第四十一話 帰郷
帰り道は、枯れた落ち葉の道なき道を通ることなく、
そして
その次、
それは、
「ねえ、ゲンタ。
「向こうと比べればな。村の土だって、外から来た人間に言わせれば痩せているらしい」
「そっか……」
「上も下も比べたらきりがない。結局、居ついた場所であがくしかないんだ」
「そっか、そうだよね。……村は今、どうなってるかな?」
「分からん。だが、もうそろそろ一年経つ。すべて元通りとはいかないだろうが、住む家くらいはどうにかなっているかも知れないな」
今日もカヤは
視界の左右を流れる枯れ
「――カヤ、起きて着替えろ」
目を覚ました彼女の目に映るのは、
「うん、分かった」
立ち上がり、辺りを見回すと、ゲンタの向こう側には小道と灰青の冬の空。
水の匂いに気付いて振り返ると、
その右手に、漁か何かの道具を保管しているであろう小さな小屋が建っていて、ゲンタがそこを指さしている。
はて、着替えろと言われたところで、同じような小袖しか持っていなかったはずだと、今更ながらにカヤが思えば、彼はそれを見透かしたように、「中に赤いきれの刺さった
少しガタのきている木戸を開け、薄暗い小屋の中を注意深く眺めると、果たしてゲンタの言う通り、赤いきれが見える
「脱いだものは、
「そう。……ねえ、ゲンタ」
「どうした」
「ここって、もう
そのときゲンタは何を思っていたのだろうか。返事には随分と間があったようにカヤには感じられた。
「……ああ」
「今、どうなってるの?」
「昔と変わらん。畑はまだまだ時間がかかりそうだが」
「ゲンタのお母さんは、今どうしているの?」
「
「そう、無事で良かったね」
「……そうだな」
カヤの頭の中ではざあん、ざあんと
声を殺され、押し込められて、覚えたくもない神楽を舞った装束。
けれどいざ着てみれば、それは不思議と馴染み、背筋がしゃんと伸びもした。
「私の……父ちゃんと母ちゃん、いた?」
「死んだ人間が生き返るはず、ないだろう」
ならば――ならばあなたは何であるのかと、口から出そうになった言葉をぐっと飲み込む。
「村の皆は?」
「元気にしてた。街道沿いで商売をしている家は、立ち直りが早かったみたいだ」
「たくさん殺されて、たくさん焼かれたのにね」
「……そうでもないらしい」
「あいつの肩を持つの?」
「そういうことじゃない。村が焼き討ちにあったとき、
「そう」
「まるで昔のカヤみたいにな」
「そんなことあったっけ?」
板の一枚を隔てて、カヤにはゲンタが笑っているように感じられた。
「五つか六つか、それぐらいのときに、この辺でよく遊んだだろう? お前が俺に飛びかかって来たときがあってな、だけど俺がひょいっと避けたらお前だけ
「……覚えてない」
「子供の頃のお前は色々なところに落ちてたからな」
「むぅ」
頬を膨らませた勢いで木戸を開け、彼に見せたところでどうということはない。
いつも通り、笑顔の分かりにくい幼馴染がそこで待っていて、「行くぞ」と短く促すだけである。
カヤの耳には小さな波がざあん、ざあんと寄せては返し、
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