【完結】貴方達が長年に渡り迫害していたのは魔女ではなくて『青薔薇の乙女』でした――後悔?今更ですわよと最愛の吸血姫が言っています――

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序章 青薔薇は魔を招く

 「どうして女を産んだ!」

私が物心ついた時にはお母さんは父にそうなじられていた。

代々、優秀な騎士を輩出する家柄だったのに、私は女に生まれてしまっていた。

私を産んだ後に体を壊していたために、父に用済みとされたお母さんは私が3つの時に家を追い出されることになった。

お母さんは私を連れて出て行こうとしてくれたのに、父はどうしてか私を手放さなかった。

「男を産めなかった慰謝料だと思え」

お母さんは一生懸命に抵抗してくれた。

「止めてください、ジャックは私が育てます。貴方にはもう何も関わらせませんから」

「黙れ!出来損ないの分際で俺に逆らうな」

お母さん、お母さん、と私は何度も悲鳴を上げた。お母さんは何度も殴られて鼻血を出しても、私のために父に取りすがった。

「お願い、その子は私の――!」

お母さんがついに吹き飛ばされた。容赦なく殴られたはずみに。悲鳴も出せずに壁に頭を打ち付けてうつ伏せに倒れた。

床に血だまりが広がっていくのを、私は震えながら見つめていた。

「あら、よろしかったのですか?」

騒ぎを聞きつけたのだろう、父の正妻のサレッサが召使い達を従えてやって来た。

目の前の惨状に美貌をしかめる。

「ああ、構わん。この出来損ないに親も親戚もいない。街角で凍えていた所を、俺が情けをかけて拾ってやったのに……恩を仇で返すように女を産んだのだ」

何でも無いように父は言って、サレッサの抱えている子供を抱き上げる。

「ああ、お前は俺の自慢の息子だ!あんな出来損ない共とは違う、何て愛おしいのだろう」


 私は倒れているお母さんに震える足を叱咤して近寄った。呼びかけてもお母さんは何も返事してくれない。私がこうやって泣いている時は必ず私を抱きしめて、『大好きな私のジャック、貴方は何も悪くないわ』と慰めてくれたのに。

血が止まらない。お母さんの体がどんどんと冷たくなっていく。

でもどうしたら良いのかさえ分からなくて。

「おかあさん、おかあさん!」

「……ジャック」お母さんの小さな細い声がした。「幸せの……青い、薔薇……」

言い終わる前にお母さんの体が震えた。そして……お母さんの全身から力が抜けた。

「『幸せの青い薔薇』……ですって?」

サレッサが嘲笑うように言う。

「嫌だわ、青い薔薇なんて。あれは魔を呼び寄せる不幸の象徴でしょう。可哀想に……頭を打って、死ぬ前に錯乱したのね」

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