【完結】貴方達が長年に渡り迫害していたのは魔女ではなくて『青薔薇の乙女』でした――後悔?今更ですわよと最愛の吸血姫が言っています――
2626
序章 青薔薇は魔を招く
「どうして女を産んだ!」
私が物心ついた時にはお母さんは父にそうなじられていた。
代々、優秀な騎士を輩出する家柄だったのに、私は女に生まれてしまっていた。
私を産んだ後に体を壊していたために、父に用済みとされたお母さんは私が3つの時に家を追い出されることになった。
お母さんは私を連れて出て行こうとしてくれたのに、父はどうしてか私を手放さなかった。
「男を産めなかった慰謝料だと思え」
お母さんは一生懸命に抵抗してくれた。
「止めてください、ジャックは私が育てます。貴方にはもう何も関わらせませんから」
「黙れ!出来損ないの分際で俺に逆らうな」
お母さん、お母さん、と私は何度も悲鳴を上げた。お母さんは何度も殴られて鼻血を出しても、私のために父に取りすがった。
「お願い、その子は私の――!」
お母さんがついに吹き飛ばされた。容赦なく殴られたはずみに。悲鳴も出せずに壁に頭を打ち付けてうつ伏せに倒れた。
床に血だまりが広がっていくのを、私は震えながら見つめていた。
「あら、よろしかったのですか?」
騒ぎを聞きつけたのだろう、父の正妻のサレッサが召使い達を従えてやって来た。
目の前の惨状に美貌をしかめる。
「ああ、構わん。この出来損ないに親も親戚もいない。街角で凍えていた所を、俺が情けをかけて拾ってやったのに……恩を仇で返すように女を産んだのだ」
何でも無いように父は言って、サレッサの抱えている子供を抱き上げる。
「ああ、お前は俺の自慢の息子だ!あんな出来損ない共とは違う、何て愛おしいのだろう」
私は倒れているお母さんに震える足を叱咤して近寄った。呼びかけてもお母さんは何も返事してくれない。私がこうやって泣いている時は必ず私を抱きしめて、『大好きな私のジャック、貴方は何も悪くないわ』と慰めてくれたのに。
血が止まらない。お母さんの体がどんどんと冷たくなっていく。
でもどうしたら良いのかさえ分からなくて。
「おかあさん、おかあさん!」
「……ジャック」お母さんの小さな細い声がした。「幸せの……青い、薔薇……」
言い終わる前にお母さんの体が震えた。そして……お母さんの全身から力が抜けた。
「『幸せの青い薔薇』……ですって?」
サレッサが嘲笑うように言う。
「嫌だわ、青い薔薇なんて。あれは魔を呼び寄せる不幸の象徴でしょう。可哀想に……頭を打って、死ぬ前に錯乱したのね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます