10.文体に個性を

 首尾整った文章をAI君が作れることはわかりました。


 でもそれだけでは物足らないです。やはり、文章にも個性がほしいです。AI君は文章に個性を出すことができるでしょうか。試しに、冒頭の文章を世界のハルキ・ムラカミ風に手直ししてもらいましょう。いま私の手元には、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(2013年)があります。



※※※


■私

ありがとう。では試みとして、最初に作ってくれた1000文字相当を、日本の作家・村上春樹氏の文体を真似て書き直してみて下さい。


■ChatGPT

村上春樹氏の文体を模倣して、序章の最初の1000文字を再構成してみます。村上氏の文体は、日常と非日常が交錯する独特の世界観、詩的な表現、そして時に哲学的な思索を含むことが特徴です。


序章:静かなる夜の計画


夜はゆっくりとその翼を広げ、メガシティの上空を静かに覆い始めた。星は都市の灯りに隠れてしまい、街の喧騒は遠い記憶のようにかすんでいた。その影の中で、犯罪者Bは彼の長い旅の最終章を準備していた。彼の隠れ家は、まるで忘れ去られたような廃墟の中にひっそりと潜んでいる。彼の前には青白く光るコンピュータのスクリーンがある。そこには、彼の世界が広がっていた。


「ここから全てが始まる」と、彼はほとんど無意識につぶやいた。キーボードに触れる彼の指は、まるで遠い海を渡る風のように軽やかだった。彼が打ち込むコードは、ただのデータ盗難以上のものを意味していた。彼が目指すのは、秘密に満ちたデータセンターの奥深く、そこに隠された真実を暴くことだった。


犯罪者Bのプログラムは、まるで夢を見るように、データセンターのセキュリティシステムを静かに駆け巡った。政府や大企業の最も深い秘密が眠るその場所は、彼にとって最後の謎を解く鍵だった。彼の知識と技術は、その電子の迷宮を縫う一筋の光となる。彼は自分が何をしているかを疑わなかった。彼はただ、自分が何者であるかを知っているだけだ。


画面上のバーチャルマップは、彼が歩むべき道を示していた。彼は慎重に、しかし確実に一歩ずつ前進していった。彼の指の動きに合わせて、一つずつのセキュリティバリアが解けていった。彼はこの瞬間のために、長い時間を費やし、準備してきた。彼の行動は、単なる侵入を遥かに超えるものだった。


そして、核心部への最後の扉が開かれるときが来た。スクリーンには無数のファイルが現れた。彼はコピーを開始し、そして、彼の意志によって永遠に消される命令を下した。この瞬間、世界は静かに変わり始めていた。彼の行動は、まるで遠くの海に投げられた小さな石のように、やがて大きな波紋を生む。しかし彼は、まだ満足していなかった。これは彼の旅の始まりに過ぎないのだから。


この再構成された序章は、村上春樹氏の文体を模倣して、犯罪者Bの静かで計画的な動きと、彼の行動がもたらす未知なる変化への期待を織り交ぜています。読者は、この謎めいた人物と彼の計画に対して、より深い興味を持つことでしょう。


※※※



 ハルキストの皆様採点をお願いします(汗


 冒頭に記した作品の文体から私がとらえた特徴は以下です。


・基本的に短文

・時制はほぼ過去形

・巧みな比喩表現

・それでいて語彙は平易


 これらの特徴から、まるで韻を踏んだように「~た」「~だ」が繰り返されます。加えて難しい単語や表現が使われないので、非常にリズムよく読めます。すごいですね。自作を書き直したくなってきました。そう言った観点でAI先生の文章を採点したら75点くらいかな?



 その自作(https://kakuyomu.jp/works/16816927863224815920)に、私はAIに作ってもらった挿絵を付けています。画像生成AIの中には、ゴッホとかミレーとかフェルメールとか、画家の名前を指定するとその作者の画風を真似た絵を出してくれるものもあります。

 『画風』を言葉で説明することは可能ですが、その説明文だけから画風を再現することは不可能です。これは、『画風』に多くの言語化できない知識、『暗黙知』を含んでいるからです。しかし絵を学ぶ人は、模写などの訓練を通してその暗黙知を体得しようとします。そして首尾よく体得しても、やはりそれを言葉だけで次の他者に伝えることはできません。


 与えられた命令しか実行できないコンピュータに暗黙知を与えようという試みは、ニューラルネットワーク(NN)の形で1950年代から研究されており、その成果がいま花開いていると言えます。イラストレーターの中には、自分の絵をAIに学習させて出力させ、それを元に新たな作品を生み出している方も出てきていると聞きます。物書きさんがAIに自分の文体を学習させ、模倣させるのも技術的には難しくありません。というか機会があればやってみます。自分の文体を、客観的にどう認識されているのか興味あります。出てきた文章に自分で苦笑いしてそうですが。

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