一部の人間

Grisly

一部の人間

K氏は、不満を募らせていた。

結局、世の中得するのは一部の人間。


学校で、楽しく輝けるのは、

足の速い等、特殊な一部の人間。


会社でも、得をしているのは、

社長などの一部の人間。


人生輝いているのは、

ハリウッドスターや、歌手、画家等、

スーパースターと呼ばれる、

ごくごく特殊で、稀な一部の人間。


大多数の平凡な人間は、得することも、

充実することもなく一生を終えるのだ。






S星人は、地球進出を考えていた。

侵略する前に、

1人、人間をランダムに選び、

宣戦布告するのが彼らのルール。


運命の悪戯というべきか、なぜかK氏が

その1人に選ばれた。


S星人、K氏の前に現れて言う。


「いいか、これから1ヶ月後、

 地球に総攻撃を仕掛ける事になった。

 

 君から政府に伝えて、

 阻止するなり、なんなり、

 対策を練りなさい。


 政府が望むなら、

 話し合いの場を持ったっていい。」


K氏驚き、こう答える。

「そんな突拍子もないこと、

 言われても困る。

 自分達で言ってくれよ。」


S星人、困った顔で、


「そう言う規則だから、

 これ以上のことはできないのだ。


 伝えるべきことは伝えたぞ。」


そう言って去って行った。






地球の運命を託されたK氏。

しかし、ここでまた不満が募った。

俺がそんなこと政府に言ったところで、

誰が信じるだろう。

変な人だと思われるだけだ。

最悪牢屋へぶち込まれるかもしれない。


たとえ、

信じてもらえたとして、どうだろう。

また、一部の人間の中で話が進んで、

一部の人間が、得をするだけで、

俺には、関係ないことだ。


黒船来航の時だってそうだったはずだ。

一体、何人がペリーの顔や、

黒船を見たと言うのだ。


侍は、攘夷だ、開国だと

騒いでいたとしても、

大多数の、商人や農民は、

自分の生活だけで、

手一杯だったはずだ。


結局一部の人間だけで、

話が進んでいるのだ。


本当にそんな危ない事態なら、

俺でなく、

その道のプロが解決するだろう。

一部の特殊な人間が。

俺には関係のないことだ。


K氏は何もすることなく、

3日程経つと、

この出来事自体、忘れてしまった。






1ヶ月後、

S星の大艦隊が襲来し、

地球全体は焦土と化してしまった。


全ての生物は、白骨死体と化し、

K氏も例に漏れず、無惨な姿に。


今回ばかりは、

K氏も、一部の人の、一部だったのだ。



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