第22話とある庶民の妄想
本日2話目の投稿となります。前話をまだ読んでいない方は、そちらもどうぞ。
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私はこの世界の主人公、ミリア。尚、家名はない! だって平民だもん!
平民のくせになんで主人公だなんて威張ってるのかって? そりゃあこの世界が私の知ってるゲームの世界だからよ!
私は元々はこの世界とは別の世界で生きていたけど、ある日過労で死んでしまったの。そしてこの世界に生まれ変わった。
ああ、一応言っておくけど、ブラックってわけじゃなかったわよ? ただ、ね。ちょっと頑張りすぎたのよ……ゲームを。流石に四日間徹夜でゲームと仕事を続けんのはきつかったわ〜。最後の方とか、もう記憶にないし。
で、まあそれはいいとして、そんな私がやっていたゲームっていうのがこの世界、『剣魔戦線〜失われた栄光を求めて〜』ってわけよ。
このゲーム、よく作り込んであるけど、あんまり人気は出なかったのよね。なんでって、だってめんどくさすぎるもん。
名前からわかるかもしれないけど、このゲーム戦闘ものなのよ。でも、世界観を作り込んだせいか、無駄に恋愛パートが盛り沢山なの。戦闘も恋愛も、それだけで一つの物語として成り立つのに、両方詰め込んだせいでてんやわんや。フラグ管理がめんどくさいし、かと思ったら合間合間で戦闘が入ってきて、真面目に戦わないとゲームオーバーだしで、まあ一般ウケしなかったゲームね。
ただ、爆死したかっていうとそうじゃない。一部ではかなりヒットしたゲームよ。だからこそ私も買ったわけだし。
で、何がヒットしたのか、どんな層にウケたのかっていうと……このゲーム、同性婚ができるのよね。
いやまあ、実際に結婚するシーンがあるわけじゃないけど、それを仄めかす会話とか、妙に仲良さそ〜なスチルとか、エンディング後に二人が一緒に住むシーンとか。まあそういうのがあったわけよ。いやはや、流石はジェンダーレスの時代ねー。ジェンダー万歳! BL万歳! ああ、もちろん普通に男女での恋愛もできるんだけどね?
しかも! ただ主人公とキャラがくっつくわけじゃなく、自分で主人公を選ぶことができるの!
どういうことかっていうと、まず男女合わせて十人の攻略対象キャラが用意されてるの。で、プレイヤーはその中から一人を選んで物語を進めてくんだけど、そこからはメインストーリーさえ進めてれば恋愛が自由なのよ。男女間の恋愛も、男同士の恋愛も。男キャラを選んで男キャラを攻略! なんてこともできるわけね。物語やスチルの量が化け物染みてたけど、そこがウケてそれなりに売れたってわけ。
もちろん、私は全キャラ(男)プレイしてるし、組み合わせも全部(男同士のみ)制覇してるわ! ……あ、一人だけ女キャラもやったわね。だって普通に恋愛パートみたかったし。
まあそれはそれで楽しめたし、それを徹夜でやったせいで過労死したなんて恥ずかしい結果にならなければ十分満足って言えたわねー。
まあそれも、私がその唯一プレイした女キャラであるミリアになってなければだけど。
……どうしてこうなった? 私がプレイした女キャラがミリアしかいなかったから? くっ……! どうしてあの時の私は王女様でプレイしなかったのか!
でも仕方ないじゃん。各キャラ(男)と恋愛パートを楽しむには余計な身分や設定なんてない方が楽しめると思ったんだもん! ミリアは物語を進めるとわかる秘密があるけど基本的には庶民だし、ごく一般的な社会人だった私の立場に一番近かったんだもん楽しかったですありがとうございました!
けどそれはそれとして王女様になりたかった……それが無理なら『六名家』の生まれが良かった。そっちならもっとまともな暮らしができたはずなのに。
……ふう。まあ、嘆くのはこれでおしまい! 私はこの世界に生まれ変わったんだし、この世界で生きていかなくちゃね。
ただ、だからって使えるものを使わない道理はないよね? ゲームの知識を使って無双しても、大丈夫よね?
私が主人公なんだし、最終的にメインストーリーさえクリアできればOKっしょ?
あのゲームフラグ管理がくそ面倒だったし、現実となった今はあれを完璧にこなすことはまず無理だと考えた方がいいでしょうね。ゲーム通りに行動しても、実際にその通りになるかもわからない。
だから、私が狙うべきは、メインストーリーをクリアしつつ、攻略キャラ達の好感度を上げて、どのルートに入っても良いように調整しておくこと。一言で言うなら逆ハールートを目指すってわけ。
……あれ? この世界はもうゲームじゃないんだし、ゲームにはなかった逆ハールートを目指すこともできる感じ? ……いやいや、欲張ったらダメだってば。そんなことをして全員攻略に失敗したら目も当てられない。
だからぁ……メインストーリーを進めつつ逆ハールートを目指して、逆ハーが無理そうなら誰か一人に固定してルートに入ってく感じ……でオッケーよね?
とりあえず、最低限やるべきことを書き出しておくしかないか。キャラの名前と好みと性格と見た目と、幼少期の思い出とトラウマ。あとはゲーム開始時の悩みと、覚えてる限りの行動。
……メインキャラの見た目とかは問題ないけど、行動ってどこまで覚えてるかな〜。正直あんま自信ない。
ああ、あとはサブキャラ達も思い出した方がいっか。名前だけのキャラとか、ほぼ背景って言えるような奴らも、どこでどう関わってくるかわかんないしね。
あ、と、は〜……あ、剣王の遺産は欲しいわね。あれがあるのとないのとじゃ大分金銭面や装備面での余裕に違いが出てくるし。『六名家』の生まれだったら問題ないけど、あいにくと私は庶民の生まれだもん。稼げるところで稼いでおかないと。
ぬふふ……待ってなさい、我が推し達! 私があなた達を栄光へと導いてあげるから!
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