第二話 反撃開始
第二話 反撃開始
〜次の日〜
コンコンコンと部屋のドアが叩かれた。
俺は龍宮さんかと思いドアを開けると、見知らぬがたいのいい男が俺の目の前にいた。
「え?」
と思わず言ってしまった。すると
「俺の名前は
と、早々に自己紹介をされた。
「あのー。龍宮さんはどこに?」
「あいつは昨日の夜に急用ができたから、しばらく戻れないとだけ言ってどこかへ行った。」
「はぁ、とりあえずわかりました。」
「あと、天がお金は払ったからホテルのチェックアウトしといてと言っていた。」
それから俺は、軽く自己紹介をしたあとホテルのチェックアウトを済ませ岩本さんに何を鍛えればいいか聞いた。
「天が、全身隈なくトレーニングして俺に体術を教えて貰えと言っていたな。」
と岩本さんはダルそうな声でそう言った。
そして俺は今、汗を大量にかきながらホテルの周りを30分くらい走り続けている。
毎日1時間走り、腕立て伏せや腹筋など100回を3セットやるのが岩本さんの考えたトレーニングメニューだ。
ちなみに、俺の隣では彼が疲れた様子を一切見せずに走っている。彼の能力をまだ聞いていないので、それが能力のお陰なのか、それとも1から鍛え上げた努力の賜物なのかわからない。後で聞いてみようと俺は脚を一定のリズムで動かしながら考えるのであった。
あれから俺は、なんとか1時間走りきり少し休憩を取っていた。隣には岩本さんが座りながら水分補給している。
「岩本さんの能力ってなんなんですか?」
俺が先程疑問に思ったことを聞いた。すると岩本さんは
「再生を助ける能力…だから、再生可能な怪我を普通の人間より早く治すことができる。」
と答えた。
「じゃあ、身体強化系の能力とか体力がすぐに回復するとかではないんですね。」
「まぁ、でもこの能力があったから俺は普通の人より早く筋肉をつけることができた。」
と岩本さんが俺の言葉に対して頷き、少し補足をした。
筋トレとは筋繊維を壊して再生させることでより良い筋肉となるもの。だから岩本さんの能力は鍛えるのにうってつけということだ。
でも、いくら能力があると言ってもここまでの筋肉と体力を付けるのには凄く努力したのだろう。そんなことを考えていると、
「もうそろそろ休憩はおしまいだ。次は俺と戦って体術の基礎を身に付けてもらう。」
と休憩の終了と次の特訓内容を知らせられた。
まだ少し疲れた足を動かし岩本さんについていくと、以前龍宮さんに連れてこられた広い草原に着いた。
以前は夕方に来ていたので、あまり感じなかったが緑が凄く綺麗で可愛らしい花がそこら中に咲いていた。
「ここに来たことで察しただろうが、ここで俺とお前が戦う。それでお前に足りてない技能を確かめる。俺の能力で怪我はすぐに治るから、お前は全力でかかってこい。能力を使ってもいいからな。」
彼はそう言ってずっしりと構えた。恐らく岩本さんも俺は身体強化系の能力者だと伝えられているのだろう。
「いつでもかかってこい。」
彼のその言葉を聞いて俺は全力で地を蹴り、彼の元へ走った。彼の体は大きいため攻撃を当てやすい。そう考え力いっぱい蹴りを放った。
だが、彼は体を少し反らして最小限の動きで俺の蹴りを避けた。
「そんな動きで俺に攻撃できると思っているのか?だとしたら舐めすぎだ。」
彼は反らした体を戻すと同時に俺目掛けて拳を放つ。だが昨日の修行で避け方は身に付けたので、難なくその拳を躱した。
「あっぶね!」
と少し笑みを浮かべて言うと、あちらも
「なかなかやるな。」
と楽しそうな顔で言った。何気に初めて見る彼の笑顔に俺は少し嬉しさを感じた。
そして俺は彼と距離を一旦取り、次の手を考える。
(蹴りは一度使ったから次はパンチか?いや、それはあちらも予想しているだろう。なら俺は次になにをすれば…)
俺が考えていると、
「戦場では、敵のことを常に視野に入れとけよ。」
