第11話

「あっ、田崎君おはよー」

「真人君おはよー」

「おう、おはよーっす!」

「星川さんおはよう」

「おはようございます」


 張り出されている真優ちゃんのクラス確認だけ付き添い、それから教室に入る。真人が真優ちゃんを教室まで案内すると言い出したが、それは真優ちゃんにものすごく嫌がられて解散となった。


 3人で教室に入るとそれぞれに挨拶が飛び交う。大半は女子から真人への黄色い声で、星川へも結構多い。真人はそのまま数人の女子に囲まれ、そこに集ってきた部活仲間や去年のクラスメイトと輪になっている。俺と星川も席に着くと、昨日ほどに皆が皆彼女に群がるようなことはなかったけど、数人が話し掛けに来る。


 ちなみに俺は友達付き合いより勉強……みたいな雰囲気であまり広くは交流してない。去年の親しい知り合いは真人以外居ないようなので、教室で声をかけられる事は今のところ少ない。


「星川さんおはよう」

「おはようございます」

「3人一緒なんだ」

「はい、こちらにはまだ不慣れなので、一緒に来てもらいました」


 先ほどまでの俺たちとのやり取りとは違い、星川のクラスメイトへの対応は余所余所しい。男子数人に囲まれて緊張してるのか、それともキャラを使い分けているだけなのかはわからない。友人付き合いに口を出すわけにもいかないし、まぁそのうち馴染むだろう。


「星川さん今日暇?駅前案内するから遊びに行こーぜ!」

「部活決めた?決めてないならうちのマネージャーやらない?」

「あの……そういうのは大丈夫なので」

「えー、それぐらいいいじゃん。女子も知り合いくるから皆で行こうぜ!」


 二日目でも集るような面子は押しが強いなぁ。普通に話す分にはいいけど、こうも強引に誘うやつが居ると、今すぐ止めに入りたくてたまらなくなる。


でもさすがにいきなりおせっかいを焼くのもどうだろう……逆に悪目立ちしたりトラブルになったりしないだろうか?嫉妬みたいに思われないだろうか?そんな事が頭をグルグル回っていると、一人の女子が声を掛ける。


「ちょっとー、嫌がってるじゃん。強引すぎると怖がられるよ?」

「そ、そこまで強く言ってねーよ」

「いーや、言ってた。ほら、次は女子で話すんだから、散った散った」


 集っていた男子たちがぐちぐち言いながら離れ、今度は女子数人が集ってくる。「大丈夫だった?」「男子必死すぎー」なんて会話に、星川も肩の力が抜けた感じがする。


 最初に声を掛けた女子もその中に混ざるけど、ちらっとこちらに視線を向ける。しっかりしろとでも言いたげに俺を見てから星川の輪に混ざる。


 星川の後ろの席の、ギャルっぽい子だ。髪色が明るく、明朗快活で知り合いが多い。という特徴でギャルといっていいのかわからないけど、楽しそうに話す彼女に星川も少し笑顔が覗いている。


 ……なんとなく声を聞いた事がある気がするけど、だれだったっけ?でもまぁ、星川が昨日よりは穏やかに会話の輪に入ってるので少し安心する。手持ち無沙汰になった俺は、窓の外を眺めて時間をつぶす事にした。

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