上げて、空を駆ける羊雲の隙間から垣間見える面積の狭い青空を観ながら腰を屈めて靴紐を結び直し、斜め下から僕を覗き込んだ。


 恒子の所作を一挙手一動、鮮明に覚えていた僕には記憶力が在るものだと思いたいが、死んでからの記憶がアーカイブとして脳にインプットされる様だ。

 恒子の顔面は僕の背中をロックオンしていた。


 乾いた風が恒子の前髪をカラカラと吹き飛ばして行き内側に丸まった小さな束を揺らして、恒子の白い額を際立たせていた。

 ここまでは覚えている。

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