と言いながら彼が一気に距離を詰め俺に拳を放った。
突然のことで、俺は反応が遅れ攻撃を喰らった。彼の攻撃はとても重く常人が喰らったらしばらく動けないだろう。俺はいじめられっ子なので痛みには慣れている。だから辛うじて動くことができる。今この瞬間だけ、俺はいじめに対して感謝した。
「まだ、立てるのか。なかなか、やるじゃないか。」
「えぇ、なんとかギリギリですけど。」
などと軽口を叩きつつ地を蹴る。先程攻撃を喰らったため全力で走れない。
「動きが鈍いぞ。」
そんな彼の言葉を無視をして俺は拳を放つ。…が俺の拳が届く前に俺は腹部に重い蹴りをもらった。さすがに2発目までは体が耐えきれず俺は地面に顔をついて
「大丈夫か?とりあえずお前の実力はだいたい理解した。怪我は俺の能力で治しておくから、ゆっくり休め。」
と言う彼の言葉を聞き、ゆっくり目を閉じるのであった。
俺が意識を失ってからどのくらい経っただろうか?俺は意識を覚醒させた。ここはどこだろう?ホテルでも病院でもなさそうだ。
「いってぇ」
と言いながら俺は体を起こす。だが岩本さんの能力は戦闘系ではない。龍宮さんのような戦闘系の能力者の攻撃を喰らったらどうなるのか、想像するだけで恐ろしい。
コンコンコンと突然ドアが叩かれた。あまりに急だったのでドキッとしたが俺は、岩本さんかな?と思いドアを開ける。すると
「体の調子は大丈夫?」
と俺の予想していない人物が立っていた。
「水野さん?!?!どうしてここに?」
と俺が驚きながら聞くと
「健君に『実力を確かめるために戦ったらやりすぎてしまった。』って言われて、とりあえず様子を見に来たんだよ。でも大した怪我じゃなくて良かったよ。健君は能力を使った天よりも力が強いから、下手したら内臓が破裂とか…考えるだけで恐ろしいよ。」
と言われた。
「あれ?水野さんと岩本さんって知り合いだったんですね。」
「うん、まぁ……知り合いと言うかなんというか……」
水野さんは少し顔を赤くして
「付き合ってるんだよね」
と言った。
おいおいマジかよ…確かに水野さんは綺麗だし、岩本さんも男らしいから付き合っていても違和感はないけど…
なんか、俺の周りにリア充多くね?まだ二組だけどさ…
いや、別にリア充爆発しろとかは思ってないし俺に彼女ができないワケではない。作らないだけなのだ!
「どうしたの?黙っちゃって。」
「あ、いや、なんでもないです。」
突然のカミングアウトで少し黙ってしまった。
「てか、能力を使った龍宮さんよりも力が強いってどうゆうことですか?」
「うーん…まぁ、強いと言っても単純な力だけで力の使い方は天の方が上手いんだけどね。」
「力だけでも上回れるのは凄すぎますって。」
そんな感じで水野さんと会話してから、少しして岩本さんが来た。
すると彼は少し驚いたような顔で
「あれ?何で由美がここに?」
と尋ねた。
「健君がやりすぎたって言うから心配で見に来たの!」
と水野さんは、まるで怒った子供の様に頬を膨らませながら岩本さんに言った。
俺はその姿を見て横から見て、かわいいなーと思った。おそらく岩本さんもそう思っただろう。
それから二人は何分か話、水野さんは用事があると言って俺達のもとを去った。
「そういえば、ここどこですか?」
それから俺は起きて最初に抱いた疑問を口にする。
「俺の家だ。少し汚いから、あまり見ないでくれ。」
岩本さんはそう言うが、実際は凄くきれいな部屋だった。
「あと、俺どのくらい寝てました?」
「う〜ん。今が14時だから、4時間くらいか?」
ウッソだろ。そんなに寝てたんか…
「ちなみに、大きな怪我はないが一応大人しくしとけよ」
「はーい。」
俺は大きな怪我をしていない事実を知り、ほっとした。
それからは、特に何もなく俺は寝た。
ちなみに夜ご飯は「筋肉を付けやすくするために」と、タンパク質多めのご飯になった。
〜次の日〜
