第43話 愛する姉と恋する妹のシスコンラブコメ
朝、目が覚めるとキッチンの方から料理をする音が聞こえてくる。少し前までは二度寝したいほどの朝寒だったが、4月に入ってからはだいぶ快適になってきた。私はベッドから這い出ると、着替えてからリビングへと向かう。
「真恋おはよう」
「おはようお姉ちゃん。朝ごはんもうすぐできるよ」
「うん、ありがと」
真恋と生活するにあたって、いくつかのルールを決めた。1つ目は最初に家事の分担。朝食は真恋、夕食は私、お昼は朝食と夕食の残りを詰めるか学食やコンビニを利用すること。この割り当ては朝が弱い私のために真恋が提案してくれた。朝は楽させてもらっているが、その分夜は部活などで遅くなるであろう真恋に負担がかからないよう、サークルなどに入っていない私が夕食だけでなく掃除や洗濯も担当することにしている。
「はい、準備できたよ」
「ありがとう!真恋、今日の予定は?」
「部活動見学があるからちょっと遅くなるかな、見学だし多分6時までには帰って来られると思う」
「わかった。じゃあ夕食はそのくらいの時間にできるようにするね」
「うん、ありがとう!」
2つ目は朝食時、または携帯で帰宅時間などをお互いに連絡し合うこと。これは主に私が真恋に出来立ての夕食を食べて欲しいからという理由でできた。それ以外にも私が夕食を作れなかったり真恋が夕食を友達と食べてきたりする時も連絡するようにしている。
「それじゃあいただいます!」
「いただきます!」
「じゃあお姉ちゃん、はい、あーん」
「あーん……あむっ」
「どう?美味しい?」
「うん、美味しいよ。ほら真恋も、あーん」
「あーん……あむっ!」
3つ目はスキンシップに関して、食事するときは必ず1回はお互いに食べさせ合うことや、週に1回は同じベッドで寝ること。家ではなるべくリビングで過ごすことなどいろいろなことが事細かに決められている。これは、私の提案である『お互いの気持ちを確かめる』をするためであり、主に真恋が私を堕とすためにしようと思っていた事が書かれている。試しにA4用紙に箇条書きしてみたところ、その条約は裏面にまで続いた。
また、その内容には真恋が提案したものから若干修正されている。例えば朝食をすべて食べさせ合っていたら時間が足りないことは明白だ。そのため、回数や時間に制限を追加することで解決することになった。制限と言っても正確にはノルマのようなもので、時間に余裕があるのなら制限を超えてもなんの問題もない。
「真恋、そろそろ出ないと遅刻しちゃんじゃない?」
「あっ!本当だ!」
お互いに何度か食べさせ合った後、普通に朝食を食べ終わった私が時計を見ると、真恋が家を出る時間の5分前だった。私がそれを指摘するとまだ朝食を食べていた真恋は急いで残りを食べ終え、傍に置いていた鞄を手に取り玄関へ向かう。私も真恋を見送るために玄関へと向かう。
「真恋、今日の夕食何がいい?」
「うーん、カレー!」
「わかった。気をつけてね」
「うん!あ、そうだ。お姉ちゃん!」
「あ、そうだったね。行ってらっしゃい……ちゅっ」
「……ぷは。行ってきます!」
短いキスを終えた真恋は玄関から出ると小走りでエレベーターの方へ向かう。3つ目のルールの最後の項目。出かけるとき、帰ってきたときはキスをすること。基本的には見送る側、迎える側からキスをする。このルールができてからはや一週間。最初は感じていた不安感や罪悪感も今や日常になっていて感じない。
マンションの廊下へ出て、すぐ下の出入り口の方を見ながらひのもバラク待っていると、真恋が飛び出してきて私の方へ手を振る。私もそれに手を振って返し、見えなくなるまで真恋の背中が見えなくなってから家の中へと引き返す。
この生活は世間からしたらおかしくて、人によっては気持ち悪くも映るのだろう。昔の私なら世間の目を気にしてこんな生活すぐやめるべきだと考えるだろう。しかし今は、真恋と話し合って2人で決めたこの生活を否定なんてしない。それに……
「真恋が望んじゃってるしなぁ」
真恋と完全に和解した今、愛する妹の希望を断る理由なんてない!
つまるところ私、藤咲愛純は筋金入りのシスコンなのである。
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いつもご愛読ありがとうございます。作者こと熊肉の時雨煮です。
この度は『愛する姉と恋する妹のシスコンラブコメ』を読んでいただきありがとうございます。読者の皆様のおかげでカクヨムコン期間中に10万字達成(後書き抜き)、第1章完結まで漕ぎ着けることができました。
私の第二作となるこの作品並びに第一作である『吸血公女に拾われた』ですが、実を言うと私自身納得のいっていない部分がありまして、カクヨムコンでの結果かかわらずいつかリメイクして最初から書き直そうと考えています。
話は変わって私ごとではありますが、今後公募での活動もしていこうと考えており、カクヨムでの投稿頻度が落ちていくかもしれませんが、公募落ちした作品や短編、カクヨム連載用のプロットなどを投稿していこうと考えておりますのでご了承ください。
また、その際は本作品の第2章や『吸血公女に拾われた』の方も投稿していく予定ですので楽しみに待っていてください!
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