トビーの仕事
トビーはしかめっつらをして黙っている。プリシラは思わず苦笑した。トビーはいっぱしの事を言っているが、まだまだ子供なのだ。プリシラが、どうしたものかと考えあぐねていると、声をかけられた。
「おい、姉ちゃん。これ、アンタのねずみか?」
呼びかけに振り向くと、果物屋の店主が困り顔で立っている。店主の指差す先を見て、プリシラの顔は真っ青になった。果物屋の横の木箱に乗せておいたモルモットのタップが、商品のりんごをシャクシャク食べていたのだ。
『プリシラ、すげぇな!さすが俺が見込んだ契約者だぜ!』
「ヒィ!タップ。お店の商品食べちゃったの?!どうしよう、私お金持ってないのに」
あたふたしているプリシラの横を、トビーはスタスタと通り過ぎ、店主の前に立って言った。
「おっちゃん、そのりんごいくらだ?」
店主はトビーに銅貨二枚だと言った。トビーはポケットから銅貨を出すと、りんごの支払いをしてくれた。
トビーは食べかけのりんごとタップをつまみあげると、プリシラに手渡してくれた。プリシラは驚きながらありがとうというと、トビーは真顔で言った。
「姉ちゃん、金持ってねぇの?」
「え、ええ。これから働こうと思っているの」
「何だ無職か」
「む、無職じゃないわ!就職活動中よ!」
「それを無職っていうんだよ。大人なのに無職なんて情けない」
プリシラは子供にやり込められて、うなだれた。言い返したいが本当の事だ。プリシラが落ち込んでいると、トビーが口を開いた。
「なぁ、姉ちゃん。仕事、紹介してやろうか?」
「えっ?!本当?!」
「ああ、俺の働いている職場で口きいてやるよ」
「トビー、もう働いているの?」
「俺は稼ぎ頭だぜ?姉ちゃん、飛行魔法はできるか?」
「ええ、あまり得意ではないけれど」
「なら問題ない。ついてきな?」
飛行魔法は、風魔法の一つだ。空中でバランスを取るのはとても難しいのだ。トビーは飛行魔法が得意なのだそうだ。トビーは飛行魔法を活かして働いているらしい。
飛行魔法ならば、プリシラは得意ではないが、風魔法の霊獣のタップにお願いすればどこへでも連れて行ってもらえる。トビーが紹介してくれる仕事は、プリシラに向いているかもしれない。
トビーはプリシラたちを、城下町の大通りから外れた裏路地に連れて行った。トビーは小さな店舗の前で止まって言った。
「ここが俺の働いている職場。マージ運送会社だ」
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