ゴブリンプリンス~畜生以下のクソ親父と美貌の王女の間に生まれてしまった俺は最強の力を得て可愛くてお馬鹿なマスコットと太くて短い最高の鬼生を歩む

負け犬の心得(眠い犬)

第1話 最悪のプロローグ

 ミルドリア王国という国がある。

 魔物が存在する剣と魔法の世界にあって、ミルドリアは魔法によって嘗て栄華を極めた大国であった。

 そのミルドニアの歴史上で最も強い魔法の力を誇ったと言われるのが大賢者ノルンベルト・ミルドリア。

 ミルドニアの王族はノルンベルトの子孫達である。


 ノルンベルトの子や孫は大賢者から受け継いだ魔法の才でもって領土を広げたが、それも今や嘗ての話。

 現在のミルドニアは圧倒的な力を持った国ではなく、周辺国と戦力が拮抗する平凡な国へと成り下がっていた。


 その要因の一つが一千年程前から各地に現れたダンジョンの存在。

 ダンジョンは生まれてから長く放置するとスタンピードと呼ばれる魔物の大発生を引き起こす。

 その存在の認知と原因の解明が行われるまで、領土を広げていたミルドニアではスタンピードの対応に苦慮し、大幅に戦力を削られたのだった。


 現在のミルドニアは嘗てのように領土の拡大を目論んではいない。

 過去と比べて魔法の力が衰え、野心よりも国防と国民の安寧を重視するミルドニアの王族は翼を捥がれたドラゴンなどと揶揄される存在となり、周辺国との不戦条約を結ぶのにも苦慮するような状態だった。


 そんなミルドニア王家に一人の天才が生まれた。

 第三王女セルナイリカ・ミルドニアは大賢者ノルンベルトにも劣らないと言われる膨大な魔力を持っていた。

 国の安寧を願う国民はセルナイリカに大いに期待をし、王族貴族もセルナイリカを次期女王に推す貴族達の勢いを増す。


 しかし、セルナイリカが女王となる未来は訪れなかった。

 大賢者ノルンベルトと並ぶ程に強大な魔力を持つセルナイリカは、魔法が全く使えない特殊な体質の持ち主だったのだ。


 魔法が使えない人間は、少なからず存在する。

 それは体内に内包する魔力が空なのではなく、魔力を具現化する事が体質的に出来ないのだ。

 これによって期待を一心に集めていたセルナイリカは国民に失望され、落ちこぼれ王女などと民から嘲笑される的になった。


 それから十年の時が経ち、セルナイリカは神出鬼没のセルナ姫と呼ばれて国民から大いに愛されていた。

 どんな辺境や田舎であっても視察に向かい、平民に対しても分け隔てなく接するセルナイリカは、女神と称される見た目も相まって強烈な人気を集める。

 嘗ては民を失望させた王女は、素晴らしい人間力で国民を魅了していったのであった。


 そんなセルナイリカに不幸が訪れたのはログンダ辺境伯の領地での視察を終えた帰途であった。

 ログンダ辺境伯の領地は魔の森と呼ばれる、魔物が多く生息する森に面している危険な地域だ。

 とは言え騎士団や冒険者によって、森の浅い場所では常時魔物の間引きが行われており、それより深い場所にいる魔物は餌となる魔物が違うのか、人里まで下りて来る事はほぼ無い。

 あったとしても数十年に一度の出来事なので、相当に運が悪く無ければ起こり得ない確立の話だ。


 そんな中で、セルナイリカを乗せた馬車は魔の森に近い街道でゴブリンの群れに襲われた。

 当然だが、第三王女であるセルナイリカには騎士や魔導士の護衛が付いている。

 この日は危険な辺境伯領への視察とあって、普段よりも多い騎士二十名、魔導士五名の護衛が付いていた。

 ゴブリンはスライムよりかは強いが、魔物の中では最弱に近い位置にいる魔物である。

 そんな弱い魔物が群れになって掛かってこようと、護衛が簡単に退けて何の問題も無く帰途に就ける...筈であった。


 馬車の周囲を取り囲んだゴブリンの群れ。

 数は多いが騎士達の剣技と槍技、魔導士の使う魔法によって数十のゴブリンが僅か数十秒で地に伏した。

 しかし次から次へと湧いて来るように森の中からゴブリンが現れ、護衛の騎士と魔導士は徐々に疲弊していった。


 一時間も戦闘が続いた頃、ゴブリンの中に上位種が混ざり始めた。

 ゴブリンソルジャーにゴブリンメイジ、ゴブリンアーチャーなどの武器や魔法を扱うゴブリン。

 更にはゴブリンよりも大柄で力にも耐久にも優れたホブゴブリン。


 当初は簡単に退けられるゴブリンの群れであったので、戦えないセルナイリカを逃がす選択肢は無かった。

 そもそも周囲を取り囲まれていて逃がす方が危険であったので当然なのだが、上位種に囲まれている現状を思えば、姫だけでも逃がしておくべきだったと騎士達を率いる隊長は判断の誤りを悔やんだ。

