第1話 出会い
少し肌寒くなった冬の日の深夜、平日だというのにも関わらず4時になった今も眠れずにいた。
ここ数日は寝るのが6時頃で、1時間寝ている日の方が少ない。僕は1年ほど前から不眠症に悩まされていた。昨年は中学3年ということもあり、人より勉強する時間を確保することができたから良かったが、高校に入学してからは、日中眠たくなっても授業においていかれまいと、欠伸をして耐えて、夜もなかなか寝ることができないというなかなかの地獄の日々であった。軽めの睡眠薬を飲んではいるが全く効かない。週に1度くらいは早めに寝ることができる日がある。しかし、そういう日に限って見るのは悪い夢だ。
それは、僕が幼い頃に他界した母の夢だ。
僕が6歳の時の夏、家に強盗が入り、母は僕を守って死んだ。怖くなった僕は何もできず、少しずつ冷たくなっていく母を見ていることしかできなかった。父が仕事から帰った時には母の身体は冷たくなっていた。未だにその光景が蘇ってくる。そんな夢をみるせいで尚更寝るのが怖くなってしまう。
欠伸ばかりして、目の下には濃いクマのある冴えない僕には友達がいない。グループ活動の際もいつも1人残される。席替えの時、僕の隣になった生徒はみんなに「呪われたー」とからかわれる。何度か自分で死のうかと考えたこともあった。でも、自分で死ぬのが怖くて実行出来ずにいた。
ある日の放課後、学校の図書室で適当に時間をつぶしていたときだった。
「ねぇ。そこどいてくれない。」
後ろから声をかけられ振り返るとそこには、寝癖なのか、セットなのか分からない程ぐちゃぐちゃな長い黒髪の女子が不機嫌そうにぼくを見ていた。訳も分からず席をどくと、彼女はすぐにその席に座り机に突っ伏してしまった。向かいに座るのははばかられたため、他に空いている席がないか探し回った。しかしどの席も空いておらず、結局彼女の向かいに座った。いつ起きるか気になっていたが一向に起きる気配はなく、その日は下校を促す放送がなってから彼女は起きた。彼女のことが気になりずっと見ていた僕は、起きてまだ眠そうにしている彼女に
「なに?なんか文句?」
といわれてしまった。返答に困り、
「あ、いや、その...。ぐっすり寝てるなって......」
「なに?痴漢目的?」
しまいにはキモっと言われてしまった。
つづく
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