メガネをかけ、担任を見る
「ふぅ。」
トイレで吐いてスッキリした後、自分の教室に戻った。
「なんか忘れているような?」
・・・・うーん?何だっけ?
すると、教室のドアが開かれた。
「おい、健二はいるか?」
そこには担任の海部宇水がいた。
この人は生物の先生で、好きな動物はタコと蝙蝠らしい。何でその二つなんだろうね?ガサツっぽいが意外と几帳面。クラスでは男子に人気がある。
急いで教室のドアの前まで行った。
「どうしたんですか?」
「お前、今日日直だったろ。」
言われてハッとした。
「あ〜!すみません。忘れてました。」
「はぁ。お前のことだから、そんな事だと思ったぞ。職員室にあるから取りに行くぞ。」
「分かりました。」
というか、もうSHR始まる時間なんだけど。
「SHR始まりますよ?終わったら、行けばいいんじゃないですか?」
「ん?あぁ、お前の進路の相談も兼ねているからな。今の方が良いんだ。」
成程。
すると宇水先生は教室に響き渡る声で言った。
「今日は特に連絡はない。早く掃除に行って次の準備しろ。」
クラス中が騒ぎ始めた。
「うるさい、静かにしろ。」
すると教室がシーンと静まった。
「早く行くぞ。」
「あっ、はい。」
そして、教室のドアを閉めて、チラッと教室を見たら、瑠衣が宇水先生を睨んでいた。
「あのクソ邪神が。貴様を先に殺してやろうか。」
職員室に着き、中に入った。人は誰もいなかった。
辺りはコーヒーの匂いが充満していた。
「やっぱり、ここはコーヒーの匂いが強いですね。」
「あ?・・・あぁ、先生はブラックだからな。飲まないとやってられないんだよ。」
なんか宇水先生が言うと、説得力があるな。
そして、先生の机がある場所まで行き、宇水先生は椅子に座った。
「お前も座れ。」
そう言い、別の先生の椅子を出した。
「いやそれ、諏訪先生の椅子でしょ。流石に座っちゃいけないんじゃないですか?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。どうせバレないしな。」
それで良いのか先生。
立っていても仕方ないし、出された椅子に座った。
「それじゃ、進路面談を始める。」
「はい。」
堅苦しい・・・・
「お前は確か就職希望だったな。」
「はい、そうですね。大学に行っても特にやりたい事はないですからね。」
行けないんじゃないからな。これでも俺、この学年で成績20位だからな。
「就職先は決まったのか?」
「まだ、決まってないですね。」
「そのまま決まってない状態で社会に出てすぐに辞めたとなれば、この学校の信頼が落ちる。いっそ大学まで行って、やりたいことを決めたらどうだ?」
うーん。確かに、その線もありだな。というか、ストレートに言ってくるな。まぁ、事実だししょうがないか。
「まだ2年の中間ぐらいだから、猶予はあるが早めに決めろよ。」
「あっはい。分かりました。」
「それじゃあ、これが日誌だ。」
そう言われ、日誌を渡された。
そうだ!一応、メガネかけてみるか。まぁ流石にね、大丈夫だと思うし、何かあったら怖いから、その確認もしないとね。
「そういえば先生、イメチェン用にメガネ買ったんですよ。」
「ほう。どんなのだ。」
「これです。」
そして、ポッケからメガネを取り出した。
「中々良い色合いじゃないか。」
「ありがとうございます。」
とりあえず、かけてみるかという軽い気持ちで宇水先生のことを見てみた。
すると、
そこには、タコの頭と蝙蝠の羽を持ち、身体が緑色の鱗に覆われている巨大な化け物がいた。
名前は・・・・クトゥルフ
え?怖。というか、デッカ!
というか、何で毎回こっち見てんの?
そう考えていたら、宇水先生の声が聞こえた。
「おい、ぼうっとしてるが大丈夫か?」
「あぁはい。大丈夫です。」
「はぁ、まぁ良い。それじゃあ、教室に戻れ。」
「わかりました。」
日誌を受け取り、立ちあがろうとした時、よろけてしまった。
「うぁ。」
衝撃に身構えていたら、いつまで経っても、衝撃は来なかった。
目を開けてみたら、宇水先生に抱えられていた。
「全く、危ないじゃないか。」
そう言われて
「すいません。」
苦笑いで答えた。
「まぁ、こちらも役得だったし良いか。」
ん?何て言ったんだ?というか、宇水先生の眼が野獣の眼になっているような。
「とりあえずお前は早く戻れ。」
「はい、分かりました。」
抱えられていた状態から立ち上がって、そのまま職員室を出た。
1人残った海部宇水は私用のパソコンを取り出して、隠し撮った写真を見ていた。
「やっぱりアイツの驚いた顔は可愛いな。」
そう言いながら、さっき倒れて、宇水に抱えられていた健二の写真を見ていた。
「そうだ、彼を私のモノにしよう。手始めにルルイエに幽閉するか。」
そうすれば、ニャルラトホテプも迂闊には手は出せまい。
あぁ、いつ彼が私のモノになるのか楽しみだなぁ。
旧支配者の大司祭は笑みを浮かべた。健二を手に入れた時のことを思いながら。
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