 それでも騎士と魔導士は決死の覚悟で上位種の群れに挑み、十数人の犠牲者を出しながらどうにか群れを退けたのであった。


 ここで終わってくれれば死んでいった騎士達も報われたであろう。

 しかしセルナイリカとその場にいた護衛騎士と魔導士、セルナイリカに付く侍女達にとっての不幸はそれで終わりではなかった。


 そもそもゴブリンが百以上の群れを作り集団として行動するのは、それだけでも異常事態だ。

 本来のゴブリンは知能の高い魔物ではなく、単独か五体以下の単位で動くのが普通。

 数十や数百の群れを形成出来るのは指揮個体となる上位種の存在が考えられ、騎士達が犠牲を出しながら倒したホブゴブリンが馬車を襲ったゴブリン達の指揮個体であると考えていた。

 だが、その考えは裏切られる。


 ズン、ズン、っと地を揺らす様な、足音だけで地震かと錯覚させる程に大きな存在感を放つ魔物が森の中から姿を現す。

 身長が二メートル半、緑の混ざった浅黒い肌で、人では到底そこへ到れない程に筋骨隆々な体躯。

 足を竦ませる凶悪な顔に鋭い眼力と鋭い牙。

 自身の身長ほどもある大剣を担いだ威風堂々とした姿は正に王の風格。


 ゴブリンの最上位種ゴブリンキング。

 群れを率いていたのは、このゴブリンキングだったのだ。


 残った騎士達は絶望に打ちひしがれながら、セルナイリカが逃げる時間だけでも稼ごうと立ち向かった。

 そして殆んどの者がゴブリンキングの一振りで胴体と足が分かれ、死に絶えた。

 絶望で竦む足を動かしてセルナイリカは侍女達とを連れて逃げ出したが、残り一人となっても立ち向かった騎士隊長も、たったの三撃で頭を潰され死に絶えた。


 逃げるセルナイリカを愉快そうに追うゴブリンキング。

 セルナイリカは醜悪に笑んだゴブリンキングの表情を確認した次の瞬間、意識を落とした。


 死を覚悟していたセルナイリカの意識が戻ったのは、それから数時間後の事だった。

 岩をくりぬいた様な洞窟の中、苦し気な女の絶叫が響く。

 絶叫の方に目を向けると、幼い頃から自分の世話をしてくれていた、信頼の置ける侍女であり友人でもあるアシェリーがゴブリンキングの巨根で膣を貫かれていた。

 白目を剥き、泡を吹いて気を失ったアシェリーに構わず、ゴブリンキングは乱暴に腰を振る。


 アシェリーには最近出来た婚約者がいた。

 子爵家の四女として生まれ、優秀さを買われてセルナイリカの侍女となったアシェリーは、仕事に真面目だが恋愛には疎く、適齢期を過ぎても婚約者を探さずに「私はセルナイリカ様のお世話をするのが最上の幸せですから」と混じりけの無い笑顔で語る忠臣。

 そんなアシェリーが恋をして、結婚を決めた時にはセルナイリカは泣いて喜んだ。

 そのアシェリーが醜いゴブリンに純潔を奪われて人形の様に扱われている姿を見て、セルナイリカは悔しさに涙を流した。


 自分に力があったなら、自分が視察に出たいなどと言わなければ、滞在を一日伸ばしたりなどしなければ。

 止めどなく溢れて来る後悔に頬を濡らすセルナイリカ。


 見ればアシェリー以外の侍女達もゴブリンキングに犯され、ぐったりと床に転がされている。

 膣から多くの血を流し、首があらぬ方向に曲がっている者もいる。

 それを確認した瞬間に、アシェリーの身体が汚い白濁した液体で穢されるのを目にした。

 そしてアシェリーの膣から巨根を抜いたゴブリンキングは、次はお前だとばかりに涙で顔をぐしゃぐしゃにしたセルナイリカの前に立つのであった。

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