林檎浪漫

津島林檎

一夜

お疲れ様です。

うん、お疲れ様です。

今日は、僕が出した林檎の香水が発売される日だ。

なので、その記念と、制作した方々のお疲れ様会、と云ったところだ。

今話してるのは零さん。

僕の出した香水。

此の香水のイメージモデルだ。

勿論、此の事は誰にも言ってなど無いが、我ながら納得の香水になった。

私、此の香水、本当に気に入ってるンです。

林檎のしなやかさと、女の子の魅力を引き出してくれるパチュリの香り、パッケージの紫陽花と林檎な挿絵も最高に可愛くて、、!

お気に召して頂いたのなら嬉しいです。

こちらこそ、売り出すときの写真、モデルになってくれてありがとうございます。

そう、社員でイメージ写真を撮る、と云ったとき満場一致で零さんになった。

本当にすごいや。

いえいえ、皆様が指すゝめて下さらなかったら、私、挑戦もできませんでしたもの。

皆様のお陰です!

嬉しそうに照れながら返事をする零さんは、本当に林檎みたいに頬を赤く染めていた。

嗚呼、キスしたい。

思考が零さんで埋まりそうだ、

そんな邪心を胸にしまい込み、そろそろ乾杯にしましやうか、と言った。

社員一同、お疲れ様!!

皆が一斉に叫ぶ。

ハッキリと叫ぶ者、声が大きい者、全く聞こえない者も居ましたが、

その中でも零さんは、一人、白雪に木から落ちた林檎の様に、

お疲れ様です。 と云った。

シャンパンに口づけをする。

ーーお、これは、

折角なので、林檎のシャンパンにしちゃいました。

うふふ、と自慢気に微笑するれいさん。

美しい。うん、只只美しい。

では、頂きまス。

ごくっ、とシャンパンを女が呑み込む。

うん、美味しい、美味しいですね。

ですね。本当に美味しい。

社員一同、皆一口のんではそう云う。

そこから、黒服が食事を運んだ。

暫くすると、もう時計は10時半を指していた。

零さん。今日は電車ですか?

はい、うち遠くて、10時半の電車に乗らなきゃいけないんですよ。

まだ九時なので、もう少ししたらお暇します。

微笑む女に一言、あ~と声が漏れた。

あの、零さん?

はい?

いま、9時じゃないです。

え?いや、9時ですよ、ほら。

僕にピンクゴールドのデジタル腕時計を見せつける。

嗚呼、確かに九時ですね、午前の。

え、嘘。あ、本当、時計動いてない!

今何時ですか?!

午後の10時半です。

えー?!やばいです、私、家、帰れなくなりました。

ですね。

あの、良かったらというか、決して下心ある訳では無いのですが、、

家、来ます?

えー、そんな、お邪魔してしまって

善いンですか?

はい、妹が良く泊まりに来てたので。布団でもよかったらなンですけど。

じゃあ、今日はお世話になります。

目の前の女はペコリ、と頭を下げた。

まぁ、僕も終電そろそろですし、行きましょうか。

はい、ありがとうございます。

このパーティは先払い制なので、早速とフロアを出る。

はぁ、今日は楽しかったですね。

はい!場を設けてくださってありがとうございました!

いえいえ、こちらこそ。ありがとうね。

、、、

沈黙が少し続く。

あ、お家何処ら辺なンですか?

もう直ぐです。早く零さんと抜け出して仕舞いたくて、嘘、ついてみました。

何ですかそれ笑

でも、私暗い処得意ぢゃ無いので、

有難いです。

あ、ほら、着きましたよ。

ガチャ

鍵を開ける。

どうぞ。

お邪魔します。わー、綺麗なお部屋ですね。

ふふ、ありがとうございます。

シャワー、先浴びます?

え、お借りしていいンですか?

はい、我社のイメージモデルなので。

じゃあ、有難くお借りします。

そして、女も僕も時期にシャワーを浴びた。

いや、今日は本当に有難う御座いました。お陰でとても助かりました。

いえ、こちらこそ。

楽しかったです。

ねぇ、零さん―。

男の家に来るってのは、そう云う事、なの覚悟してますよね。

どう云う事、ですかね?

この女、あざとい。

女にキスをした。

こう云う事、です。

下心、あるじゃないですか。

でもねぇ、津島さん?

はい?

初めて名前を呼ばれた気がする。

私、感度低いので、楽しめないです。こんなに善くしていただいてるのに、御免なさい。

ー、、、

津島さん、嫌だったら追い出して頂いて結構ですので、ありがとうございました、

眼の前の女はしおらしく、泣いている気がする。

何を考えていたかは、もう判らない。

僕は零の涙を拭った。

ねぇ、零さん。

僕には、此れからの事とか、責任、取れるかどうかなンて、保証出来ないです、けど、

ここまで煽っておいて、何も無し、とか有り得ないし、やって見なければ判りませンよね?

女の腰に手を擦る。

津島さん、落ち着いて下さい。

津島、さ

すかさずキスを落とす。

ん、ね、津島さんやめて

なぁんだ、感度良いじゃないンですか?

いや、何時もはもっと鈍いんです、よ?

へぇー、説得力、無いですね。笑

首周りを擦る。

あ―、林檎の匂い。僕の、僕の香水の林檎の匂い。

抱く―。

零さん、林檎の匂いする。

本当に付けて下さってたンですね。

じゃ、頂きます。

召しあがれ。

、、零さん、それ反則ですよ。

津島さんこそ、強引ですけどね。


煩い女ですね―。

そして、深く深く、キスを落としてくのであった。


―翌朝―


そういえば時計、肌身離さず持っていたほうがいいですよ。

朝方は静かで、女のデジタル時計の音がチクタク鳴る。

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林檎浪漫 津島林檎 @agisai123

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