今日は月曜日。学校があるので、俺は教科書などを取りに一旦家に戻っていた。
「あら、お帰りなさい。」
とおばさんがお出迎えをしてくれた。
「ただいま。まぁ、すぐに学校に行くんだけどね。」
と俺は笑いながら言う。
俺は自室から必要な物を取り、
「行ってきます。」
と言い学校に行くのであった。
俺が教室に着くと、いじめっ子達が『待ってました』という顔で俺のことを見る。そして、リーダーが
「よ、神崎!後で話があるから放課後、俺について来い。」
と笑顔で言われた。だが、その笑顔が作り物だと知っている俺は少し不快感を覚えた。
それから俺は、いつもどおり授業を受けた。
ちなみに授業中には、いたずらされたりはしない。多分、先生に見つかると面倒くさいことになるからだろう。余計に、たちが悪い。
「じゃあ、この問題を神崎。解いてみろ」
今は数学の時間だ。去年までの中学の数学は得意だったが、高校の数学はどうにも苦手だ。
「えーと、答えは26ですかね?」
俺がテキトーに答えると、周りの生徒はくすくすと笑い先生はため息をついた。
「お前、ちゃんと授業聞いてるか?」
先生に聞かれて「あはは」と笑うが、俺は放課後のことで頭がいっぱいで授業どころではないのだ。一応、特訓のお陰で能力での遠距離攻撃は避けれるようにはなったが、まだ肉弾戦は苦手だ。なので、下手に抵抗して状況がさらに悪くならないように今は大人しくしとかなければならない。
そんな感じで、少し恥をかいたが無事に全ての授業が終わり俺はにこにこ笑っているいじめっ子のリーダーについていく。
俺が、いつもいじめられている体育館裏に来て周りを見渡す。すると、俺は「待ってました。」と言わんばかりに複数のいじめっ子に見つめられた。
「それで、金は?」
先程まで浮かべていた笑顔は消え失せたリーダーがそういった。
「持ってきてない。」
俺が答えると
「ざっけんじゃねぇ!」
俺はそんな怒鳴り声と同時に殴られる。だが、俺はそれを避けた。避けるつもりはなかった。なぜなら余計に相手を苛つかせることになるからだ。だが、反射的に避けてしまった。
「あ?なに避けてんだよ!」
案の定、リーダーは凄く苛ついていた。
「クソ野郎が!」
彼がそう呟いた瞬間、彼の体の周りにに赤色のオーラが現れた。確か、彼の能力は少し特殊で赤色のオーラの時は上半身、青色のオーラの時は下半身の力を強化することができるらしい。
今の彼は赤色のオーラをまとっているので上半身の強化だ。なので、俺は彼のパンチを警戒して戦闘態勢に入る。
俺が彼の攻撃に神経を集中させていると彼はニヤッとわらった。直後、後ろから俺に向かって氷の塊が飛んできた。だが、それは水野さんの放つ水よりも遥かに遅い。なので俺はそれを難なく躱す。すると俺の避けた氷の塊が、俺の正面にいた彼に当たった。完全に俺に当たると思っていた物が自分にぶつかった彼は少し苦痛の表情を浮かべた。俺はそれを見逃さない。瞬時、俺の体は彼の懐へ潜り込み彼の腹に重い一撃を喰らわす。流石に強化していた体も今の攻撃には耐えられず、彼は倒れた。
「う、嘘だろ。お前、なにをした?」
倒れたリーダーの姿を見たいじめっ子の一人が言った。
それから俺の周りにいたいじめっ子は俺を囲う様に立ち、一斉に遠距離攻撃をする。俺は全ての弾道を読み切り、それらの攻撃を躱した。どうやらいじめっ子の中に身体強化系の能力者はリーダーの男だけだったらしい。俺は、いじめっ子達に近づき一人ずつ倒していく。
「何なんだよ。お前の強さは…」
少し意識が残っていたらしいリーダーがそう呟いて、そのまますぐに気を失った。
それから俺は学校を出て、岩本さんの元へ行き学校での出来事を話した。すると彼は俺がいじめっ子を倒したことを聞き、「良くやった。」と言い俺の頭を撫でた。
次回へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます