カツアゲ
ある夕方のこと。僕はコンビニに用事があった。ATMから現金をおろさないと、明日以降、生活費が足りなくなりそうだからだ。
コンビニの前には不良がヤンキー座りをして、たむろしていた。僕は絡まれないように迂回してコンビニ入る。コンビニに入ると、まずはトイレを借りた。寄り道をし過ぎたためだ。トイレから出ると、真っ直ぐにATMへ向かう。とっととおろして、家に帰ろう。家でやることがまだまだある。ATMで暗証番号を入れていると、ガラス越しにヤンキーがこちらを見ている。あまりいい気はしない。
財布が現金で厚みを増した。これでしばらくは大丈夫だろう。コンビニを出ると相変わらず、不良がいた。不良をちらっと見た時だった。偶然視線があった。因縁をつけられては、かなわない。僕はさっさとコンビニを去ろうとする。すると先ほどの不良が再び僕を見た。もしかして、現金をおろしていたのを見られていた?
夕方なのでまだ人通りはある。何かあっても大丈夫だ、そう自分に言い聞かせる。大通りに向かって歩きだそうとした時だった。例の不良がこっちに向かってくる! 嫌な予感がする。
「兄ちゃん、こっち来いよ」
不良は細い路地を指す。
まずい。これはまずい。落ち着け。大通りに居座り続ければ、問題はない。
「いいから来いよ」
なおも不良は強い口調で言う。周りの人がこちらを見る。これで一安心だ。
「いいから来やがれ」
そういうと、不良は僕の胸倉をつかむ。周りにSOSを求めようとしても、巻き込まれたくないのか、足早に通り過ぎる。
ついに僕は不良に路地裏へ連れ込まれた。こういう時は、さっさとお金を渡した方が良いのだろうか? 痛い目にあうのは勘弁だ。不良がこちらに詰め寄る。僕は覚悟を決めて財布に手を伸ばす。次の瞬間だった。
「兄ちゃん、ズボンのチャック開いてるぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。