機械チートだけど周りのケモがデカすぎる
蓮太郎
第一話 目覚め
転生、とある日に、何の前触れも無しに死んでしまった俺への何らかの謝罪と善意を受け取ってある世界に転生した
どうして最後が曖昧なのかだって?
しょうがないだろ記憶喪失なんだから。
さて、まず現状を確認しよう。
先ほど言った通り俺は何の前触れも無しに死んだ。死んだあとは風船みたいに空中でずっと漂って、このまま消えるのかなーと言ったようなぼーっとした呑気ボーイになっていた。
そんな状態の俺に突然どこからか声が届いたんだ。
『君の死は想定外だった。謝罪と賠償をしたい』
それを聞いた時は「上位存在っているんだな」って感想しか出なかったよ。
考えてみてくれ、明らかに幽霊になった自分に語り掛けて、さらに無力になっている俺に何かしようとしている存在が普通な訳ないだろ?
その上位存在によって俺は元居た世界と全く違うファンタジックな世界へと転生を果たしたわけだ。
上位存在の記憶はほとんど残っていない。うっすらと残っている記憶では上位存在も自分のことは殆ど記憶できないだろうということと赤子からスタートするということ。
そして俺にパワードスーツ、そして人型ロボゲームのような戦闘兵器、その他諸々も貰ったり技術力もいただいたりして転生した。
『おはようございます、ケイジ様。223年254日9時間の睡眠時間でした、よく眠れましたか?』
明らかに睡眠カプセルの中から青年の姿で俺は目覚めたのだ。
先ほどの言葉を覚えているだろうか?転生したら赤子スタートだと。
明らかに文明が発達した場所での目覚め。しかしクローンの様に急成長させる機器は無く人工的に育成されたわけではない。
何も覚えていないが知識だけは残っている。
この場所がどこかは全く分からなくてもどのようなものが置いてあるのか完全に理解できてしまっている。
『心拍数が上昇しています。発汗も見られます。今すぐ医療キットを準備します』
「し、しなくていい。ここはどこだ?」
聞き慣れない女性タイプの合成音に気遣われてしまうが深呼吸をして何とか気を落ち着かせる。
ケイジ、というのも今の俺の名前だろう。全く覚えていないが両親が名付けてくれたのか、それとも勝手に名乗っていたのかすら分からない。
『心拍数が少し落ち着きました。ケイジ様、この場所を覚えていますか?』
無機質な合成音が設置されていたスピーカーから出される。
ここはどこかと言われても何も思い出せない。もしかしたら既に何らかの選択肢を与えられて間違ったら即死パターンとかないよな?
『無回答を提出。記憶の混乱が見られると判断』
嘘だろ、黙ってるのも回答のうちに入るのかよ。
『安心してください。ケイジ様は最初から記憶が欠ける可能性を予測していました』
「それ本当に俺か?」
『DNA解析の結果、最初から現在に至るまで治療用睡眠カプセルで眠っていたのはケイジ様です』
「全く覚えていないな…………」
『安心してください。私も、この場所も全てケイジ様が作り出したものです。危害を加えることはありません』
合成音が部屋全体に響く。この合成音も信じるならば俺が作り出したAIということになるはずだ。
本当に作ったのか?実はだましているなんてことないのかという疑問が浮かぶ。
黙ったまま近くにあったコントロールパネルらしきものを触る。全く知らない物のはずなのにスルスルと手が動いてどのようなことが起こったのか内部のデータを見て何が起きたのか把握していく。
多くのデータが破損していたが、俺が何らかの相手によって重傷を負い、そしてここに眠っていたということは分かった。
その相手も俺が重傷を負うのと同時にほぼ相打ちといった形で撃退していたためこの数百年間は平和になったのかもしれない。
データ破損も経年劣化によるもので、この『街』からドローンを幾らか飛ばして資源回収及び劣化した部分を修復を試みているが全盛期の様に十分な資源が集まっていないようだ。
定期的に宇宙へ衛星を飛ばして地上で回収できない物も集めているが、それでも全盛期には至らない。
『破損データのバックアップは存在しますが、記憶が欠損する前のケイジ様に公開を禁止されています』
「それは、どういう意図で?」
『「自由になった日に冒険を楽しんで来い」だそうです』
…………なるほど。ロマンが分かっている。
昔の俺がどうだったかは知らないが記憶を失った今の状況はほとんど全てが未知に見える。
