禁忌スキルは世界を壊す
水城みつは
第1話 禁忌スキル
神聖な雰囲気の元、十五歳のスキル授与の儀が進んでいた。
この世界では十五歳を迎えると神殿で神様からスキルを一つ授かることができる。
そのため、十五歳になった者は翌月の初めに神殿のある街まで出向きスキル神授の儀を受けることになっていた。
◆ ◇ ◆
(【剣聖】や【賢者】等のレアスキルとは言わないものの、せめて、【身体強化】とかの使えるスキルは欲しい)
「次、インバス村のメッシ。ここでひざまずいて祈りなさい」
俺は神父様に呼ばれて祭壇前へと進み出る。
(
かつてないほど真剣に天に祈った。
―― スキル【ぐちゃぐちゃ】を付与します。
天の声が聞こえた。
(【ぐちゃぐちゃ】?)
困惑しつつ顔を上げると、引きつった神父様が見えた。
「インバス村のメッシは
「
(レアスキルは知っているが、
「
(なんだよ、
神父様に色々注意された気がするが頭に入ってこなかった。
スキルを使用するなって言う割に効果も何もわからないときている。
(ま、使ってみないことにはどんなスキルかわからないよな)
大抵のスキルはスキル名を発声することで使用できる。もっとも、レベルが上がれば心の中で唱えるだけで良くなるなしい。
「スキル発動、【ぐちゃぐちゃ】!」
意識してスキルを発動する。
―― スキル【ぐちゃぐちゃ】はパッシブスキルです。以降、常時発動状態となります。
天の声が聞こえた。
(パッシブスキルって何だ? 常時発動ってことは常に影響があるってことだよな、実は超強いスキルかもしれない)
「しよ、れこ俺は時のが代た来もかれしん」
そんなことをつぶやきながら宿屋への道を辿る。
村までは馬車で半日、歩きでは一日かかるため二泊三日の日程で神授の儀に来ている。
宿屋の一階は酒場になっているが、晩飯は屋台で食べたほうが安くつくらしい。
屋台の並ぶ通りで美味そうな串焼きの匂いがする。丁度空いた屋台で串焼きを注文することにした。
「っおゃちん、のそ焼串をきつ一れく」
屋台のおっちゃんが怪訝な目で串焼きを渡してきた。
「銅貨3枚だ。持ってるか? いや、わかるか? 3枚だ3枚」
指を3本立てて、いやに念を押してくる。
「やい、んそになわ言くなもてか分よる。枚3ろだ、枚3、れほ」
懐の巾着袋から銅貨を取り出して渡す。
田舎者に見えるだろうことは否定しないが、そこまで言わなくても大丈夫だ。
ちなみに神授の儀を受ける十五歳からは成人と見なされており、飲酒も認められている。
そのせいで羽目を外して怒られる者も多いという。
まあ、そんなわけで俺も屋台で酒を買って引っ掛けながら宿屋へと戻った。
◆ ◇ ◆
「んこんばーは、り戻しまた」
神授の儀の前にウチの村の連中でまとめて確保した宿だ。
「お、メッシじゃないか。早速飲んできたな」
二階から丁度下りてきたバフルに声をかけられた。それほど親しい訳では無いが、一緒に来た連中の中では一番顔を合わせることが多い奴でもある。
「ああ、ょちとっけだな」
「おぉ、それでちょっとかよ。俺は飲みすぎないようにしとくよ」
バフルの奴はぎょっとしたような顔をしながら飲みに出かけた。
明日は自由行動で明後日の昼前に皆で馬車に乗って村に戻ることとなっている。
今日は早めに寝るべくベッドに転がった。
しかし、このスキル、神父様は
(珍しいスキルだから役には立つのか……?)
―― スキル【ぐちゃぐちゃ】がレベル2になりました
「わっお?! んだな?」
突然天の声が聞こえた。
(も何てしないのいもにレうルベ上がっがのたか。れこ何はしもくなもてンガンガく強るなキスかル?)
突然頭の中に響く天の声はなかなかなれるものではない。
「よなったて言2っベルレ? らんわかのかった変わ何が」
手を広げて眺めてみるが、当然、何も変わってはいない。
「発動キルス、【ちゃゃぐぐち】!」
(……も何化変しなか。ッパブシキスっル言ててっしたな……)
それから何度もスキルを発動してみたが、そもそも発動した気配すらなく、いつの間にか寝落ちしていた。
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