第3話 真紅の宝玉
サキは俊也の信用を得るために、できるだけ詳しく説明を続けている。
「そんなわけのわからない所から、なぜ日本に救世主様を探しに来たのかと思いますよね? まず、タナストラスの世界についてお話します。私がいる世界は、俊也さんがいる世界とは異なりますが、実のところ表裏一体なんです。言葉も日本語とほぼ同じものを使っています。精神的な観念も近いと思っていて下さい」
まだ半信半疑ながら、俊也は話に興味を持ち始めている。彼は色んな物語を読んだり観たりして、感動し楽しむのが趣味で、持っている小説やマンガもストーリーがしっかりした物が多い。
「そうした世界ですが、この数年でモンスターの活動の活発化や天候不順などが重なり、それらが原因で人々の心も乱れています。国同士がいさかいを起こす余裕などないのですが、各地で人の国同士の小競り合いも起きています……そうした中で、私がここに救世主となる素養を持った方を探しに来たんです」
一生懸命に話すサキからは確かな誠実さが窺える。俊也はそこまでの話を信じ納得することにしたが、まだ疑問は多くあった。
「タナストラスとかいう世界の状況は分かったよ。でも、なんでこの世界の日本で君の世界を救えるほどの力を持つ人を探しているのか、はっきりと言ってないよね? 君の世界にもすごく強い人はいるんじゃないかい?」
俊也がそう訊いてくると、サキには分かっていた。彼女はそれなりにふっくらとある胸元に忍ばせていた何かを右手で取り出し、俊也にそれを近づけた。大きな真紅の宝玉が埋め込まれたブローチのようなものだ。
真紅の宝玉が俊也に近づくと、宝玉は七色に神々しく光り輝き、しばらくしてその輝きは収まった。俊也は突然の出来事に驚き呆然としている。
「やはり思った通りだわ……俊也さんの適性はとてつもなく高い……」
呆然としている俊也を、可愛らしい顔で大きな期待をかけるようにサキは見ていたが、少し間をおいてさらに説明を始めた。
「俊也さんの言う通り、タナストラスにはとても強い方々はいます。ですが、その方々では世界を救うのは無理なのです。人をとてつもなく大きく超えるような、これから伸びる素養を持った人は、残念ながら一人もいません」
彼女はさっき俊也に近づけたブローチの、真紅の宝玉部分を指で指し、
「ですが、強さの素養を測るこの宝玉が、異世界において大きく反応している場所があるのにある日気づきました。それを辿って来たのが、日本のここなんです」
そして、俊也に向き直り真剣な眼差しで見ている。俊也はまだ呆然としたままだったが、ハッと気が付いたように正気に戻り、サキの眼差しを眼で受けていた。
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