自分のことが嫌いな俺は、街では美少女で、その街でイケメンな彼女に恋をする
アールケイ
プロローグ 開かれた扉
俺、
声変わり一つしないこの声が。背一つ伸びないこの身長が。女性と間違われることのあるこの顔立ちが。
その全てが嫌だった。
思いは心の中に秘め、友人にからかわれるたびに心をすり減らして。誰にも打ち明けることができずにいた。
けど、中学のときの文化祭で変わった。
文化祭では。誰が言い始めたのか、メイド喫茶をすることになった。まあ、定番だし、なにもおかしなことはない。
そこで、友人にいつものようにからかわれ、女装させられることになった。俺以外は普通に女の子がメイド服を着ていて、俺だけが女装のメイド服。
それについて、女の子からは「頼りにしてるよ」と言われるくらいで、特にお咎めはない。
お客さんからも、俺が男であるとは微塵も思われてなく、「かわいらしいメイドさんね」なんて言われる始末。唯一家族だけが、「なんであんたそんなカッコなの?」と言っていたが知らんふりした。俺が知りたいほどだ。
それでも、クラスのためにメイドをしていると、いつしか自分がなじんでいることに気がついた。
思えばこのときに目覚めたのだろう。
しっくりとくるこの感覚、かわいいと言われることが正しいと思える世界。
これまで自分の容姿を肯定することなんてできなかった。けど、この姿なら──。そう思った。思ってしまった。
それ以来、俺は女装するようになった。家族にそのことを打ち明けるのはとても勇気が必要で、それでも自分のために打ち明けた。
父は「そっか……」と少し複雑な感情を示したが、「それがお前の決めたことなら」と納得してくれた。母と姉は薄々気づいていたのか、「これからは全力でおめかししてあげるから覚悟しなさい」という反応であった。
俺は高校生になった。
相も変わらない声、身長、顔立ち、どれもが未だに好きにはなれない。でも、今はもう、そこまで嫌いじゃなかった。
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