俺に懐いた幼女の姉は、学校で人気な美少女だった。
浅木 唯
第1話
その日、
しかし、面倒事を避けたかった有翔は、周りの人たち同様見て見ぬふりをして立ち去ろうとしたが、あまりにもいたたまれなくて声をかけてしまった。
「お嬢ちゃん。どうしたのかな?」
できる限り怖くないように笑顔を作った。女の子は有翔の顔をまじまじと見つめた。
「おね...おねーちゃんがね。いなくなっちゃった...」
お姉ちゃんがいないことを思い出してしまったのか、また泣きそうになってしまった。
「じゃあ、お兄ちゃんが一緒にそのお姉ちゃんを探してあげる。」
「ほんとっ!」
女の子がニパッと目を輝かせて笑顔になって安心した有翔は、女の子と手を繋いだ。
「お姉ちゃんはどこに行ったか分かる?」
「ううん。分かんない。」
近くに交番が無いこともあって、あたりがついていないけど周辺を探す。
「そういえば、お嬢ちゃんのお名前はなんて言うの?」
「かりん!」
「へぇ〜、かりんちゃんって言うんだ。いい名前だね。」
かりんが寂しくないように、会話をしながら駅の周辺を歩いていたが、姉は見つからずに再び目に涙を溜め始めたとき
「花凜!」
「おねーちゃん!」
かりんを呼ぶ声が聞こえた。それに反応して俯いていた顔を上げ声の主を見て、パタパタと駆け出して行った。有翔はかりんが転けないように手を離さずついて行った。
「どこ行ってたのよ!」
かりんを叱りながらも、その腕はしっかりとかりんを抱き締めている。
「ごめんなさい。」
有翔はその場に居続けるのも気まずくなってきたので、そっとその場を立ち去ろうとするも、かりんの姉が有翔を見た。
「ちょっと待ってください。」
「なんとか再会することが出来て良かったです...それでは。」
一刻も早くその場を立ち去りたい有翔は、それだけを言い残して行こうとしたが、後ろから小さい力で服の裾を引っ張られるのを感じて足を止めた。
「おにーちゃん。行かないで...」
可愛くおねだりされてしまっては、立ち去る気もなくなってしまう。泣いてしまいそうなかりんの頭を撫でてて落ち着かせる。
「えーっと、何か用ですか?」
「あ、すみません。この子の面倒を見てくれたお礼を...」
有翔の真正面から見て、かりんの姉が口を開けたまま動かなくなった。
「どうしたんですか?」
「もしかして、
固まったと思ったら急に名前を呼ばれて、かりんの姉の顔をよく見ると、あることに気がついた。
「あ!
永澄
「塩野くん。お礼がしたいから連絡先教えてくれないかな?」
有翔からすれば、美少女の連絡先を貰えるという一世一代の大チャンスな訳だが、絃葉の立場故になかなか連絡先を交換しずらい。
「お礼はしてくれなくてもいいよ。だから、連絡先は別に要らないかな。」
少し惜しいことをしたかなと思いつつも、しっかりと断りを入れた。
「おにーちゃん、もう会えないの?」
どんな畜生でもない限り、小さな女の子の涙目上目遣いに抗うことは出来ない。
「そんなことないよ。」
「花凜もこう言ってることだし、また会って欲しいから連絡先交換するよね?」
絃葉から詰め寄られ仕方なく連絡先を交換した。
「うん。ありがとう。」
「お礼は別に要らないけど、何かあったら連絡してくれ。」
有翔は花凜から手を離して立ち上がる。
「花凜のこと見ててくれて本当にありがとう。また連絡するね。」
「おう。」
有翔はまた屈んで花凜と目線を合わせた。
「花凜ちゃんもまたね。」
「うん。おにーちゃんまた会おうね。」
花凜と絃葉が手を振ってくるのに、有翔も手を振り返してその場を離れた。有翔はすっかり花凜に懐かれてしまい、絃葉と連絡先を交換する羽目になったが、それも悪くないかと思うようにした。
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