🌏地球から月撃つことの難しさ2🌕 爆裂エルフ☆バナナ・パインテール姫の冒険・外伝🍌
土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり)
撃つな❗️🌙月は丸腰だぞ❗️
「ココはどこだ! なぜオレは檻に入れられているのだ!」
「お主に聞きたいことがあるから、檻の中に召喚させてもらったのである」
「ええっ! お前は裏ドラ!」
「裏ドラではないのである。ウラドラート・ドラクルなのである」
「貴君がナニか誤解しているようなので一緒に事実関係を検証しようとおもってねー。とりあえず檻の方が逃げられないしねー」
「お前はパンツァー・ラーテル辺境伯! コレはいったいどういうことだ!」
「まあまあ。それより話を進めるでやんすよ」
「はらぺこウイリーまで! ということは彼女もいるのか・・・・・・」
「当たり前だ。主役であるわたしがいないでどうする!」
「バ、バナナ・パインテール姫!」
「イエス、アイアム! わたしが正義の美少女エルフ! バナナ・パインテール姫だ! 打ち出の小槌改め神器ミョルニルに私の魔力を込めて貴様を召喚したのだ!」
「ともかく、オレをここから出せ!」
「パンツァー! コイツを檻から出してやれ!」
「いいのかい? 逃げても知らないよー」
「ふう、助かった」
「大丈夫だ。もう既にロックオンしてあるから、逃げても体内にドリアン召喚して爆裂させられる」
「ああ、そうだったねえー」
「ひいっ!」
「エグっ! 相変わらずエグいことを考えているのである!」
「コイツもそれがわかっているから逃げはしないさ。役者が揃ったから始めるぞ!」
「伊右衛門とジャックは呼ばないんでやんすか?」
「小難しい話になるからアホ二人は呼ばない。さあ検証するぞ! テーマは『バナナ姫は虹色🌈エネルギー波で月を破壊できたのか? それを必死で防いだバナナ姫たちの活躍はムダだったのか?』だ! 覚悟はいいな、土岐サブロウ頼芸!」
「くっ。望むところだ! この間検証してみたが、答えは不可能だ!」
「どうしてそう言い切れるのかなー」
「簡単だ! バナナ姫が口から発射した虹色🌈エネルギー波は、オゾン層の下で受け止められたじゃないか! 安全のために確実にオゾン層の下だとして地表から10〜16キロの位置になる。虹色🌈エネルギー波がそこまでかかる時間が10分ほどだったから分速1〜1.6キロだ。60かければ時速60〜96キロだ。ココまではわかるな」
「もちろんなのである。続けるのである」
「地球からあの月までの距離は約38万キロだ。異世界でも同じとするぞ。その距離を例の虹色🌈エネルギー波の時速で割れば、月までの到達予想時間がわかる。速い方の時速96キロで計算しても約3,958時間。これを24で割れば日数が出る。そしたらなんと約165日もかかるんだぞ」
「なるほどでやんす」
「月も地球と一緒に太陽の周りを回っているのだ。虹色🌈エネルギー波が地球から月まで距離に到達した165日後には、その場所には月が存在しないじゃないか! 165日分地球の公転軌道を進んでいるからな。だったら虹色🌈エネルギー波は月には当たらない。放っておいても外宇宙に向けて去っていくだけじゃないか! どうだ、この完璧な回答は!」
「あははは、前回のエッセイまとめ、ありがとうねー」
「くくく、しかしながら、とろけるマシュマロのように甘いのである」
「まったくだ。まあ文系の限界ってところだな」
「なんだとっ!」
「その虹色🌈エネルギー波も月や人工衛星や空に浮かぶ雲と同様、地球の引力で引っ張られたまま一緒に動いているのである。だから当然、地球といっしょに太陽の周りを回っていくのである」
「ガーン! しまったあああああ!」
「語るに落ちたであるな、土岐サブロウ頼芸! 165日後には地球から見ての月の公転軌道上に虹色🌈エネルギー波はちゃんと到着するのである。十分に月を破壊し得るのである!」
「さすがは魔王国のエンジニアだねえ、ウラドラート」
「パンツァー殿に褒められて光栄なのである」
「いや、ちょっと待って! だからと言ってよほどタイミングが合わないと月には当たらないぞ! ほら、月は地球の周りを回っているから公転軌道にたどり着いても月がいないかもしれない」
「それもそうかー。じゃあ確率はかなり低いってことかなー」
「ほっ」
「異議ありである! 月の直径は3,474.8キロもあるのである。時速96キロなどという遅いスピードでノロノロ公転軌道を月の直径分横切るのにかかる時間は36.2時間、つまりまる一日半はかかるのである。月をわざわざ狙わなくても虹色🌈エネルギー波が公転軌道を横切っていれば、月の方から勝手にぶつかりに来るのである!」
「・・・・・・なん・・・・・・だと!」
