ぶらり攻略後世界・聖女母娘の日常
刀鳴凛
第1話
「こいつの命が惜しくば、そうだな…先ず俺のケツにキスでもしてもらおうか?」
如何にも悪党面の男が翠色の髪の少女の首元にダガーを当てながら、目の前の貴族然とした寝間着姿の黒髪の女に下卑た笑みを浮かべて言う。
「うむ、言いたいのはそれだけか?」と黒髪の女は婉然と笑う。
その笑みにそぐわぬ鋭い眼光と威圧感に男は焦った。
「この娘の命は…「だから早くケツを出せ!」
何を言っているのだ、この女は?
「だから、早く、ケツを、出せ!と私は言っているのだ!さぁ!早くケツを出せ!
女は笑みをたたえたまま、妙にギラギラとした眼で迫って来る。
どう見ても捕食者、いや完全にイカレた奴の眼だ。
これは勝てない、勝てる訳が無い!
人質の命なんてコイツには意味を為さない。
「ケツにキスだけでいいのかい?ア○ル舐めで天国に迄イカせてやろうじゃあないか!ふっ、ふはははははは!いや、それだけでは我が娘の命の対価には安過ぎるな!」
男は恐怖に負け、少女を突き飛ばし、逃げ出す。
「ゴルァ!待て!ケツにキスさせんじゃないのか!」
「うわああああ!」
女の手が男の上着にかかる。
「ほぉら、いい子だ」
「ひぃいああああっ!」
こうなると、もうどちらが悪役だかわかったものではない。
いや、どちらかと言えば女は控えめに言ってもイカレた痴女だ。
「カーチャン、止めたげなよ〜そいつ腰抜かしてんよ?」
「だがお前の命の代償はキチンと支払ってやらねば、私の矜持が」
更に迫ろうとする女を見て、男は失禁している。
「あーあ、この白い絨毯気に入ってたのに(´・ω・`)」
「む!それは済まなかった(´・ω・`)」
母娘の全く危機感の無い会話は男の耳には右から左へである。
そんな事よりも飛んでもない存在を相手にしようとした後悔しか、ない。
「汚したついでにもうちゃっちゃと首はねて役所で換金しようかね」
「いやいや、生きたまんまだと懸賞金が割増しになるっしょ!通報一択だねっ」
―こうして男は呼ばれた憲兵隊に引き摺られていき、換金は後日とだけ告げられる。
憲兵の一人が男の尋常でない様子を見て呟く。
「一体何があの屋敷で?」
それもその筈、手配書にある鮮やかな金の髪は真っ白に色が抜け、男はガクガクと震えるばかりの廃人に片脚を突っ込んでます候な状態になっていたからであった。
ぶらり攻略後世界・聖女母娘の日常 刀鳴凛 @nekomata-shiro
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