俺の知らない世界、そしてかつての俺すら知らない時代がこの世界には広がっている。
ならば行かない理由は無い。ここから外に出ようとしてコントロールパネルから離れた俺は、今更ながら全裸になっていたということに気づいた。
睡眠カプセル、行ってしまえばコールドスリープする装置に眠っていたのだから衣服を着ていないのは当たり前だ。
『ケイジ様、ここに軽戦闘用スーツを用意しています。こちらは私が欠かさずメンテナンスをしていたのでいつでも使用可能です』
床の一部が開き、そこからどこぞの漫画の様にショーケースが出現する。
そこにあるのはスーツ、ただの布製のスーツではなくフィクションにしかない高度な技術を用いたパワードスーツを付けられたマネキンだった。
ごつごつとしたもののイメージはあったが思っているよりも細身で着ぶくれはあまりしないようなものだ。
ショーケースが開いて腕、足、胴とマネキンから抜き取りやすいようにショーケースの四隅に設置されていた機械のアームによって分解されて俺に差し出された。
足、胴、腕の順番でアームに差し出されたスーツを一つずつ装着して使用感を確かめる。
まず徒手空拳、軽く体を動かす程度にジャブ、ストレート、そして蹴りを連続して放つと一発ごとに音を超えた衝撃が放たれる。
マジかよ、とこぼしそうになるがこれも想定内のAIに見られていると思いなおして口を紡ぐ。
『偵察用のゴーグルも用意してあります。ですが、旅の準備として食糧のみ用意できていません』
「食料だけか。それじゃあ替えの下着も用意してあるのか?」
『腐食に強い繊維を使用した衣類を用意しています』
「その努力を食料に回してほしかったな」
『いつ目覚めるか分からないケイジ様に腐らせたものを提供するのは問題があるので』
小さなドローンが布で出来たような鞄と近未来でありがちな横一線のゴーグルを運んできた。今、天井が空いてドローンが飛んできたよな?
そんな疑問と共に銃器、片手で撃てるような小型のショットガンとリボルバー拳銃、そして遠距離でも対応できるライフル銃が、壁が開いて目の前で採ってくださいと言わんばかりに置いてある。
この部屋全体どころかこの場所自体が何でも飛び出すびっくり箱になっているのかもしれない。
ゴーグルをつけて鞄を背負い銃器を装備して準備は万端、いつでも外に出られるようになった。
『外部の安全を確認。いつでも出発できます』
「そうかここに人は来るのか?」
『この地には度々生き残った人類が来ます。その時に口にするのが「
「廃れた都、か。ある意味間違ってはいないかもな」
この部屋だけでもかなりの文明を持っていた。それが今じゃ先ほどまで睡眠カプセルで眠っていた俺一人と管理AIだけなら廃れるのも無理はない。
人類も生存しているなら大気中に含まれる成分も自分が知るものとあまり変わらないだろう。多少の危険は織り込み済み、サポートはAIがしてくれる。
「それじゃあナビゲート頼むぞ。ここから離れてもそれくらいは出来るよな?」
『不可能ではありません。ケイジ様に近くで活動可能な街へナビゲートします』
「よろしく頼むよ」
こうして、俺は外へつながる階段を登る。
登り…………のぼり…………のぼ…………っ!
せめてエレベーターは付けておいてくれ過去の俺っ!
スーツのおかげで疲労は少ないが、それなりの時間を要して地上へ出ることは出来た。
そこで目にしたのはかつてここに『街』があった痕跡。石造りの建物ばかりでコンクリートのものはほとんど残っていない。
おそらくここの『土台』から建てられていた金属製の建物の残骸もあったが、中は軒並み盗られていた。
外壁もほとんど残っていないため珍しい金属目当てで盗掘、といっていいのか分からないが盗られていったのだろう。
AIのナビゲートの元、『廃都』を抜け俺は人が住む街へ向かった。
予期していなかった。この世界の人間がどのように進化しているのかを。
「ち、小さい…………可愛い、だと?」
「へ、へへ坊主。私の妾にならないか?」
『盗賊です。対処しましょう』
ケモ耳ケモ尻尾がコスプレでなく本当に生えている女性が、マズル付きの完全に獣タイプの獣人が記憶喪失から最初に出会う人間と思っていなかった。
そして、『純粋な人間』が既に地上から消えていたことを後に知ることとなる。
そして、雄も雌もタッパとケツと乳がデカかった。
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