「なるほどな。では、虹色🌈エネルギー波も絶対確実に月に命中することになるな」
「いや、ちょっと待て。そもそも月なんて狙ったって当たるもんじゃないぞ!」
「サブロウ殿、論点のすり替えでやんすか?」
「いいから聞いてくれ! 月なんて目立っているけど見かけの大きさだって実はすごく小さいんだよ。手を伸ばした五円玉の穴の中に入るくらいなんだよ。ホラ!」
「ほう、どれどれ。おお、本当だ! 五円玉の穴の中に、月がすっぽり入っている。うむ。コレは面白いな」
「だろう? そんな小さなターゲットを狙うとするとよっぽどの精密な射撃能力が必要になる。たしかに時間さえかければ虹色🌈エネルギー波もいずれ地球から38万キロの距離には到達できるだろう。だが、それがキチンと月の公転軌道上を横切れるかどうかは全く別問題だ」
「どういうことかなー?」
「月の直径は3,474.8キロしかないんだ。高さ38万キロで底辺が3,474.8キロの二等辺三角形を考えるんだ! その頂点の角度の内側しか当たり判定にならないんだ。今は便利なサイトにこれらの数字を入力するだけで頂点の角の大きさがわかる」
「ちょっと待つでやんす。そんな大きな三角形だなんて想像がつかないでやんす」
「じゃあ、同じ比率で縮小して、地球を直径22センチのスイカだとすると、月は直径6センチのミカンだ。 そして地球スイカ🍉から6メートル60センチ離れたところに月のミカン🍊がある。コレならイメージできるだろう?」
「たしかに、それならイメージしやすいな」
「地球から月を狙うということは、6メートル60センチ先にある直径6センチのミカン🍊を狙うこととほぼ等しい。高さ6メートル60センチ底辺が6センチの二等辺三角形の頂角を計算するとたったの約0.5度となる。当たり判定が出せるのはこの角度の範囲内だけだ」
「その範囲を超えるとどうなるのかなー」
「ブレてそれを超えると当然ハズレ判定だ。肩から腕を伸ばしてチョキの中指の先までの長さが70センチだとすると、中指先端の許されるブレはわずか6ミリ以内だ! なんとなく月を狙って撃ちましたと言う程度では絶対に月に当たるはずがないんだ!」
「となると、かめはめ波で月を破壊だなんて無理か・・・・・・」
「あんなポーズでは狙いが定まるはずがないから、ただのマグレだ。どどん波や魔貫光殺砲なら指先で狙えそうだが、非常に難しいことは間違いない」
「じゃ某ガンダムのサテライト・キャノンで人工衛星破壊とかも無理でやんすか?」
「たった0.1度ズレただけでも38万キロ先なら 663キロもずれるぞ。東京から岡山までの陸路の走行距離に相当するんだ。直径10キロでの広範囲攻撃ができても当たる気がしないな。38万キロ先だなんて、固定砲台ではない動いているメカからでは人工衛星どころか月にも当てられないと思うぞ」
「ふむふむ。貴君の言う通り、あの虹色🌈エネルギー波も放っておいても月に当たる確率はまずなかったてことだねー」
「そういうことだ」
「まだ決まったわけではないのである。最近のエネルギー弾は追尾機能つきが主流なのである!」
「ちょっと待て、あの虹色🌈エネルギー波に追尾機能だなんてあったのか!」
「あのときのスマイリーの口みたいな月を見て、バナナ姫さまがムカついたとしたら、その怨念、もとい意志が虹色🌈エネルギー波に乗り移って月を目指して猟犬のようにどこまでもまっしぐらに追いかけるのである!」
「えー? バナナ姫、貴君はそんなこと考えてたのー?」
「いやあ、無我夢中であまり覚えていないが、ちょっとだけ思ったかもしれない」
「それ見たことである。虹色🌈エネルギー波は絶対月壊すマンになってしつこく追いかけたに違いないのである!」
「異議あり! お前たちは月が地球の周りを回る公転速度を舐めすぎているぞ!」
「でもさあ、月がそんなに素早く動いているふうには見えないんだけどなあー。じゃあ月ってどのくらいの速度で地球をまわっているのさー」
「よくぞ聞いてくれた、パンツァー! 月が地球をぐるりと一周する公転軌道を大雑把に円軌道扱いすれば半径38万キロの円周だ。円周=直径×3.14とするから、38万キロ×2(直径は半径の倍だから)×3.14で約238万6,400キロ。それを実際の月の公転周期27.3日で割れば一日の移動距離がでる。さらにそれを24時間で割ると移動時速がでる」
「結局、速さはいくらになるのであるか?」
「なんと時速約3,642キロだあ! マッハ3弱だぞ! たかだか時速96キロで追尾したところで追いつくどころか迷走してどうなるかわかったもんじゃない! 普通自動車とジェット戦闘機ミグ25くらいの絶望的な速度差だ!」
「うむ。これでは追っかけるのがバカバカしくなるな」
「そうでやんすね」
「たしかにねー」
