第7話 空に聴け

最後の動画が削除された後、3週間以上、何の動画もUPされなかった。



久しぶりに、unanimousのメンバー4人が悠二の家に集まっていた。

3人がアルコールを飲む側で、比呂はウーロン茶を飲んでいる。


「誰かいいやつ見つかった?」

比呂の声は相変わらず澄んだ響きをしているが、もう歌うほどの声は出ない。

「いるにはいたけど、どこの誰かもわからない。」

湊がふてくされたように言う。

「聞かせてよ、その声。」

「それが…」

悠二がこれまでのいきさつを比呂に話した。

「ああ、じゃあ動画がアップされないと聴けないんだ」


その時、悠二のPCからアラーム音が鳴る。

「あ」

「何?」

「比呂、その声聞けるぞ!動画が上がったらアラームが鳴るようにセットしてたんだ。」


悠二がノートPCからJUDEのチャンネルを開く。


突然、その場の全員が、あまりにも良く知っている歌が流れた。




空に聴け

過ぎ去った過去に想いを馳せても 遅い

見ろ

今お前が立っているその場所は 望んだものか

駆けろ

お前があるべき場所に向かって

見ろ 

お前を迎える者の正体を

恐れるな 望みをくれてやる

囚われるな その手で掴みとれ

空に聴け

これから出会い 運命を共にする 音を

それがお前の あるべき故郷となる

声を上げ

自分はここだと 知らしめろ




「どんな手を使っても、正体を知りたいと思う?」

誰もが声を発することができない中、最初に口を開いたのは比呂だった。

「ああ」

「うん」

「これは、思ってた以上かもしれない」

「動画をスマホで撮りたい。もう一度、消される前に再生して」

「え?あ、ああ」

PCでもう一度動画を再生し、それを比呂がスマホで録画した。

「どうするんだよ?」

「聞かない方がいい」

比呂が笑った。



JUDEが歌ったのは「空に聴け」という曲だった。


unanimousがメジャーデビューするきっかけとなった曲。


それを、JUDEは、比呂が歌うものとは全く違う歌にアレンジして歌っていた。

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