「ふははははははは! 勝った!」
「よし、問題は全て把握したのである」
「へ?」
「裏ドラ、貴君はなにかまだ意見があるのかな〜?」
「大アリなのである。要は虹色🌈エネルギー波が自ら精確に月の公転軌道にまで到達さえすれば確実に月と激突💥して破壊できるのである!」
「ちょっと待て! ないないない! 自動追尾機能だって怪しいけれど原理は単純だった。でも今みたいなそんな複雑なこと、どうやって虹色🌈エネルギー波に実行させると言うんだい? そんなファンタジーってありえるはずが・・・・・・」
「あるよね〜」
「あるでやんすね」
「ああ、もちろん大アリだな」
「ちょっと待て、みんなナニ馬鹿なことを言っているんだ?」
「忘れたのであるか? バナナ姫こと『爆裂エルフ☆バナナ・パインテール姫の冒険』の世界は異世界ファンタジーなのであるぞ!」
「ああああっ!」
「ようやく気づいたのであるか。このファンタジー世界には精霊だって存在するのである。いわば意思のあるエネルギーみたいなものである」
「そうそう。精霊がいるよねー」
「そうでやんす」
「そう言うことだな」
「バナナ姫さまの発射する魔力でいっぱいの虹色🌈エネルギー波の中ならば、そのうちに魔力の精霊が発生して、エネルギー波を操作しつつ精確に月の公転軌道まで到達して月がドンとぶつかってドカーンと大爆裂!💥 初志貫徹も可能なのである」
「初志貫徹するな! なんて物騒な精霊だ! 待て待て待て! あのとき、虹色🌈エネルギー波にそんな意志を持った精霊がいたのか?」
「もしいなければ、吾輩がコレから用意するのである。そしてその精霊を、神器ミョルニルで増幅させたバナナ姫の魔力を使って、時を超えてあのときのエネルギー波に転送すれば完成なのである!」
「そうだな。そうすればわたしたちが決して無駄なことをしていたわけではないということになるな。よしやるか」
「おい、やめろ! 余計なことをするな! そんなことしたら、精霊が乗った虹色🌈エネルギー波がバナナ姫をかわすかもしれないじゃないか! タイムパラドックスが起きてしまうかもしれない!」
「そうかもしれないでやんす」
「それに、仮にその世界がパラレルワールドだったとしても、そんな恐ろしいモノをバナナ姫が受け止めそこねたら本当に月が破壊されてその世界が滅ぶぞ! 絶対にやめろ!」
「そうかー。では、こちらから精霊を過去に送り込むのはやめるから、貴君とは政治的取引を所望するよー」
「なにをどうしろと言うんだ?」
「簡単さあ。公式見解として、『やはり、あのタイミングを逃すと、虹色🌈エネルギー波(の中の魔力の精霊)が勝手に月を破壊するところだった』と発表するだけさあ」
「ふむ。それが良さげであるな。虹色🌈エネルギー波とともに魔力の精霊が成長して、精密かつ超高速攻撃で本当に月を破壊したかもしれないのである」
「後付けでも、説得力があるでやんすね」
「そうだな。だが、こんな面倒な理屈はバナナ姫本編に入れない方が良いと思うぞ! 今の議論はSF扱いの外伝にするんだ! 良いな、サブロウ!」
「わかったよ」
「ではサブロウ! 今まで通り、わたしたちは間違いなく月と世界を謎の虹色🌈エネルギー波による滅亡から救ったのだと言うことだ! いいな!」
「もう、それでいいよ。オレの負けだ。そうしないとどこかの世界が本当に滅ぼされかねないからな。まさか精霊を持ち出されるとは、本当にやれやれだ」
「「「「ファンタジーなんだから仕方がない!」」」」
「「「「「あはははははははは!」」」」」
「じゃあ、そう言うことで、オレを解放して元の世界に戻してもらおうか」
「わかったのである」
「またね〜」
「また来るでやんす」
「なるべくなら二度と来たくないな」
「そう言うな、サブロウ。ちゃんとお前の身体はロックオンしてあるから逃さないぞ。逃げたら鼻の穴にラッキョウでも詰めてやろうか?」
「地味に効果的な嫌がらせだな。わかった。無駄な抵抗はしないから、用があるときは召喚してくれ」
「うむ」
「じゃあな」
「みんなでいったい何の話をしていたでござるか?」
「ボクらも混ぜておくれよハニー」
「いやあ、話はもう終わったところだよー」
「ちょっと、遅かったのである」
「ならば、聞きたいことがあるのでござる」
「なんでやんすか?」
「さっきジャック殿に『竹取物語』のかぐや姫の話をしていたのでござるが・・・・・・」
「うん。かぐや姫って地球から月まで一晩で帰ったって言うんだけど、どのくらいの速さだったんだろうね、ベイベー」
「「「「サブロウ〜! カムバ〜〜ック」」」」
『だが断る! 解説を書くから勘弁してくれ〜』
つづく
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